空に星が輝く様に
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89部分:第七話 二人の仲その十四
第七話 二人の仲その十四
「あの速さ。本当にね」
「何か随分と忌々しいっていうか」
「本当よね」
「何でもかんでもね」
今度は星華を取り巻いての言葉だった。
「あいつがいなかったら」
「けれど絶対に離れないし」
「どうしたらいいかしら」
「とにかく今は無理ね」
星華の言葉も顔もそのまま忌々しげなものだった。その顔で椎名と、そして月美を見ている。そうしてそのうえでの言葉だった。
「中々離れないから」
「隙を見て、しかないわね」
「その隙も見せないけれど」
「仕掛ける?」
今言ったのは橋口だった。
「何か仕掛けて。離れる?」
「じゃあお互いに悪口吹き込んで仲間割れさせる?」
野上がこんなことを言った。視線を少し上にしてだ。
「西堀一人だったら何とでもなるし」
「それはどうかしらね」
だがそれには星華がいぶかしむ顔で返した。
「効かないと思うわ」
「効果ないのね」
「成功しないっていうの」
「あの二人お互いを信じきってるみたいだし」
星華はそのことを見抜いていた。そのうえでの言葉だった。
「だからね。迂闊な悪口、相当なものでもね」
「駄目なのね」
「それは」
「ええ、無理ね」
また言う星華だった。
「間違いなくね」
「ちぇっ、だったらどうしようかしら」
「このままだと何もできないしねえ」
「鬱陶しいことこのうえないわね」
こう言い合って難しい顔になる四人だった。星華にしても手出しができずどうしようもなかった。それで何もできないまま歳月が過ぎていった。
星華が陽太郎と会える時間はかなり減った。クラスも違うし部活も違う。これでは会う方が無理というものだった。そしてたまに会った時はだ。
「あっ、久し振りね」
「そうだな」
廊下でばったりと会った時等だった。その時に挨拶するのだった。
「何か最近会わないよな」
「そうよね。ちょっと残念」
「残念なのか」
「あっ、ちょっとね」
自分の失言をここでも隠すことになってしまった。
「何ていうかね」
「何ていうか?」
「何でもないから」
無理矢理こういうことにしてしまったのであった。
「それでだけれど」
「それで?」
「今調子どうなの?」
本当はもっとこう深い話がしたかった。だがそれを出すことができずにこうした話を選んだのだった。それでこんなことを言ったのである。
「今は」
「ああ、部活も勉強の方もさ」
「調子がいいのね」
「ああ、いい調子だよ」
微笑んで言った陽太郎だった。二人は廊下で話をしている。
「本当にさ」
「そうなの」
「そっちはどうなんだ?」
今度は陽太郎から言ってきたのだった。
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