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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第三十話  ふぃあと渚カヲル

 
前書き
序盤は、ふぃあと渚カヲルとの対話。

中盤は、リツコがなぜゴジラが使徒を殺せるのかその理由に気づく。

終盤は、シンジ×レイ。 

 

 三日月が綺麗なその夜。
 ふぃあと渚カヲルの対話が行われていた。
『それでね、それでね。ツムグったら、いっつもゴジラさん、ゴジラさんって言うんだよ。ツムグは、ふぃあのなのに! もう!』
「君にとってツムグは、どういう存在なんだい?」
『お兄ちゃん…なのかな? ふぃあは、ツムグのDNAコンピュータから生まれたから。』
「つまり、君と彼は兄妹というわけだね?」
『たぶん、そうなるのかな。』
「君にとって、周りのリリ…、人間はどんな存在なんだい? ツムグ以外で。」
『周りの人間? う~~~~~ん。分かんない。でもふぃあのこと整備してくれたりしてくれるの。だから大切。だと思う。』
「大切…か。もしも、君のその大切なモノがなくなったらどうする?」
『なくなったら…、困るなー。ふぃあ、ひとりじゃダメだもん。みんながいないと、ふぃあ、ふぃあじゃなくなっちゃうと思う。』
「君が君じゃなくなる?」
『壊れちゃう。』
「ああ、そう意味。」
『カヲルにとって人間ってナニ?』
「えっ…。」
 逆に問われて、カヲルは言葉に詰まった。
「僕にとって? ………僕はまだ…、人間のことをよく知らないんだ。だから分からない。」
『そうなの? なんだろ……。』
「どうしたんだい?」
『カヲルは、アルミサエルに似てる…気がする。』
「っ…、君は、“彼”についてどう思ったんだい?」
『えっとねー。お話したよ。でも、もうお話しできないから寂しい…。』
「君は、“彼”に対して好意を抱いていたのかな?」
『コウイ? よく分かんなけど、嫌いじゃなかったよ。』
「それが好意に値するということだよ。」
『ふ~ん。カヲルは、どうしてふぃあとお話ししに来たの?』
「君に興味があったからさ。」
『ふぃあに?』
「そう。君に。」
『ふ~ん。カヲルは、ツムグとお話しした?』
「話したよ。でもなんだか僕と話をしたくなさそうだったな。」
『ツムグが?』
「“君の戦う相手は、俺じゃない”って言われたよ。どういう意味かわかるかい?」
『そのままの意味だと思うよ。ツムグがそう言うならカヲルとは戦わないよ。』
「どうしてなんだろう? 彼こそが“僕ら”と決着をつけるべき相手だと思ったのに…。」
『ボクラ?』
「ああ、そのことなんだけど…。」
『イイヨ。言わなくて。』
「えっ?」
『もう分かっちゃった。』
「……まだ内緒だよ。」
『ウン。内緒。ここでの話も全部内緒。』
「…ありがとう。」
『ツムグにだけはバレちゃうかも。』
「彼にならいいさ。彼はここで僕が君と話をするのを知っているはず。」
『ツムグならしょうがないね。』
「そろそろ太陽が昇る。お話はお終いだ。」
『ウン。じゃあね。』
 カヲルは、機龍フィアから降りてドッグから出て行った。





***





 ネルフ本部の研究室。
 そこはネルフが健在の頃、リツコが籠って研究を行っていた場所である。
「次で最後…ね。」
 使徒は17体存在する。
 そのうちの二体が、アダムとリリス。それ以外の使徒が現れ、ゴジラに倒されたり、地球防衛軍に倒されてきた。
 裏死海文書によれば、次で最後のはずである。
「ゼーレももう後がないわね…。何か企んでそうだけど。」
 ゼーレが何かをしようとしているのをリツコは察知していたが具体的なことは分からなかった。
 リツコは、パソコンを操作して、これまでの使徒の戦歴のような物を表示した。

 第三使徒サキエル。
 ゴジラに殲滅される。

 第四使徒シャムシエル。
 ゴジラに殲滅される。

 第五使徒ラミエル。
 ゴジラに殲滅される。

 第六使徒ガキエル。
 轟天号の機転により、ゴジラに殲滅。

 第七使徒イスラフェル。
 機龍フィアに殲滅。この時ゴジラは、アメリカでエヴァンゲリオン肆号機をネルフ支部ごと破壊。

 第八使徒サンダルフォン。
 轟天号の冷凍光線で固められた後、ゴジラと機龍フィアに殲滅される。

 第九使徒マトリエル。
 ミュータント兵士・風間少尉により殲滅。

 第十使徒サハクィエル。
 地球防衛軍・ロシア基地を破壊。ゴジラの熱線により殲滅。

 第十一使徒イロウル。
 機龍フィアに寄生しするも、機龍フィアの外部リミッター解除装置によりG細胞完全適応者の細胞を活性化させられ殲滅。

 第十二使徒レリエル。
 ディラックの海にゴジラを取り込むも、内部から破壊され殲滅。この際G細胞完全適応者の体液を散布。G細胞完全適応者の体細胞が使徒に有効なのを確認。

 第十三使徒バルディエル。
 空中戦艦・火龍を乗っ取り地球防衛軍基地を攻撃。しかし火龍はデコイであり、本体はエヴァンゲリオン参号機に取りついていた。エヴァンゲリオン弐号機と交戦するも弐号機を圧倒。その後ゴジラに殲滅される。

 第十四使徒ゼルエル。
 機龍フィアを退け、ゴジラを圧倒する。しかし純粋なゴジラ細胞を取り込んだ結果、過去に確認された怪獣オルガに似た怪獣に変異し、弱体化。変異に耐え切れずコアが崩壊し溶解する。

 第十五使徒アラエル。
 精神波長にて地球防衛軍に甚大な被害を与えるも、尾崎少尉の投擲したロンギヌスの槍にて殲滅。

 第十六使徒アルミサエル。
 尾崎少尉を狙うも、G細胞完全適応者の機転によりゴジラに誘導され、殲滅。


「……こう見るとほとんどゴジラに倒されているわね。」
 特にサキエルとシャムシエルは、ゴジラに一撃でやられている。たぶん使徒の中でかなり不憫である。
 ゼルエルもある意味で不憫であるが、ほぼ自業自得だ。
「それにしても、G細胞と使徒がここまで相性が悪いなんてね…。」
 なぜかしら?っと、リツコは首を傾げた。
 リツコは、更に疑問を抱く。
 ゼルエル以降の使徒が、人の心に迫っているということだ。
 アラエルの精神波長は、攻撃というより相手の精神を強引に解析するためのものだ。
 その波長の中で、尾崎だけがなんともなかったらしい。
 カイザーとしての神経構造の違いではないかと思われるが、こればかりは本人の体を調べてみないことには分からない。
 そして次に、アルミサセル。
 この使徒は、パターン識別装置で青からオレンジに変化するという実体があるのかないのかよくわからない使徒であった。
 この使徒は、初めにいきなり尾崎を狙って動き、椎堂ツムグによると尾崎との融合を図ろうとしていたらしい。
 椎堂ツムグの機転により、機龍フィアの内部に入り込み、その後なぜかゴジラに向かって行き、融合に失敗。逆に浸食され結果崩壊。ということらしい。
「そもそもゴジラがどうやってATフィールドを破っているかよね。ずっと疑問だったんだけれど。」
 今更であるが大きな疑問である。
 絶対領域とされ、エヴァでなければ突破できないと定義していたATフィールドを、なぜゴジラが破れるのか。
「ゴジラは、南極に封印されていた……。南極はセカンドインパクトで消滅した。第三新東京に姿を現したゴジラは、南極に封印される前より強くなっていた。」
 リツコは、パソコンを操作し、ゴジラが使徒を殲滅する瞬間などの映像を出す。
「ATフィールドを破るには、同じATフィールドで中和するか、その逆のアンチATフィールドを用いるしかない。ロンギヌスの槍は、アンチATフィールドを発生できるけれど………。まさか……。」
 リツコは、サキエルのATフィールドを打ち破った瞬間の映像を連続して出力した。
 サキエルのATフィールドは、ゴジラの手が触れただけで簡単に破れている。
「ゴジラは、破壊神という仇名がある通り、すべてを破壊する力を持つのなら…、ゴジラは、アンチATフィールドを持っている? だからATフィールドが意味をなさない? そのエネルギー源は、南極を消滅させた際のセカンドインパクトのエネルギー? G細胞にはアンチATフィールドを無意識に発生させる能力が備わっているのだとしたら……。ああ、なぜ使徒がゴジラに勝てないのか分かったわ。」
 アンチATフィールドを常時(?)発生させるものを喰ったら、そりゃ体内から溶けてしまうわと、リツコはぼやいた。
「ゴジラは、たぶん無意識でやっているのようね。」

「よく分かったね。」

「!!!???」
 背後から男の声が聞こえたので、リツコは思いっきり体を跳ねさせ、席をけって立ち上がり背後を見た。
 金色の混じった赤毛の男が笑みを浮かべて立っている。
 この男をリツコは、知っている。
「椎堂、ツムグ!」
「初めまして。赤木博士。」
 警戒してくるリツコの態度を気にすることなく、ツムグは手をヒラヒラさせて笑う。
「どうしてここに? あなたは監視されている身じゃなかったからしら?」
「アハハ、監視はされてるけど、抜け穴なんていくらでもあるよ。ここに来たことだって知られてない。」
「何の用かしら?」
「別に用があったってわけじゃないけど、赤木博士が、ゴジラさんの力に気付いてくれたみたいだから、つい、ね。」
「ゴジラがアンチATフィールドを発生させることができるということを? あなたはそれを知っていた? じゃあ、あなた自身も同じことができることを知っているということね。どうしてそれを周りに言わないのかしら?」
「俺の場合は、少し違うんだよね。調べてみる?」
「無断で調べたら五月蠅いでしょう? そっち(地球防衛軍)が。」
「そういえばそうか。赤木博士、ここ(ネルフ)に縛られてる身だったもんね。」
「はあ…、噂では聞いてたけど、あなたってヘラヘラしてて気味が悪いわね。」
 リツコに嫌そうな顔をして言われても、ツムグは、そりゃどうもと肩をすくめるだけだった。
「そういえば…。」
 リツコは、思い出した。
「あの子を人間にするって実験は、あなたが立案したらしいわね?」
 あの子とは、レイのことだ。
「人間になれる可能性があるってことを言ったのは俺だよ。あのままじゃ、ゴジラさんに狙われちゃう。」
「それもあなたの細胞を使ってね…。とんでもないことをしてくれるわよ。」
「俺の細胞が、あの子の中に入るのがイヤ?」
「正直ね。」
「他に方法があったらよかったんだけどね…。」
「そう……、でも、お礼は言っておくわ、ありがとう。」
 リツコは、レイが完全な人間になれることにたいしてお礼を言った。
「そうだ。もうすぐその実験が始まるよ。立ち会う?」
「私は行く必要はないわ。」
「そうか…。信じているんだね。」
「レイは、地球防衛軍に行ってから随分と人間に近くなった。……あの子のおかげでもあるかもしれないわね。」
「シンジ君のこと? 確かにそうかも。仲良くしているよ。…告白したし。」
 最後の方を意地悪く言った途端、リツコが吹いた。
「告白って…、シンジ君が? レイが?」
「シンジ君の方からだよ。泣いてOK出してたよ。」
「あらまあ。」
 リツコもそれは予想外だったらしい。
 そこまでレイの精神が成長していたことに素直に驚いた。
「じゃあ、なにがなんでも人間にならなきゃいけないわね。あの子もそれを思って実験に望むでしょう。」
「ああ、そんな様子だよ。耐えて見せるってさ。」
「そう。」
 リツコは、レイの成長を喜び笑った。
「でも不思議よね。あなたの声や言葉は初対面なのに耳に浸透するというか…。不思議と信じられる。」
「人によっては、洗脳してるって捉われてるけど、そんなつもりはないよ。」
 ツムグに対して不信を持つ人間達は、だいたいそう捉えているっぽい。
「そう思われても仕方ないわよ。あなた胡散臭いもの。」
「用はもう済んだから帰るね。」
 ツムグは、そう言うと研究室から出て行った。
 ツムグが去った後、リツコはどかりと椅子に座った。
 額ににじんだ汗を手で拭う。
「あれがG細胞完全適応者……。なんていうか……、気味が悪い存在ね。」
 ツムグの表情は笑みを浮かべていて、何を考えているのか分からない。
「彼も彼で何を考えているのやら……、疑問が増えちゃったわ。」
 ツムグが何を考えて行動しているのか、その理由も気になってしまった。
 そういえばと、過去のゴジラの資料をパソコンに表示した。
 デストロイヤとゴジラの戦闘でメルトダウン寸前だったゴジラが突然元に戻ったということがあった。この際にG細胞完全適応者が関わっているというデータが解散前の地球防衛軍にあった。なぜそれを今リツコが閲覧できるかというと、一回解散した結果、データが国連軍の倉庫に眠り、そのコピーが出回ってしまったためである。真実かどうかは別として。出回ってしまったことが逆に真実味を失せさせてしまったのだ。当事者でもない限り、真実は分からない。
 このデータによると、椎堂ツムグは、本気で死にかけたらしい。頭を潰そうと、心臓を潰そうと、焼こうと、浸そうと何をやっても死ななかったのに。なぜかこの時だけは。
「まさか彼は……。」
 リツコは、ツムグの目的をなんとなく察した。
「だとしたらとんだ大迷惑ね。周りを巻き込んで…。」
 リツコは、溜息を吐き、頭を抱えた。





***





 M機関の訓練場で、二人のミュータント兵士が戦っていた。
 その戦いは、何十分にも及ぶ長い戦闘で、両者ともに疲弊していた。
「何をやっている!」
 部下からの報告を受けた熊坂が駆けつけて、二人の戦いを止めに入った。
 大量の汗をかいた風間が汗を腕で拭いながら舌打ちをした。
 熊坂を挟んで反対側にいる尾崎は、膝に手を着いて呼吸を整えようとしていた。
「風間、尾崎、無茶な模擬戦闘は慎めと何度言ったら分かる!」
「邪魔しやがって…。」
「黙れ風間!」
「申し訳ありません。」
 忌々しそうに言葉を口にする風間に対して、尾崎は頭を下げた。
「風間、おまえが尾崎を気に喰わないのは十分承知している。だが体を壊してはいざ戦闘に入った時に何もできんぞ。いつゴジラや使徒が現れてもおかしくないのだからな。」
「……なぜなんだ。」
「はっ?」
「なぜあの時…、尾崎だけが平気だったんだ。」
「あの時? あの精神攻撃を行って来た使徒の時か。それは、尾崎の神経構造の違いじゃないかと科学部が結論付けているはずだが?」
「尾崎は、俺達と何が違う! ほとんど同じはずだろ!」
「風間……。」
 カイザーと呼ばれる百万分の一確率で生まれるとされるミュータントの突然変異であるが、構造自体は他のミュータントと同じであると結論が出ている。それなのになぜか尾崎だけが使徒アラエルの精神波長の光の中で平然としていた。
「なぜおまえだけが……。」
 風間は、尾崎を睨む。
 睨まれた尾崎は、困惑した顔をする。彼とてなぜ自分だけが平気だったのか分からないのだ。
「クソッ!」
 風間はそう吐き捨てると、背中を向けて去っていった。
 風間だって本当は分かっている。これはただの嫉妬だと。だが激情を止められないのだ。同じ土俵にいるはずなのに、尾崎と自分がなぜこんなに差があるのかと。
「待て!」
 熊坂が風間の後を追った。
 残された尾崎は、ただ俯くことしかできなかった。
 風間がなぜ尾崎を避け、敵意を向けて来る理由は分かった。だがそれは自分にもわからない事情だ。
「どうして俺だけ……。」
 風間は宙を見上げ、そう呟いた。
 その疑問に答える者はいなかった。





***





 実験の説明を終えてから、レイは、実験に向けて体を調整することになった。
 まず胃腸の中を空っぽにするため実験前は絶食、下剤も飲まないといけない。
 実験が始まる前に、美味しいものを食べさせてあげようということで、戻ってきたレイには、食堂の職員達とシンジの手で、ご馳走が用意された。もちろん肉なし。
「これは?」
 レイは、テーブルに並べられた料理の数々を見た。
「実験前に絶食しなきゃならないんでしょ? その前に美味しいもの食べて英気を養ってもらおうってわけよ。」
 志水がそう言ってレイの肩を軽く叩いた。
「…ありがとう。」
 レイは、ご馳走を用意してくれた者達全員に頭を下げた。
 そしてささやかなパーティが始まった。
 レイの実験の成功を祈るものであるが、もしかしたらこれが最後になってしまうかもしれないという最後の晩餐でもあった。
 しかしそのことを決して口にしないように努めた。
 14歳の少女が人間になって戻ってきてくれることを疑いなくないという気持ちがみんなにあった。
 特に。
「なあ、綾波…。」
「なに?」
「っ、なんでもない。」
 シンジは特にそう思いたかった。レイが無事に戻ってきてくれることを。
 本当はもっと話をしたい。だが言葉が出てこない。
 そんなもどかしさにシンジは、内心苦しんだ。
 そうしてささやかなパーティは、終わった。
「シンジ君。送ってあげなさい。」
「えっ?」
「いいから。」
「は、はい。綾波!」
 志水におされてシンジは、レイのもとへ行った。
「なに?」
「い、一緒に寮に戻ろう。」
「…うん。」
 レイは、頷いた。
 M機関の施設から寮に戻る途中。二人は無言だった。
 何か話さなければいけないのに言葉が得てこない。
 シンジは、ちらりとレイの手を見た。
 ここで手を握るべきか、いかないべきか。手が泳ぐ。
 すると、レイの手がシンジのその手を握った。
「っ…。」
「碇君…、あのね…。」
「な、なに?」
「…なんでもない。」
「そ、そう…。」
 レイは何か言いかけてなんでもないと首を振った。
 歩いていればやがて寮についてしまう。部屋は違うので、別れなければならない。
 だが二人は立ち止まってしまった。握った手を離さずに。
 二人は何も喋れずにいた。
 先に口を開いたのは…。
「綾波…。」
「碇君…。」
 ほぼ同時だった。
 重なってしまって焦ったのか。
「綾波から、どうぞ。」
「碇君から…。」
「ええっと…。」
「……。」
 焦ってまた言葉にならない。
 すると。
 急にレイが涙を零し始めた。
「綾波! どうしたの!?」
「………怖いの。」
 慌てるシンジに、レイがぽつりと言った。
「あのね……。もう碇君に一緒にいられなくなるかもって…、思ったら……、怖い。どうしたらいいの…?」
「綾波…。」
「ねえ碇君…。実験の時、ギュッてして。私、死にたくない。」
 レイの涙はますます零れ落ちる。
「碇君と一緒にいたいから、死にたくない…!」
「綾波…。」
 シンジは、手を離した。
 レイがそれに驚いていると、シンジは、レイの体を抱きしめた。
「僕だって……、綾波がいなくなったら嫌だよ!」
 シンジも涙を目に溜めた。
「碇君…。」
「ずっと一緒にいたい!」
「…私も。」
 二人は抱きしめ合い、しばらく泣いた。


 実験は、翌日に迫っていた。






***





 翌朝。

「ゴードン大佐…さんですよね。」
「なんだおまえは?」
 カヲルは、ゴードンを訪ねていた。
 ゴードンは、自己鍛錬中だった。
「僕は、渚カヲル。初めまして。」
「…何の用だ?」
「あなたと話がしたくて…。」
「俺は話すことなんざない。さっさと失せろ。」
「あなたは、人類最強と言われていそうですね?」
 ゴードンに冷たくあしらわれてもカヲルは、微笑みを浮かべたまま話を続けた。
「最強と呼ばれるその力…、気になります。」
「ケッ。そんなもんは周りが勝手に誇張してるだけだ。」
「でも気になります。」
「さっさとどっか行け。邪魔だ。」
「……無理やりにでもその力、見せてもらいたいな。」
「!?」
 一瞬にして目の前に現れたカヲルに、ゴードンは、目を見開いた。
「てめぇ…。」
 すぐさま距離を取ったゴードンは、腰の日本刀に手をかけた。
 ゴードンは、カヲルの発する得体のしれない気配を察知した。
 それは、ゴードンが知っている気配によく似ていた。
「そうか……。そういうことかよ。」
 ゴードンは、理解した。カヲルの正体を。そしてカヲルが何をしようとしているのかを。
「さあ、見せてください。最強と謳われるあなたの力を。」
 両腕を広げるカヲル。

 二人の間に、風が吹いた。



 やがて、キインッと、日本刀の半分が折れて、地に落ちて刺さった。 
 

 
後書き
最後に、カヲルが人類最強と言われているゴードンに戦いを挑む。その安否は…。 
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