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95部分:第八話 ファーストデートその三


第八話 ファーストデートその三

「短いのばかりだからね」
「ロングスカートもありますけれど」
「あれはいてたら昔のスケ番だしね」
「古いですよね、やっぱり」
「かなりな。まあ俺にしても」
 月美に話しながらだった。陽太郎は自分の学校の制服についても考えた。その青い七つボタンの長ランである。それについて考えたのだ。
「長ランも今時ないけれどさ」
「そうですか?結構着ている人多いですよ」
「応援団は黒だよ」
「はい、それでも長い制服も多いですよ」
「そう言われてみればそうかな。長ランも人気あるかな」
「特に白いのが多いと思います」
 所謂白ランである。八条学園ではそれも制服になっているのである。
「あれが」
「白ランかあ。あれ何で人気があるかわかる?」
「どうしてですか?確かに着ている人多いですけれど」
「海軍だからなんだよ」 
 陽太郎は笑ってその理由を話した。
「海軍の制服がそれだったからなんだよ」
「そうだったんですか」
「ほら、他にも黒い詰襟のボタンのないのとか俺のみたいに七つボタンのとか」
「そういうのもですか」
「全部海軍なんだよ。俺のは予科練のだったんだよ」
 こう話すのだった。
「その軍服だったんだよね」
「歴史があるんですね」
「それで女の子のセーラー服はさ」
 この学園にはセーラー服もある。古典的な制服ではある。
「海軍の水兵さんでさ」
「あっ、そうだったんですか」
「そうなんだよ。セーラー服の娘も多いよね」
「はい、何着持っていてもいいですし」
 制服に関しては相当リベラルな学校なのである。
「ですから」
「そうだよね。デザインもいいしね」
「海軍の服はそうだったんですね」
「うん。けれどやっぱり白い制服っていいよね」
「見栄えしますしね」
 黒と白では目立ち方が違う。そういう意味もあった。
「私も。白いブレザー買おうかしらって思ってます」
「いいんじゃない?俺も白の短いの買おうと思ってるし」
「斉宮君もなんですね」
「そうなんだ。それでさ」
「はい、それで」
「デートだけれど」
「あっ、はい」
 デートの話になるとであった。月美の声が弾んだ。それまでの薀蓄を聞く様なものから様変わりしてだ。弾んだものになったのである。
 それを聞いてだ。また話す陽太郎だった。
「最初に何処に行く?パン屋はもう決まってるけれど」
「そうですね。最初は」
「映画館どうかな」
 陽太郎からの誘いである。
「それでどうかな」
「映画館ですか」
「うん、ここって本屋もあるけれど、いいのがね」
「最初はですね」
 本屋と聞いてであった。月美はすぐに言ってきた。
「本屋にしませんか?」
「本屋?そこにするんだよね」
「はい、そうします」
 こう言ってであった。二人はまずは本屋に向かった。その本屋は三階建てであり立派な店だった。中には本がこれでもかと積まれている。
 そこに入るとだ。月美はすぐにあるコーナーに向かった。そこは。
「ああ、凄い一杯ありますね」
「ええと、海外の翻訳本なんだ」
「推理です」
 やはり声が弾んでいる月美だった。
「推理小説も好きなんです」
「そうだったんだ」
「特に。古典的ですけれど」
 こう前置きしてからの言葉だった。
 
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