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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第二十三話  力の使徒

 
前書き
使徒ゼルエル編。

圧倒的です。そしてゴジラが……。 

 

(※ゼルエルは、旧劇と新劇を合わせた感じ)











 その使徒は、ずんぐりした体に、特徴的な顔をしていた。腕らしき物は見当たらず、足も短く、足として機能するのかどうかも怪しい形状をしていた。
 そんな使徒が宙を浮遊し、ゆっくりと第三新東京へ向かっていた。
 地球防衛軍の戦闘機や地上部隊からの砲撃を受けても平然としており、ATフィールドを張ってもいない。
 完全に無視している様子は、奇妙な顔の形も相まって非常に不気味であった。
「完全にこちらを無視していますね…。」
「しかも避けようともしていない。」
「チッ、嘗めた真似を…。」
 地上の前線部隊の指揮官が舌打ちをした。





***





『前線部隊の砲撃には全く興味を示していない。メーサー砲も全く効果なしだ。』
「だろうね~。」
 ツムグは、操縦席で足を組んでくつろぐように座りながら答えた。
『なんだ…、おまえは。知ってたのか!?』
「いや、嫌な予感だけはしてたからさ。」
『予感がしようがしまいが、出撃だ。』
「はいはい。」
 ツムグは、足を正して操縦桿を握った。
 しらさぎから機龍フィアが切り離され、使徒の進路上に着地した。
『ツムグツムグ、あいつの名前、ゼルエル!』
「ぜる、える…?」
 ツムグは、名前を聞いて眉を吊り上げた。
 ゼルエル。(ちから)を意味する。
 ツムグは、その名前と意味を理解した途端、猛烈な不安を感じた。
「嫌な予感的中…?」
『大丈夫だよ、負けないもん!』
 ふぃあは、自信満々に言った。
 まだ生まれたばかりで危機感が薄いらしい。
『椎堂ツムグ! 使徒が行ったぞ!』
「う…。」
 そうこうしているうちに使徒ゼルエルが機龍フィアの前に舞い降りた。
 表情の変わらない顔と何も映さない両目がこちらを見ている。ツムグは、思わずたじろいた。他の使徒だって似たようなものなのに、こいつに限っては妙な圧力を感じたのだ。
『ツムグ?』
 いつもと違う様子のツムグにふぃあが不安げに声をかけた。
 と、その時。ゼルエルの目が光った。
「うわっ!」
 間一髪で操縦が間に合い、機龍フィアを横にずらすと機龍フィアのスレスレでゼルエルが放った光線が機龍フィアの肩にあるキャノンの右側を消滅させ、後方にある山を消滅させた。
「ゲッ…! ヤバイ!」
『ツムグ! 来るよ! 来…。っ!?』
「なっ…。」
 次の瞬間には、機龍フィアの右腕が根元から切り離されて後方に飛ばされた。
 カッター状に伸びたゼルエルの腕が目にも留まらぬ速さで機龍フィアの右腕を切断したのだ。
『う、ウソー、ウソー! 速い! なにアイツなに!?』
「ふぃあ、落ち着け!」
 ツムグは、残った左腕からブレードを展開しゼルエルに突撃した。
 ゼルエルの平たい腕がブレードを払うと、ブレードが真ん中から折れて地に刺さった。
 近接武器を失い、ならばと口を開けて100式メーサー砲を正面から放つ。
 すると数十枚ものATフィールドが発生し、十数枚を破ってそれを防いだ。
「これを防ぎきるか!」
 ゼルエルがずいっと前のめりになった途端、新たに張られたATフィールド飛んできた。
 地を抉りながら飛んできたATフィールドを真正面から食らい、機龍フィアの巨体が吹き飛んだ。
「ATフィールドを飛ばすって、そんな使い方でき…。っ!?」
 素早く立ち上がった途端、ボキリっと大きな音を感知し、そのすぐ後にツムグの体に大きな衝撃が走った。
 恐る恐る下を見たツムグは。
「ぁ…。」
 血を大量に吐いた。
 ツムグの半身を上半身と下半身に分けたのは平らな何か。
 それはゼルエルの腕であった。
 機龍フィアの体を貫き、中にいるツムグの体の胸から下を切断していた。
 ツムグの体を貫いたことで血液などの体液で汚れた端からブクブクと沸騰するように水泡が出来ていった。
 ツムグの体液と細胞で焼け爛れるとゼルエルは腕の根元辺りを切り離し、再び根元から薄っぺらい腕が生えて来た。
 首を折られたあげく、胴体をカッター状のゼルエルの腕に貫かれた機龍フィア。貫かれ切断された背骨から赤黒い液を噴出した。その目から光が消える。
 動かなくなった機龍フィアの横を、ゼルエルは浮遊しながら通り過ぎて行った。
 この一瞬の展開に、地球防衛軍の前衛も後衛も、言葉を失って固まってしまった。
『…お…おい…、おい、おい! 椎堂ツムグ! 返事をしろ! 聞こえてるのか!?』
「………動ける…、…うにな、る…ま、で、待っ…て。」
 口から大量の血を吐いた状態でぐったりと操縦席にもたれかかっているツムグは、切断された部位を撫で再生の具合を確かめながらそう返事をした。内臓が全部出て、操縦室を血の海にしている光景な上に、再生のために切断面と内臓が終始動いているのはとてもじゃないがお見せできない状況である。
『生きてたか! 状況を説明しろ!』
「いや…その…うん……、体、真っ二つに…され、た…。上と下が…離ればなれ。機龍フィアは、素体部分まで切断されて…。今から再生させるから待って…。」
『そんな状態でも生きているのか……。』
「乗ってるのが俺でよかったね。」
『……(ザザ)ッ…、ツム、グ、…ダ、だ、大丈夫?』
「ふぃあちゃんも無事だよ。」
『…意外と元気じゃねぇか……。』
「あはは…、そーでもないよ。まだ内臓全部出てるし。」
『うげっ、早く治せ!』
「ムチャ言わないでよ。」
 いくら再生力が高くても、時間は使う。
 機龍フィアの方も自己再生で素体部分の切断面を塞ぎ、折れた首がギギギッと治ってきていた。だがさすがに消し飛ばされた右肩のキャノンは治らない。右腕も地面に落ちたままだ。
 再起動できるまで機龍フィアは、ゼルエルを追うことはできそうになかった。





***





 地球防衛軍は、騒然となった。
 機龍フィアが使徒ゼルエルの前に呆気なくやられてしまった。
 ゼルエルは、相変わらず前線部隊の攻撃を無視して、第三新東京を目指して飛行していた。
「機龍フィアが…。」
「なんなんだあの使徒は! これまでの使徒とはわけが違うぞ!?」
「前線部隊の攻撃が一切通用していないし、どうすればいいのだ!?」
「機龍フィアの再起動までどれだけかかる!?」
「分かりません!」
「ああああもう使えん!!」
「このままでは使徒が第三新東京に行ってしまう! なんとしてでも止めねば…。」

 しかし司令部の願い空しく、前線部隊の防衛を難なく突破したゼルエルは、ついに第三新東京に辿り着いた。

 ところが……、ここから思わぬことが起こった。

 ゼルエルは、第三新東京に面した海の方へ体を向けると、地面に着地し、ジッと動かなくなったのである。

 そう、まるで何かを待っているかのように。

「? なんだ、どうしたんだ? 動きが止まったぞ。」
「何を企んでいるだ、あの使徒は。」
「まさか…。」
「なんだ?」
「もしかしてあの使徒は…、ゴジラを待っているのでは…?」
「そんな馬鹿な!」
 使徒になってゴジラは、天敵だ。それがわざわざゴジラを待つなどと…。
 だがそれを裏付けるようにゼルエルは、海の方を眺めている。動こうとしない。
 それから数分後。
 海から放射熱線がゼルエルに向かって飛んできた。
 ゼルエルの前に10枚のATフィールドが発生し、全部破られたところで放射熱線が掻き消え命中はしなかった。
 海の方からあの雄叫びが木霊した。
「き、来た!」
 緊張が走る。
 ゴジラがやがて海から姿を現し、ゼルエルの前に立った。
 ゴジラを目の前にしてもゼルエルは、一切慌てる様子もなくその場に佇んでいた。
 両者の睨みあいが一分ほど続いた後、両者がほぼ同時に動いた。


 怪獣王ゴジラと、使徒ゼルエルの戦いが始まった。





***





「最強の拒絶型…。」
 ネルフ本部でリツコが呟いた。
 機龍フィアがゼルエルを前に敗北したのも生中継で見ていた。
 これまでの使徒でも、ゴジラ相手でも耐えることができた機龍フィアの特殊超合金が、いともたやすく切断され、右腕が飛び、首を折られ、体の中心を背中の方まで貫通された。箇所から見て操縦席と思われる。中にいるパイロットは、間違いなく無事ではないだろう。
「だとしたら今までの使徒とはわけが違う…。ゴジラは、果たして勝てるの?」
 リツコですら、この戦いの勝敗に大きな不安を感じていた。
 それほどの力を持つのが使徒ゼルエルなのである。
「きっとあの老人達は、期待しているでしょうね…。この使徒に。」
 ゼーレがゴジラを排除することに期待しているのは目に見えている。倒さずとも致命傷を負わせて人類補完計画実行まで大人しくさせたいはずだ。
 ゼーレにとって、ゴジラは完全なるイレギュラー。
 なんとしてでも排除したかったから地球防衛軍の結成と活動にもほとんど口出ししなかった。それが結果としてこれまでゼーレに従っていた者達の離反を招く結果となってしまったのだが…。
 今やゼーレの目的は、変わりつつある。そのことに彼らは気付いていない。
「人類の進化のための計画が、自分達に逆らう者達への報復になりつつあるのに、気付いているのかしらね…?」
 ゼーレに従わなくなったとはいえ、リツコはMAGIを使ってゼーレの様子を見ていた。ゼーレがMAGIのコピーを使っている以上、MAGI本体を操るリツコに筒抜けなのである。
 ゼーレから漂う不穏な空気にリツコは、多少の不安を覚えていた。
 と、その時。大きな振動が本部を揺らした。
 上ではゴジラとゼルエルの戦いが激しくなっている。
「……ゴジラが勝つことを願っている自分がいるわ。恐ろしい…。…っ?」
 頬杖をついてパソコンのモニターを見つめてため息を吐いていると、なぜかどこかで誰かがニヤリッと笑った気配を感じて、リツコは周りを見回した。



『それ悪いことじゃないよ~。赤木博士。』
『ツムグ…、もうくっついたの?』
『まだ。』
『えー。』





***





 荒地になった第三新東京の地面に赤黒い血が散った。
 ゴジラの顔の左側から血が垂れる。
 ゼルエルは、ペラペラの両腕を宙でヒラヒラと揺らしている。その様はかなりムカつく感じだ。
 腹が立ったのかゴジラが歯を食いしばって唸る。
 ゼルエルの片腕がヒュンッと動いた。あまりの速さで残像すら見えない。
 ゴジラの爪が、ゼルエルのその腕を引き裂いた。
 ゼルエルの引き裂かれた腕はすぐに修復された。
 その直後、ゴジラの右肩辺りから血が噴き出た。先ほど引き裂いたゼルエルの腕が先にゴジラの肩を切り裂いていたのだ。ゴジラの右肩の出血はすぐに止まる。
 さすがのゴジラもこの一撃には驚いたのかゼルエルを見ている目が少し見開かれている。
 だがやられてばかりのゴジラではない。
 続けて振られたゼルエルの腕を掻い潜り、ゼルエルに突撃する。
 分厚いATフィールドが阻み、激突する音が響いた。
 ゴジラは、ATフィールドを掴むようにして破くが、何枚も重ねられたATフィールドはすぐには突破できない。
 ゼルエルの目が光り、爆炎がゴジラを包んだ。
 だがすぐにゴジラが顔を出し、残りのATフィールドに喰らいつき破る。
 ゴジラの顔が接触するかしないかの距離に迫り、ゴジラの口に熱線の光が込められた時だった。
 ゼルエルのずんぐりした体が“ほどけた”。
 そのためゴジラの熱線はその隙間から回避され、ゼルエルは上へ逃れた。
 足が無くなり、腕と同じヒラヒラの体の組織に、白い肋骨のようなものに囲われた赤いコア、そして特徴的な顔だけがあるその姿は不気味と言わずしてなんと呼ぶというような姿であった。
 ゴジラがハッと上を見上げた途端、何十枚ものATフィールドが放たれ、ゴジラを押し潰して土煙が大きく立った。
 土煙が晴れた後には、ゴジラがうつ伏せになって地面にめり込んだ姿があった。
 ゼルエルは宙に浮いた状態で更にATフィールドが発生させ、倒れているゴジラに放った。何度も何度も。
 そのたびにゴジラはますます地面にめり込む。しかしゴジラもやられてばかりではないと言わんばかりにATフィールドを押し戻すように立ち上がろうとする。放たれたATフィールドがゼルエルの方に押し戻されそうになったり、押したりを繰り返す。
 押し戻した一瞬をついて、ゴジラが上を向いて太い熱線を吐いた。
 赤い熱線がATフィールドを貫き、ゼルエルに迫る。
 ゼルエルの姿が熱線に飲まれるが、直後、ゴジラの左太ももが抉れた。
 ゴジラが悲痛な声を上げた時、ゼルエルがずんぐりした体に戻りゴジラの背後に周る。ゼルエルの体は熱線で焼かれたためか湯気が立っているがATフィールドで威力を殺したためほとんどダメージになっていないらしい。
 ペラペラの両腕がゴジラの体に絡みつき、その巨体を持ち上げて後ろへ叩きつけた。
 そしてもう一度持ち上げ、前方へ放り投げられるゴジラ。
 ゴジラがヨロリッと立ち上がろうとすると、ゼルエルの両腕がトイレットペーパーのように巻かれ、二本の棒状の形になりゴジラに向かって伸ばされた。
 真っ直ぐ伸ばされたゼルエルの腕がゴジラの首の横とわき腹を抉った。
 大きく出血したゴジラが後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。
 ゼルエルがふわりと、ゴジラの近くに着地する。
 ゴジラは、かふかふと口を開閉させていた。首を抉られた際の出血で口から吐血していた。
 するとゼルエルの口から何かが出てきた。
 それは先端が四つに開閉し、ゴジラの胸に齧り付いた。
 ゼルエルの口に通じるそれからドクリドクリとゴジラから何かを吸い出している。

「や、ヤツはゴジラを喰っているのか!?」
「お終いだ…ゴジラですら敵わないなんて…。」
「な…波川司令…。このままでは…。」
「……。」

 絶望の空気が司令部を支配しようとした時。
 ゼルエルの背後に、機龍フィアが現れた。
 ゴジラを喰うのに夢中になっていたゼルエルは全然その気配に気づいていなかった。

「ゴジラさんを喰うな。」

 ゼルエルの背中に機龍フィアのドリルが刺さり、左目まで貫いた。
 ゼルエルの口から出ていた物がゴジラから離れ、口の中に引っこんだ。
 ゼルエルが暴れ、ドリルが抜けた。
 後ろにいる機龍フィアの方に振り向いたゼルエルは、両腕を再び棒状に丸めた。

「おまえ、馬鹿だな。」

 ツムグが吐き捨てるように言った。

「ゴジラさんを喰うなんて、身の程知らずが。」

 ツムグは今まで誰も見たことがないほど冷たい目でゼルエルを見つめた。
 その時、ゼルエルの体がドクリッと震えた。
 棒状に丸められた腕がほどける。
 宙に僅かに浮いていたゼルエルの体が、地に落ち、前のめりになる。そしてメキメキベキベキと不快な音を全身から鳴らし始める。背中に背びれのようなものが発生し、ペラペラの腕が太くなり更に長くなって手の先が地につく、爪が伸びる、ゼルエルの特徴的な顔を押しのけるように、全く違う顔が突き出てきて、不揃いの鋭い歯が並んだ口を大きく開けて、…咆哮した。 
 

 
後書き
ゴジラを食ったのは、食うという手段で相手を理解しようとしたからです。
結果、G細胞の副作用が……。
食わなきゃ勝ててましたよ。 
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