| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十七話  デストロイア

 
前書き
前回、黒い月を取り込んだ初号機に飲み込まれたゴジラ。その安否やいかに? 

 
 巨大化した初号機が浮かび上がり、人々から心を消し去る光をばらまきながら笑い声をあげていた。
「世界中に甚大な被害が広がっています!」
「このままでは…。」
「くそっ!」
 轟天号の武装では、初号機に傷一つ付けられない。
 このまま、初号機によるフォースインパクトを黙って見ていることしかできないのかと轟天号内で絶望の色が広がり始めた。
「っ……。」
 尾崎は目の前の計器を殴って、俯いていた。
「尾崎、おまえのせいじゃねぇ。」
「でも…。」
「あの野郎が勝手にやったことだ。…しかしまさか人間の心を消すって方法に打って出るとはな。しかもエネルギーを無尽蔵に吸収して巨大化しやがる。ゴジラの熱線を吸収にするようじゃこっちの武装じゃ打つ手がねぇ。肝心のゴジラも野郎に喰われちまうし…。」
 そうゴジラが初号機に丸呑みにされたのは、轟天号からも見えた。
 中から突き破ってくる様子もない。ゴジラを丸呑みにした初号機の下半身の黒い月の影響だろうか。使徒レリエルのように内部から破壊できないのだろうか。中の様子を知ろうにも無理だ。
 なんとか状況を打開する手立てはないかと考える。
 ゴジラが動けない今、何か手は…。
「ロンギヌスの槍はどうした?」
 ゴードンがふと思いついて言った。
 すぐに周囲を調べると、大きく空いた第三新東京の端に斜めに刺さっていた。
 なおコピーの方は折れて残骸になって散らばっている。初号機が第三新東京の特殊装甲板を破壊した時に破壊されたのだろう。
「あれは確かリリスとアダムの活動を止める保安装置だったな。だったら…。」
「そうか! それなら初号機の動きも止められるかもしれないと!」
 副艦長が言った。
 だがしかしと、ゴードンは、拳を握った。
 問題なのはロンギヌスの槍がある場所だ。
 浮遊している初号機のほぼ下にある。接触するかしないかギリギリの位置だ。
 つまりかなり接近しないと届かないのだ。
 ついでに言うとロンギヌスの槍を回収するにはやはり…。
「尾崎を単体で行かせるわけには…いかないですよね。」
「行かせたら忽ち初号機に喰われるに決まってるだろうが。」
 なにせ初号機は、尾崎に執着している。行かせたら真っ先に狙われるのは目に見えている。
 尾崎がロンギヌスの槍を使えることは分かっているが、その肝心の尾崎がやられてしまったらお終いだ。
 かと言って轟天号で近寄ったとして、相手はすでに数百メートルはあろうかという巨大さだ。下手に近づけば無残に叩き落されるか撃墜されるかだろう。とにかく近寄れない。近寄ることができない。
「…俺、行きます。」
「ダメだ。行かせられねぇ。」
「ですが!」
「おまえがやられたら終いだ!」

『援護しようか?』

 そこにツムグの声が響いた。
 モニターを見ると、機龍フィアが第三新東京の大穴の近くに立っていた。無傷である。
「っ、てめぇ…、今まで散々何もしなかったくせによぉ。」
『今動けるのは俺くらいしかいないよ。必要ないなら別に…。』
「誰がそんなこと言った、ああん!? こんなことになったのはおめーに原因があるって自覚あんのか!?」
『あるよ。こうなることは想定してたし。それで、援護は必要? いらない?』
「……いるに決まってるだろうが。」
『そうこなくっちゃ。』
 通信機の向こうでツムグが笑った気配があった。
 この非常事態を起こしたのは、椎堂ツムグだ。それは分かっている。
 だがツムグの力を借りなければ状況を打開できないのは事実。
 ツムグが何を考え、何をしようとしているのかは置いておくしかない。とにかく初号機を止めるためには手段は選んでいられない状況なのだ。やるしかない。
 機龍フィアが、ジェットを吹かし、舞い上がった。
 そして初号機の前に回り込む。すると初号機の目が機龍フィアを捉えた。
『な~に~?』
『邪魔しに来たんだよ~。』
 巨大化した初号機の威圧感に臆さず、ツムグが気楽に答えた。
『何する気? 僕に勝てると思ってるの?』
『勝つか負けるかは、キミが決めることじゃないよ。』
『ツムグ、どうするの?』
『とりあえず殴る。』
 次の瞬間、残像を残すほどの速度で動いた機龍フィアの体当たりを顔面に受けた初号機は、思いっきり後ろにのけ反った。
『あ、殴るじゃなくて、これじゃ体当たりか。アハハハ。』
『ツムグー、笑うところじゃないよ。』
『いっっっったぁぁぁぁぁぁぁ! 何するんだ!』
 顔面を手で押さえて怒った初号機が腕を振るって機龍フィアを叩き落そうとした。だがそれを軽々と躱す。
 イスラフェルや、サキエルとか、ゼルエルなどの腕も攻撃に加わるがそれもすべて躱す。
『なんで当たらないんだーーー!!』
『だってキミの思考、丸分かりなんだもん。しかもデカくなってるぶん大ぶりになってるしね。』
『んなっ…!?』
 初号機は言われて驚愕したリアクションを取った。
 そして轟天号の中の船員達もびっくりした。(※オープン回線)
 ツムグにとって神に等しき存在と化した初号機の思考など手に取るようにわかることらしい。
『そ、そんなわけ…。』
『そんなわけあるから困るんだよなぁ。』
 ツムグは、クックックッと笑いながら言った。
『う…。』
 ツムグの得体の知れなさと不気味さに、神に等しき存在になったはずの初号機ですらたじろいていた。
 ツムグの気味の悪さは、神をも嫌悪させるのかと、逆にびっくりものである。
『で、でも、いつまでも続くわけないでしょ! そのうち力尽きるもん!』
『おおーっと、痛いところ突かれたね。』
 そういつまでも躱してはいられない。こちとら機械。相手は神(?)。限界点が違いすぎる。
『だったら…、大丈夫だもんね! 疲れるまで攻撃するもん!』
『でも学習はしようよ。』
 変わらず当たらない。
 初号機が機龍フィアに完全に気を取られている隙に、轟天号がゆっくりと、初号機の下の方にあるロンギヌスの槍の方に接近していた。
『って……、バレバレだよ?』
 サキエルの腕が轟天号に向かって振り下ろされようとした。
『やらせないよ。』
 その時、強力なサイキックバリアが轟天号を覆い、サキエルの腕を防いだ。やったのはツムグだ。
『邪魔するなよぉぉぉぉぉぉ!!』
 怒った初号機は、ラミエルの角から荷電粒子砲を機龍フィアに向かって放った。だがそれを機龍フィアは、軽々と躱した。
『だから当たらないって。』
『当たれよぉぉぉぉぉぉぉ!!』
『当たってたまるか。』
『もぉぉぉぉぉぉ!!』
『牛か。』
『違うよぉぉぉぉぉ!!』
 初号機の苛立ちは頂点に達したらしく、轟天号を無視して機龍フィアの攻撃に集中しだした。
 神に等しき力を手にしたとはいえ、精神面は所詮は子供。力に意思力が追いついていない。

「今だ尾崎!」
「はい!」

 その隙に、尾崎が轟天号から飛び出し、ロンギヌスの槍へ向かった。
 ロンギヌスの槍は、尾崎が触れると収縮し、尾崎の手で持ち上げられるほどの大きさになった。
 尾崎は、轟天号に飛び乗り、ロンギヌスの先端を初号機に向けた。
『お兄ちゃん…? それでどうする気?』
「……おまえを倒す。」
『なんで? どうして? ただ僕は…。』
「おまえは、この世にいちゃいけない。」
 尾崎は心を鬼にしてそうはっきりと言った。
「例え苦しくても、哀しくても…、俺達はこの世界で生きているんだ。生きていくんだ。心は強さだ。それを無くした世界なんて望まない!」
『………だったら…。』
 初号機が片手を尾崎の方にかざした。
『お兄ちゃんが消えちゃえばいい!!』
 放たれた白い光。
 だがしかし、その光は、ロンギヌスの槍の先端に触れた途端拡散する。
 ロンギヌスの槍が、尾崎の意思力を力としているのだ。
「くっ…!」
 だが初号機の力は圧倒的で、尾崎が押され始めた。
「ま、負けられない! 俺は、俺達は負けるわけにはいかない!」
 尾崎は気力を振り絞る。
「こんな、ところで…!」

『そう。君達は負けてはいけない。』

「えっ?」
 聞き覚えのある声が響いた。
 その声は…。
「カヲル君?」
『僕も力を貸すよ。』
 その時、機龍フィアの胴体から白く光る巨大な手が伸び、初号機の首を掴んだ。
『う! な…!? な、なんで!? これは…、アダム!?』
『せっかく道を譲ったんだ。ちゃんと進んでもらわないと困る。』
 機龍フィアからカヲルの形をした白い巨人が出現し、初号機に掴みかかった。
『おまえまで邪魔ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 初号機がアダムの手を振りほどこうと暴れ、体に生えている使徒達で攻撃しようと動いた。
 だが。
『な…、うぁ!?』
 体から生えている使徒達が、逆に初号機を攻撃し始めたのだ。
『逆ら…、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!?』
『“僕ら”も君のやり方を認めないってことさ。』
『もう死んだくせに、死んだくせに死んだくせに死んだくせに死んだくせに死んだくせに死んだくせに! なんで言うこと聞かないんだよぉぉぉぉ!!』
 取り込んだはずの使徒達に攻撃され、初号機は狂乱した。

『尾崎さん、受け取って。』

「レイちゃん!?」
 レイの声と思しき声が聞こえた。
『いいえ。私は……、リリス。』
 すると、尾崎のすぐ隣に、何かが突き刺さった。
 それはロンギヌスの槍。
 南極で失われたとされる、アダムの白い月にあったロンギヌスの槍だった。
『あの子を、止めてあげて。』
「……ああ!!」
 尾崎はリリスからもたらされたもう一本のロンギヌスの槍をもう形で持った。
 そして狙いを初号機に定める。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! おまえ(リリス)まで邪魔をするのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 初号機の背中からリリス…、レイの形が生え、初号機を後ろから羽交い絞めにした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 尾崎は、ロンギヌスの槍を二本を、投擲した。
 投げられ、ロンギヌスの槍は、巨大化し、一本は初号機の胸部を貫き、もう一本は片目を貫いた。
 初号機が断末魔の悲鳴を上げた。
 リリスが、アダムが、まるで溶けるように初号機にくっついていき、入り交ざっていく。他の使徒の形も形を失い溶け始めた。
『く……、クフフフフフフフフフフフフフフ!』
 初号機が、急に笑い出した。
『アハハハハハハハハハハハハハハハハ! 僕の勝ちだ!』
 初号機は、ロンギヌスの槍を掴むと強引に引き抜いた。
「そんな!?」
 二本のロンギヌスの槍をもってしても初号機は止まらなかった。
『こんなものがあるからいけないんだ!』
 そう言って掴んでいるロンギヌスの槍を、へし折った。ポッキリと。
『……。』
 機龍フィアの中で、ツムグは静観していた。
 だがやがて口元をニッと歪めた。
『もうこれで手はないね! 僕の勝ちだ! アハ、ハ、ハハハハハハハハハハ! …ハハ………、あっ?』
 その時、初号機の腕がボゴリッと歪に膨れ上がった。
 初号機は、それを見て放心していると、同様に他の部位がボコボコと膨れた。
『え、え、えっえっえっえっえっ!? な、なにこれ、ナニコレナニコレナニコレナニコレナニコレ!?』
 メキメキと初号機の顔を押しのけるように新しい頭部が発生した。
『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!? イタイイタイイタイイタイ! ナニコレ!? タスケテ!』
 初号機の悲痛な叫び声が木霊する。
 背中の十数枚の翼が変形し、コウモリの翼のようになる、尻尾が生え、腹部に口のようなものができ、爪が伸び、角が生える。
 その姿は……、まるで。

「デストロイア…!?」

 かつてゴジラに倒された怪獣、デストロイアによく似ていた。

「G細胞の副作用か!」
 初号機はゴジラの飲み込んでいる。
 それによりゴジラの細胞を吸収してしまい、今になって副作用が出たのだとしたら…。
「破壊神の…呪いか?」
 愕然とした副艦長がそう呟いた。
 神ですらもゴジラの持つ呪いにも等しい力に耐え切れなかったのだ。
 初号機・デストロイアが咆哮した。
 その顔の横にある初号機の顔は、イタイイタイと泣き叫んでいる。
 他の使徒の形はもう初号機・デストロイアに溶けて消えていた。

『待ってた。これを待ってたんだ。』

 ツムグだけが、この状況の中、笑っていた。





***





「初号機が、怪獣デストロイアに変化したぞ!」
 基地でも、初号機の変化は観測していた。
「色は白いが、間違いなくデストロイアですな、アレは!」
「なぜデストロイアに!?」
「ゴジラを喰ったからか!?」
 かつてゴジラと戦ったデストロイアとは、比較にならない巨大さを持つ初号機・デストロイア。
 フォースインパクトは、止まったが、新たな脅威に、司令部に絶望が広がりつつあった。
「波川司令…。」
「ロンギヌスの槍も失われた…。ゴジラも今だ敵の腹の中…。」
 波川はブツブツと状況をまとめようと呟いていた。
「ツムグとは通信は繋がりますか?」
「いいえ、回線が…。」
『なに? 波川ちゃん。』
 回線が切れていると言いかけたオペレータを遮って、通信機からツムグの声がした。
「……あなた、状況を…。」
『うん。こんなことになったの、俺がやったから。』
 ツムグは、すぐに白状した。
「この責任は…。」
『俺はただ死にたいだけ。でも波川ちゃん達を殺したいわけじゃない。』
 ツムグは、一人語る。
『全部、俺が何とかするから。俺がやったことは自分で責任はとなるから。だから…。』
 安心して。と言って、ツムグは通信を切った。
「波川司令、信用していいのですか!?」
「…ええ。」
「この事態を作った張本人なんですよ!?」
「ですが、それ以外に方法があるのですか?」
「っ…。」
 騒然となる司令部が鎮まった。鎮まらざる終えなかった。
 こちらに手はない。
「波川司令! ディメンション・タイドの使用の許可を!」
 だが猛者はいた。
 ディメンション・タイドによる、初号機・デストロイアの消滅を提唱したのだ。
 それにはすぐに周りから賛成の声が上がった。
 波川も、すべての手を尽くすべきだと考え、使用の許可を出した。





***





「波川司令から、衛星からのディメンション・タイドの使用の許可が下りたと…。」
「そうか…。」
「今すぐこの場を離れなければ! 巻き込まれますよ!」
「……総員、この場から退却だ!」
 宇宙からのディメンション・タイドから逃れるために、轟天号は初号機・デストロイアから離れた。
 ところで初号機・デストロイアは、先ほど咆哮を上げてから動く気配がなかった。とにかくデカいのでそこにいるだけで圧倒的だ。
 やがてディメンション・タイド衛星が、照準を初号機・デストロイアに合わせた。
 それとほぼ同時に、初号機・デストロイアの顔が空に向けられた。
 そして衛星から発射されたブラックホールが大気圏を越え、初号機・デストロイアに向かってきた。
 すると初号機・デストロイアが口を開け、強大な光線を吐きだした。
 光線はブラックホールと衝突し、上空で光が爆発し、光線はブラックホールを超えて宇宙空間にある衛星に着弾して衛星を消滅させた。
 光の爆風に離れていた轟天号も煽られる。
 初号機・デストロイアが再び大きく咆哮した。
 長く太い尾が地面にめり込み地割れを作り、振り下ろされた頭部の角が山を抉って破壊した。
 再び口から放たれた光線が地平線の彼方に炸裂し、核爆発を超えそうな爆発が起こった。
 強大な力による破壊は、地震となり、大気をも揺るがし世界中の人間に危機を知らしめる。
 もはや己を止める者はいないのだと言わんばかりの、そしてすべての命に対して絶対的な絶望を与えるような咆哮を上げる。現に状況を見ている基地の司令部や、轟天号内に絶望が広がっていた。

『まだ終わりじゃない。』

 そこに、場違いな明るい声が響く。
『終わらせやしない。』
 機龍フィアが初号機・デストロイアに突撃していく。
 初号機・デストロイアは、それに気づいて足を上げ踏みつぶそうとしたが、逆に足を伝って機龍フィアが昇り、腹部に辿り着いた。
『ゴジラさん。それで、いいの?』
 初号機・デストロイアの腹部にある口部に、機龍フィアの両手のドリルが突き刺さり採掘するように掘り進んでいく。抉られた初号機・デストロイアの細胞が波打ち、機龍フィアを巻き込み取り込むように動き出す。
『リミッター解除、7っ!!』
 ツムグは、すべてのリミッターを解除した。
 機龍フィアの目が、関節などが激しく発光し始めた。
『ゴジラさん。本当に……、それでいいの?』

 機龍フィアの姿がやがて初号機・デストロイアの中に飲まれた。





***





 ゴジラは、眠っていた。
 あまりの心地よさに、あまりの心地よい温かさに。
 自分の世界は、常に壮絶な冷たさと熱に侵されている。それが一切ない、まるで生まれる前の胎児が母親の羊水の中を漂っているかのような心地よさがゴジラを浸食していた。
 ゴジラは、忘れかけていた。
 己の存在理由を。
 己が何を憎んでいたのかを。
 何に怒り、破壊を行ってきたのかを。
 黒い月。それは、使徒以外のすべての生命体の祖となったリリスが乗ってきたもの。
 そんな場所の居心地の良さは、大きな罪で歪められたとはいえ、生命の一つであるゴジラにも耐え難いものであった。
 ああ、このままこの場所で溶けてしまおうかという思いがゴジラに湧きあがっていた。
 現に溶け始めているのだが…。

「それで……、いいの?」

 そこに不快な声が聞こえて来た。
 その声の主のことをゴジラは、思い出せなくなっていた。
「本当に? それでいいの?」
 ゴジラは、無視を決め込んだ。
「無視しちゃって…、聞こえてるくせに。」
 無視する。
「本当にいいの? このままだとゴジラさんじゃなくて、デストロイア?が世界を壊すんだよ?」
 無視する。
「ゴジラ・ジュニアを殺した奴にそっくりの奴に、ゴジラさんのやろうとしてきたことが奪われるんだよ?」
 無視…する。
「ゴジラさんは、何のために今まで戦ってきたの? 殺してきたの? 本当にそれでいいの? このままここにいたいの?」
 無視……。
「………結局、ゴジラさんもその程度か。」

 ブチリッ

 何かが切れた音がした。 
 

 
後書き
最後、溶けて吸収されかけてたゴジラ、キレました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧