ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)
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第三十五話 量産機
前書き
エヴァ量産機登場。
地球防衛軍の基地の復興は順調だった。
一方で、ネルフ側の職員達の避難と、弐号機の運び出し、リリスの警護。
ネルフ内部に侵入したと思われる初号機を探し出すため、捜索隊がだだ広いネルフ内部を捜索していた。だが一向に見つからない。
なにせ入り組んでいるし、とにかく広い。
迷子になる捜索隊員達もいて、ネルフ内部で遭難するという事件があったりして、捜索は難航した。
運び出された弐号機は、かつての真紅の美しい姿は見る影もなく、薄さびれ、片腕がない有様だった。これをアスカが見たら発狂ものであろう。
ゴジラがエヴァンゲリオンを狙うため、どこに運ぶかということで悩まされたが、機龍フィアが警護に着くことで解決。
五号機の運び出しも決行されたが、保存液(?)から出したら下半身が無くなっていた。どう見ても零号機同様に食われてました状態だった。
地下にあるリリスの運び出しも考えられたが、やはりデカイのと、磔にされているのと、地下深く過ぎるということで運び出し不可能だった。その代わりと言ってはなんだが、リリスのある地下に厳重な警備体制が敷かれた。運が良ければリリスを狙った初号機を見つけることができるかもしれないというのもある。
とにかく初号機を見つけ出すことに躍起になっていため、彼らは気付かなかった。
裏で動くゼーレに。
そしてそれを黙認するツムグに。
***
「綾波、大丈夫?」
「うん…。」
仮設テントの中で、横になっているレイに、シンジが声をかけた。
初めての生理による生理痛が辛くて横になっているのだ。
「まだ薬効かない?」
「うん…。」
痛み止めをもらって飲んだのだが、まだ効果がないらしい。
辛そうなレイに、シンジは心配になった。病気ではないし、むしろ正常な事なのだが辛そうなのを見るのは辛い。
「碇君…。」
「なに?」
「手…、握って。」
「えっ。あ、ああ。分かった。」
レイからのおねだりに一瞬シンジはびっくりしたが、すぐに持ち直し、レイの手を握った。
レイの手はしっとりと汗ばんでいた。
伝わってくる体温は間違いなく人間の物だ。レイが人間じゃなかった頃の冷たさはない。
「……。」
「綾波? どうかした?」
「碇君…。傍にいて。」
「傍にいるじゃないか。」
「違うの…。」
「なにが?」
レイは、両手でシンジの手を握った。
それはまるでこれから起こるかもしれない何かに怯えているかのように。
「怖い…。」
「何が怖いの?」
「分からない…。でも、怖い。」
レイは、得体のしれない不安に怯えていた。
「大丈夫。僕は綾波の傍にいるよ。」
「私も、碇君の傍にいる。」
レイを安心させようとシンジはそう言うと、レイはそう返答した。
「絶対離れない。」
「本当にどうしたの?」
「分からないけど…、碇君と離れ離れになりそうな気がして…。」
「大丈夫だよ。尾崎さん達もいるし…。」
「! 尾崎さん達も危ないかも!」
「えっ? ちょっ、綾波。」
「うぅ…。」
「ほら、無理しちゃダメだよ。」
勢いよく起き上がったはいいが、すぐに力尽きてシンジにもたれかかってしまった。
「尾崎さん達は…無事?」
「それは、見に行かないと分からないけど。尾崎さん達に限ってそんなこと…。というか綾波、本当にどうしたの?」
「……声が…。」
「こえ?」
「“私”だった“わたし”が言うの…。みんな……、消えるって。」
「どういう意味?」
「ごめんなさい…。私ももう分からないの。前の“わたし”なら分かったかもしれないけれど。」
「前のわたし? 使徒が混じってた頃の?」
「私の魂は、人じゃなかった…。それはなんとなく覚えてる。私が人間になって、前の“わたし”はどこかに行っちゃった。前の私が言っている気がするの。ごめんなさい。意味が分からないわよね…。」
「分からないけど、とにかく良くないことが起こるかもしれないってことなんだろ?」
「うん…。」
「僕ら、みんなが消えるかもしれないって。」
「うん…。」
「本当にそんなことが起こるの?」
「…ごめんなさい。」
「なんで謝るのさ。」
「はっきりしなくてごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。」
「怖い…。」
「前の綾波が言ってること、音無博士に言おうか?」
「…信じてもらえるかな。」
「きっと信じてくれるよ。」
なにせヘラヘラしてるが的中率ほぼ100パーセントの預言者・椎堂ツムグを抱えた地球防衛軍だ。更にレイは、元々人間じゃなかったのもあり、信憑性はあると判断されるだろう。
「大丈夫かい?」
「あっ、尾崎さん。」
仮設テントの入り口から尾崎が顔を覗かせた。
「美雪から聞いたよ。」
「あの尾崎さん。ちょっと話が…。」
「なんだい?」
シンジは、レイから聞いた話を尾崎に話した。
それを聞いた尾崎は眉を寄せた。
「レイちゃん、本当なのかい?」
「…たぶん。はっきりしなくてごめんなさい。」
「いやいいんだ。俺もなんとなく悪い予感がしていたんだ。」
「尾崎さんも?」
「俺の悪い予感はよく当たるのさ…。」
尾崎は遠い目をして言った。
「美雪に伝えておくよ。」
「お願いします。」
「…お願いします。」
尾崎は去っていった。
「碇君…、やっぱり怖い。」
「不安な気持ちはそう簡単には拭えないよ。僕が傍にいるからさ。」
「うん…。碇君と一緒にずっといたい。」
「…僕もだよ。」
二人はお互いが大切なことを再認識した。
と、その時。
「な!? なんだ!?」
大きな地響きがきた。
シンジが慌てて外へ出ると、遠くに何かがいるのが見えた。
大きい。基地に残った建物の大きさと比べてみて、たぶん80メートルはありそうだ。
白くて…、背中に大きな翼があるヒト型の何かがそこにいた。
「なんだよ、あれ?」
シンジが呆然としていると、ソレは翼を背中に吸い込むように収納し、甲高い声で咆哮した。その頭は長く大きく裂けた口があり、目や鼻や耳などはない、頭だけ見たら人間ではない。例えるなら目のないウナギだ。
「シンジ君、綾波さん!」
「寮長さん!」
「逃げるんだ!」
駆けてきた寮長がすぐに避難するよう呼び掛けて来た。
「寮長さん、アレなんなんですか!?」
「俺に分かるわけないだろ! 怪獣でもないし、使徒かもしれない。クソッ、基地の戦力が手薄な時に!」
「あれは…。」
「綾波?」
「エヴァ…。」
「えっ?」
レイは、白い巨人の正体を見破った。
エヴァンゲリオン量産機。
S2機関を持つ無人機である。
***
『基地に白い巨人が襲来した! 機龍フィアは直ちに基地へ帰還し巨人を退けよ!』
「悪いけど、それはできないかも。」
『なんだと!?』
「だって…、空を見て。」
『なっ…!』
空を見上げると、空を旋回する大きな翼を持つ白い巨人…エヴァンゲリオン量産機がいた。
しかも9体。
『馬鹿な…、いつの間に!』
「やれやれ…。基地の方は尾崎に任せた方がいいかも。尾崎ならやれるよ。」
『おい、ま…。』
ツムグは、通信を切った。
そして空を見上げ、エヴァンゲリオン量産機達を見上げた。
空を旋回していたエヴァンゲリオン量産機は、やがて地上へと舞い降りた。
そして翼を背中に収納すると、手の持っている大ぶりの刃を握りしめ、機龍フィアを囲んだ。
「さあ…、始めようか。おじいちゃん達。」
ツムグの言葉が合図だったかのようなタイミングで、エヴァンゲリオン量産機達が全方向からATフィールドを展開した。
飛んできたATフィールドを機龍フィアは、尻尾を突き出して機体を高速回転させATフィールドを破壊した。
回転し終えると、眼前に量産機の一体が大ぶりの刃を振り上げて飛び掛かってきていた。
機龍フィアの頭部に刃が命中するもガキンッと弾かれ火花が散っただけで終わった。
大ぶりの両刃の武器を片手に持ったまま四つん這いの形でエヴァンゲリオン量産機は、飛びのいて距離を取った。その様はバルディエルの動きに似ていた。
「甘いね。機龍フィアの装甲は、軟じゃないんだよ。」
ツムグは、チッチッと人差し指を振った。
「しかも“コピー”じゃねぇ…。」
ツムグは、エヴァンゲリオン量産機達が手にしている大ぶりの刃の正体を見破っていた。
「ま、いいや。遊んであげるよ。…時間稼ぎぐらいはしてあげるから。っお。」
ツムグは意味深に笑う。だが次の瞬間に強い衝撃があった。
横からエヴァンゲリオン量産機の一体からのドロップキックが頭に決まったのである。
隙を突かれて機龍フィアが横に倒れる。
そこへ畳みかけるように大ぶりの刃が振り下ろされるが、機龍フィアの口で刃の先端を受け止め防いだ。
「さっきのは効いた。中々やるね。」
『…ろす…。』
「うん?」
遠くの基地から伝わってくる強烈な思念を感じ取った。
『コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス! ジンルイホカンのジャマをスルモノはコロス!』
「…もしかしてヲルカ?」
ツムグは、基地を襲撃した一体のエヴァンゲリオン量産機のダミープラグの人格が何者なのか見破った。
無人のエヴァンゲリオン量産機を動かすダミープラグの素材自体はアダムからサルベージされたカヲルとヲルカと同じものが使用されているに違いない。そこに死んだヲルカが宿ってしまったのだろう。
「可哀想に…。」
死んでなお人類補完計画に執着するヲルカの様に憐れみを感じた。
「尾崎ちゃんならヲルカのことに気付くよね。でも手加減したらダメだ。それじゃあ救われない。」
機龍フィアを操作し、倒れている機龍フィアに跨っているエヴァンゲリオン量産機の首を掴んで放り投げた。
機龍フィアの強力な握力で首を掴まれたためその量産機は首が曲がっちゃいけない方向にグニャッとなって地面に転がった。
「手加減しちゃダメなんだ。尾崎ちゃん。分かるよね?」
機龍フィアを立たせながら、ツムグは、基地で量産機の一体と戦っているであろう尾崎に向けて言った。
***
尾崎は眼前で暴れるエヴァンゲリオン量産機を見て、目を見開いていた。
「………ヲルカ…?」
カヲルによって死を与えられたカヲルと同じ存在(※魂は別)の魂が目の前の異形の巨人に宿っていることに気付いた。
伝わってくる思念は、ただひたすら人類補完計画を邪魔する者達への敵意に満ちていた。
折角復興しつつあった基地がまたも破壊されていく光景を背景に、尾崎は戸惑った。
ヲルカの記憶が尾崎の脳に流れ込んでくる。
アダムからサルベージされた存在でありながら欠陥品の烙印を押され、急激な老化現象に苦しみ、後に生まれた渚カヲルがアダムの魂を持つ者として完成されたことに嫉妬し、けれど何もできない己を憎み、そこにゼーレの老人達から己が魂を救われる方法として人類補完計画を教えられた、自分が死ぬ前に人類補完計画が成されなければならないと時間を経るごとに執着していき、命を懸けてゼーレのために働いた、そしてカヲルに殺された、カヲルに敗北した悔しさと、人類補完計画を邪魔する者達への憎しみがエヴァンゲリオン量産機の一体に宿ったのだ。
「うぅ…。」
自分のことのようにヲルカの苦しみが肉体に伝わり、尾崎は膝をつきかけた。
「でも…。」
尾崎は、崩れそうなる膝を叩いて叱咤し、力強く地面を踏みしめた。
「負けるわけにはいかないんだ!」
尾崎は飛んだ。
建物を伝い、エヴァンゲリオン量産機の背中を目指す。そこにはダミープラグが搭載されたエントリープラグがある。それを破壊すれば止まるだろう。
それに勘付いたエヴァンゲリオン量産機は、腕を振るい近くにある建物を破壊した。
「くっ! っっ!?」
建物を破壊され、地面に落ちていく尾崎。
そこへエヴァンゲリオン量産機がATフィールドを張って飛ばした。
尾崎は自らもATフィールドを張って中和して防いだ。
次の瞬間、エヴァンゲリオン量産機の左腕が切り落とされた。
悲鳴あげるエヴァンゲリオン量産機は、左腕の切断面を押さえて悶えた。
「大佐!」
「よー、とんでもねー輩が来ちまったな。」
ゴードンは、刀についた血を振り払いながら言った。
そうこうしているうちにエヴァンゲリオン量産機の左腕が再生した。
「チッ…、この程度じゃダメか。何か決定的な一撃が必要そうだな。」
「決定的な一撃…。」
ゴードンの近くに着地した尾崎は、何かないかと思案した。
そして脳裏を…、月に突き刺さったロンギヌスの槍の姿が過った。
「……ゴードン大佐、すみません。時間稼ぎをお願いできますか?」
「何をする気だ?」
「決定的な一撃になるかもしれない武器を呼び寄せます。」
「なんだそりゃ…、ああ。」
ゴードンは、すぐに察した。
尾崎は、にっこりと笑い。そして気を引き締めるために頬を両手で叩き意識を集中するべく目を閉じた。
ゴードンは、刀を握り直し、エヴァンゲリオン量産機を見据えた。
『コ、ロス!』
「やれるもんならやってみやがれ!」
エヴァンゲリオン量産機の懐に飛び込んだゴードンに刀の閃光がエヴァンゲリオン量産機の足を切断した。
『ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!』
「とろいぜ。」
迫って来るエヴァンゲリオン量産機の手を軽々と避け、その手も切り落とし、すぐに再生するがすぐに切るというのを繰り返した。
ゴードンがエヴァンゲリオン量産機の相手をしている間に、尾崎は念じていた。
来い、と。
月にあるロンギヌスの槍に向けて。
月の地表に突き刺さっているロンギヌスの槍がギチギチと震えながら徐々に抜けていく光景が脳裏に浮かんでいる。
もうすぐ、もうすぐ…、来い!っと、尾崎は一層強く念じた。
そしてついにロンギヌスの槍が月から離れ、地球へと向かった。
空を見上げた尾崎は、両手を空へとかざした。
そして、キッとエヴァンゲリオン量産機を見た。
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
両手を振り下ろすと同時に、空から飛来したロンギヌスの槍がエヴァンゲリオン量産機の体を貫いて地面に縫止めた。
エヴァンゲリオン量産機が大きな断末魔の悲鳴を上げた。
『ギャアアアアアアアアアアアアアア、コ、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロ……ス……。ナゼだ…。ナゼ…、ジャマを…。』
「人類の未来は一つじゃない。」
『ジンルイホカンは……、ワタシのイノチが…、アアアアアア……。』
「…次に生まれ変わる時は、まともな人生を送れるといいな。」
やがてエヴァンゲリオン量産機は、沈黙した。
ヲルカの思念が消えたのを感じながら、尾崎は疲れた様子で両膝を突いた。
「終わった…。」
「お疲れ。」
エヴァンゲリオン量産機の返り血を浴びた血塗れのゴードンが歩いてきた。
「まさかロンギヌスの槍をまた地球に戻すことになるとはな。」
「分かってます…。本当は月にそのままにしておけばよかったんですけど。」
「あとでまた月に投げとけ。」
「はい。……!?」
「なに!?」
その時、沈黙していたエヴァンゲリオン量産機が動き出した。
すでにヲルカの思念は宿っていない。だが動いている。
再起動したエヴァンゲリオン量産機は、体に突き刺さっているロンギヌスの槍に手をかけ、引き抜こうとし始めた。
「ハっ! ダミープラグ!」
エヴァンゲリオン量産機に積まれている自動操縦のためのプログラム、すなわちダミープラグがヲルカから解放されたことで独自に動き出したのだ。
エヴァンゲリオン量産機は、ズルズルと自分の体からロンギヌスの槍を抜くと、ロンギヌスの槍を手にしたまま翼を展開した。
そして飛び立った。
「ロンギヌスの槍が!」
「チっ! 敵の狙いはこれだったか! 尾崎、槍を呼べないのか!?」
「え、…えっと…。」
「無理か…。」
その時、ゴードンの通信機が鳴った。
「あ? ああ…、そうか。行くぞ。」
「どこへ?」
「奴(エヴァンゲリオン量産機)の行く先だ。」
通信機を懐に収めたゴードンは、尾崎を連れて轟天号へ向かった。
「よぉ。」
「風間! もういいのか?」
轟天号が収まっているドッグに行く途中で風間と出会った。
「寝てられるか。」
「ムチャするなよ。」
「俺がいなくて誰が操縦桿握る?」
「いや…そりゃ代理が…。」
「あ?」
「な、なんでもない…。」
「とっとと行くぞ。」
ゴードンが急かした。
「大佐、敵はどこへ?」
「第三新東京だ。」
「第三新東京に? なぜ?」
「分からねーよ。あれと同じのが9匹もいやがって、今機龍フィアが応戦してるらしいがどうも様子がおかしいらしい。」
「様子がおかしい? …っ。」
尾崎の嫌な予感が強まった。
「ぼーっとするな、行くぞ!」
「は、はい!」
尾崎は頭を振って気を持ち直しゴードン達を追って行った。
***
「おじいちゃん達、いくらなんでも時間かけすぎだよ。」
機龍フィアで、エヴァンゲリオン量産機達を相手にしているのだが、決定的な一撃を与えていないので一見すると戦いは膠着していた。最初に首を折ったエヴァンゲリオン量産機は、すでに復活している。
機龍フィアの動きにたいする不信はすでに地球防衛軍やネルフにも伝わっているだろう。
さっきからひっきりなしに通信機が鳴っている。
『ツムグーツムグー、どうして倒さないの?』
「んー。」
ふぃあですら不信がっている。
「待ってるんだよ。」
ツムグは、微笑む。
『何を?』
「でも全然来ないんだよね。」
『だから何を?』
「サードインパクトさ。」
『えっ?』
その時、低空飛行してくるボロボロのエヴァンゲリオン量産機が、機龍フィアの頭上スレスレの位置を高速で横切った。
その手に持つ、ロンギヌスの槍が離され、横たわっている弐号機のすぐ横に突き刺さった。
そのエヴァンゲリオン量産機は、まるで役目を終えたかのように地面に激突し、転がりながら石化していきやがて崩れ落ちた。
すると弐号機の右手がロンギヌスの槍を掴んだ。
ギシリッと音を立ててゆっくりと立ち上がる弐号機を、機龍フィアに乗っているツムグは、見つめていた。
エヴァンゲリオン量産機達が、急に翼を広げ飛び立ち、弐号機の周りに集合した。
『うふ…、ウフフフフフフフ…。』
壊れた少女の笑い声が、弐号機から聞こえて来た。
量産機の二体がロンギヌスの槍を手にする弐号機の横に並び、支えるように掴むと、翼を広げて弐号機と共に空へ浮遊した。他の量産機達も空へ舞い上がる。
「……。」
それらすべての動きを、ツムグは、黙ったまま見送った。
第三新東京に面した海の向こうから、ゴジラの雄叫びが聞こえて来た。
後書き
カヲルの失敗作・ヲルカは、怨念まで利用されてしまった…。
そしてゼーレの思惑通り月から呼び戻されたロンギヌスの槍を、ダミープラグを起動させて回収、第三新東京に運んだ。
椎堂ツムグは、こうなることを知ってて、そうなるよう仕向けました。
ある目的のために…。
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