| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

料理スキル

俺たちはそれから二層三層四層と着々と攻略は進んで行った。
途中、ダークエルフとフォレストエルフの抗争に協力したり新米鍛冶師のリズベットに出会ったり、キバオウにこき使われたりと色々あった。とりあえず本日も日課のレベリングをするために第四層の迷宮区に向かっていた。
 
「明日はフロアボス挑戦だね。それまでにレベルを頑張って上げなきゃ」
「今日は一段と気合いが入っているな」
「だってやっぱり最前線で戦っている以上、レベルは重要じゃない?それに……アヤトに負けっぱなしは悔しいし」
「ん?なんだって?」
「なんでもない!ほらもうすぐ着くよ!行こう!」
 
迷宮区内で《コボルド・ソルジャー》を狩る。
 
「あ!コハル!」
「アスナ!」
 
振り返るとアスナが迷宮区に入ってきた。
 
「アヤト君もこんにちは」
「ああ、こんにちは」
「二人もレベリング?」
「うん!アスナも?」
「うん!キリト君が武器の新調とメンテナンスしてるから私一人なんだよね」
「あ、じゃあ一緒にやろうよ!アヤトもいいよね?」
「俺は構わない」
「だって。やろうよアスナ!」
「そうだね!じゃあ一緒させてもらおうかしら」
「やった!」
「よろしくなアスナ」
 
俺たち三人で再びレベリングを始める。それから三時間ほど狩り続けると流石に腹が減ってきた。
 
「腹減ってきたな」
「そうだね〜」
「もう12時過ぎてるしお昼にしましょうか」
「さんせーい!」
 
俺たち三人は安全地帯に移動して腰を下ろす。コハルはアイテム欄からパンの袋を選択する
 
「はいアヤトのサンドイッチ」
「おう、サンキュ。これは売店のやつか?」
「ううん。私が作ってみたの……」
「コハル料理スキル取得したんだ!」
「うん。多めに作ってきたからアスナも食べて食べて!」
「ありがとうコハル!」
 
アスナもサンドイッチを手に取り口に運ぶ。コツコツと料理スキルを上げていたのを俺は知っている。
 
「美味いな。コハルの作ってくれるサンドイッチ美味いよ」
「ほんと!?……ふふっ。ありがとう」
「ほんとだ、すごい美味しい……!」
「アスナもありがと!」
 
とはいえまさかここまで美味いとは……。それまではバンを買ったり狩りで取った肉を適当に焼いてみたりして食べていた。そう考えると料理という料理は本当に久しぶりだな。
 
「さて、腹ごしらえもしたし続きといくか」
「そうしましょうか」
「そうだね」
 
俺たちは再び狩りを再開する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夕方
 
「コハル!料理スキルの取り方教えて!」
「え?どうしたのアスナ」
 
帰り道、アスナはコハルに料理スキルの取得方法を教えてもらおうと頭を下げてきた。
 
「今日のお昼のサンドイッチが美味しくて……自分でも作れるようにしたいなーって思って……」
「そっか!ふふっありがとう。いいよ!教えてあげる!」
「ありがとう!コハル!」
 
翌日、二人はリズベットも誘って料理スキルを習得及びレベルを上げるためにクエストに向かうことにした。
 
そして当日
 
「料理スキルはね?ここのレストランのNPCに話しかけて取得できるんだ。それにレストランのアルバイトも一緒にやるからColもゲットできるし一石二鳥だね」
「いいわね!なんだか得した気分になるわ!」
「ふふっじゃあ早速いこ!」
 
コハルとリズベットとアスナはレストランの中に入る。NPCに話しかけると、厨房に連れていかれ今回のクエストの料理を言い渡される。
今回はシチューのようだ。
三人はエプロンを着けてNPCの見本を見て早速やってみることにした。
 
「さすがVRの世界よねー。玉ねぎを切っても涙が出ないのは本当にいいわ」
「ほんとだね。そういえば二人は現実でも料理はしてたの?」
「あたしはたまにかな。親がいない時に作ってたよ」
「私も料理はしたよ。勉強の合間の夜食とかにね」
 
本来は現実での話はタブーなのだが、年の近い三人は特に気にせずによく話す。するとリズベットが、
 
「そういえば、アスナが料理スキルを取ろうって話をだしたんだよね?……もしかして、男でもできた?」
「へ!?そ、そんなことないよ!?」
「そうなの?私てっきりキリトさんの為に料理を作ろうとしているのかと思ってたよ」
「な、なんでここでキリト君の名前が出てくるのよコハル!……それじゃあまるで私がキリト君の事 す、好きみたいじゃない……」
「コハル、キリト君って?」
「第一層からアスナといっしょにパーティ組んでる男の子だよ」
「ほほぅ(ΦωΦ)」
「ちょっ!?コハル!?」
「なるほどなるほどね?アスナはその子を喜ばせたいと思い参加していると。いいな〜そう言った相手がいて。そういえばコハルにもアヤトがいるし、これはあたしだけ置いてけぼりかな〜」
 
リズベットはわざとらしく目を細めて窓の外の空を見る。
 
「リズ!私もべ、別にキリト君にって訳でもないわよ!?」
「え?そうなの?」
「……うん」
「そうなんだ。じゃあ私がそのキリト君貰っちゃおうかな?」
「そ、それはダメ!!」
 
アスナは全力で言う。リズベットはニヤニヤ笑い、コハルは微笑ましそうに笑う。
 
「コハルはどうなの?彼氏とはうまくいってるの?」
「え!?どうって別に何もないよ?それに彼氏じゃないよ!」
「あははは!アンタ達いつも一緒にいるんだし、もう付き合っちゃいなよ?」
「わ、私は別にアヤトのこと……」
「照れない照れない!ほーんと二人は可愛いくてイジりがいがあるわ。あ、玉ねぎ切れたわよ」
「もうリズったら!」
 
リズベットは変わらずニヤニヤと笑い、切った玉ねぎを炒める。三人は黙々と作業進め、どうにかシチューを完成させる。
NPCの料理長らしき人物に料理を食べてもらう。料理長は真剣な表情で三人のシチューを口に運ぶ。
 
「「「……(ゴクリ)」」」
 
三人は固唾を呑んで見守る。
 
「……(グッ!)」
 
料理長はサムズアップをする。三人は喜びの声を上げてハイタッチをし合った。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ただいま!アヤト」
「おう、お帰りコハル。どうしたんだ?なんだか嬉しそうな顔してるけど」
「それは後でのお楽しみ!」
「なんだよそれ……」
 
コハルは風呂に向かった。俺は引き続き武器のチェックとステータスの管理を続ける。
それから時間が二時間程経つ。
 
「そろそろ飯食うか……」
 
俺はコハルの部屋の前に向かう。が、ノックしても返事がない。
 
「あれ?いないのか?」
 
仕方なく戻ろうとすると、
 
「はいはーい!あ、アヤト?ちょうど良かった!ご飯できたよ!さ、入って入って!」
「おう。じゃあ失礼して」
 
俺はコハルの部屋に入ると仄かなシチューの香りがしてくる。
 
「ここにいたのか」
「うん、ごめんね。すぐ出れなくて。もう直ぐ準備できるから座ってちょっと待っててね」
 
数分後、テーブルにシチューとパンが置かれて食事を始める。
 
「いただきます」
「召し上がれ!」
 
パクっ……これは!?
 
「美味い……!これ、メチャクチャ美味いぞ!コハル!」
「ふふっよかった!今日料理スキルをアスナ達と取りに行って作ってみたんだよね〜」
 
本当にメチャクチャ美味い!パンと一緒に食べるとより一層旨味が引き立つというか、ここ本当にバーチャル?と疑いたくなるこのクオリティ。茅場晶彦はやはり腐っても天才なんだと思わざるをえなかった。
 
「元の世界に戻っても、コハルの料理。食べたくなるかもな……」
「え?何か言った?アヤト?」
「……え?俺なんか言ったか?」
「何よそれー。大丈夫?」
「ああ大丈夫だ」
 
なんだ?モノローグが漏れた的な何かか?まぁどちらにせよ、早くこの世界から脱出しないとな。
俺は再び心の中で決意を新たにした。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧