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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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白魔導士

 
前書き
ずいぶんお久しぶりになってしまいました。

尻流「そうだそうだ!!」
冷温「俺なんか吸収されて終わってるんだぞ!!」

色々あったんですよ、まぁ、色々と・・・
これからも不定期で連載は続けていきたいと思います。たぶん・・・ 

 
ガアアアアアアアア

大陸を揺るがすほどに響き渡る怒号。その声は深々と地面を削り取り、山を一つ消し去った。

(これがドラゴンの力・・・確かに目を見張るものがある)

アクノロギアのブレスを避けた天海はみるみる削れていく大地を見ながら口を閉じている。そこには戦いを楽しむ男の表情はなく、真剣そのものだった。

(確かにパワーはあるしある程度考えて魔法を放っているのはわかる。だが、この程度で何万ものドラゴンを倒せるのか?)

天海は人間の姿をしていた時のアクノロギアとは力が違うことは十分にわかっていた。しかし、それでもやはり気になるところはある。

(こいつはまだ本気じゃない。つまり、俺には本気を出すまでの必要性がないと思われているということだ)

それは圧倒的な実力を保持し、多くの強者と戦ってきたと言う自負がある天海からすれば失礼以外の何物でもない。大変に不本意なものであるが、それが逆に彼の闘争心を刺激する。

「いいだろ。貴様が本気になれるよう、俺も全力を尽くす」

目付きがこれまでのものとは大きく変わった天海。それを見たアクノロギアも、雰囲気が大きく変わっていった。
















「あとはお前を吸収すれば、俺は完璧になれる」

これまでの戦いでできた傷が全て修復されたティオス。彼が見据えるはもう一人の自分とも言える存在。

「レオン・・・お前は・・・」

過去との思い出とも完全に決別しようとしている旧友を見て、水の竜は体を震わせた。

「一体どこまで堕ちれば気が済むんだ?」

怒りなのか悲しみなのか、もう少年にもわからない。ただ一つ言えることは・・・

「ウェンディ、エルザさん。シェリアを連れてここから離れてくれ」
「え?」
「何言ってるんだ?シリル」

束になっても敵わないのに、一人になってしまっては相手になるはずがない。ましてやティオスはこれまで以上の力を手に入れた。もう彼を止めれるものはいない。

「確かに一人じゃ相手にならないだろう。きっとものの数分で倒されておしまいだ」
「なら・・・」

そこまでわかっているのに、なぜシリルは戦いを挑もうとするのか、止めようとした二人だったが、彼の魔力の質が大きく変わったことに気が付いた。

「へぇ、それを使う覚悟ができたのか」
「あぁ」

シリルを包んでいく水色の魔力。それに、合わさるように、周囲に風が舞い起こっていく。

「俺の命を賭けて、お前を止めてやる」

かつて封印を決意した天空の滅悪魔法。再びそれを解放した彼が向かう先は、勝利か、破滅か・・・















その頃妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドでは、ゼレフの猛攻にナツ飲み込まれそうになっていた。

「うぐ・・・あが・・・」
「君では僕は止められない」

自らの計画のためにひた走るゼレフ。ナツは始めこそ互角に渡り合っていたが、今は彼に押されるがままになっている。
そんなところに、一人の少女が現れた。

「私が止めます、ゼレフ」
「メイビス」

オーガストの決意を受けてゼレフの元へとやって来たメイビス。彼女を見たゼレフの頬は思わず緩んだ。

「これでネオ・エクリプスの準備はそろった」

自らの計画のための条件が揃ったことでゼレフは勝利を確信した。しかし、その時ナツの体にも変化が起こっていた。

「んあああああ・・・」
「!!」
「ナツ・・・」

突如高まったナツの魔力。その炎はゼレフの魔法を焼き尽くした。

「下がってろよ、初代」

体からあふれでる炎。炎の申し子である彼の顔には、ドラゴンの鱗が浮かび上がっている。

「ちょうど燃えてきたところだ」
(ドラゴン)の力」

追い込まれたことと勝たなければならないという意識。それが彼をまたしてもこの領域まで引き上げた。

「ドラゴンフォース」

ドラゴンを倒すために生まれた滅竜魔法。それの最終形態ともいえる姿となったナツだったが、それをゼレフは残念そうに見つめている。

「それではダメだよ、ナツ。君にもアクノロギアのように竜化する力でもあればよかったのに」
「俺は人間だ。アクノロギアのようにはならねぇ。それが父ちゃん(イグニール)の意志だからな!!」

炎を右手に纏わせるナツ。それにゼレフも対抗するように魔力を溜める。

「たとえドラゴンではなくとも人間でもないだろう?END!!」
「この炎でお前を倒す」

両者の距離が一瞬で詰まりぶつかり合おうとした。だが・・・

「待ってください!!」

その間に割って入ったのはメイビスだった。

「何のマネだよ、初代!!」

水を刺されてしまい思わず怒声を上げるナツ。そんな彼を宥めるようにメイビスは冷静に話しかける。

「私にチャンスをください!ゼレフと話す機会を!!」
「・・・」

初代マスターであるメイビスの頼みとなっては、ナツは口答えすることはできずに言葉を失ってしまった。だが、この判断が大きな間違いであったことをすぐに思い知らされることになる。













「背に腹はかえられぬ・・・東洋にある言葉だそうだ」
「へぇ・・・で?意味は?」

天空の滅悪魔法を解放したシリル。そんな彼に対しティオスはそんな話をし始めた。

「大切なことのためには多少の損害はやむを得ない・・・という意味らしい。本来は自分を守るためには他人の犠牲はしょうがないとして使用されるが、お前の場合はその逆だな」

シェリアを抱えてこの場を離れていくエルザとウェンディ。藍色の少女は不安そうに振り返ったが、唇を噛みながらその場を後にする。

「仲間のためなら自らの犠牲を厭わない。まるでどこかのヒーローのようだ。きっとお前は永遠に英雄として持て囃されるのであろう」

好機な目で自らに立ち向かってこようとする少年に笑いかけるティオス。それに対して少年は、無表情を貫いていた。

「レオン・・・俺も楽しかったんだ」
「はぁ?」

突然の言葉に眉間にシワを寄せるレオン。そんな彼をヨソにシリルは言葉を紡ぐ。

「この一年間・・・お前やシェリアと一緒にいられたことは、間違いなく俺の財産だった・・・同じギルドにこんなに気の置けない仲間がいることが嬉しくてしょうがなかった」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間たちとはもちろん仲がいい。しかし、彼らは年上である彼らにどこか遠慮しているところがあるのも事実。そんな彼らにとって短い期間だったとはいえ、同世代の・・・心を許し合える友がいたことは今までにない感覚だった。

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)最後の日に、お前からも楽しかったって言ってもらってすごく嬉しかったんだ」
「あぁ・・・そんなことがあったな」

かつての楽しかった日々を思い出しているシリル。それに対しティオスはうんざりした様でため息をついていた。

「俺は悲しいよ、レオン。こんな形であの約束を果たさなければならないなんて」
「??約束?」

彼が何のことを言っているのかわからず目を細めるティオス。その姿を見たシリルはフッと息を吐いた。

「俺はお前より強くなる。その時は俺と全力で戦ってくれ」

それを聞いた途端、ティオスは鼻で笑ってしまった。真剣な彼の表情が、ますますそれを増幅させる。

「確かにそんな約束はしたな。だが、それが果たされることはない。
なぜならお前は俺を越えることができないからだ」

冷徹な目でかつての友を見据えるティオス。その目に対してシリルも睨み付ける。

「俺は越えるよ。今ここで!!お前を!!」
「それは無理だ。お前では俺を倒すことなどできるはずがない」

最大限まで魔力を高めるシリル。それに対してティオスはあくまで冷静な佇まいで、余裕を覗かせていた。


















ぐい

メイビスの頭を掴むゼレフ。彼は苛立ちに満ち溢れている目を彼女に向けた。

「君というやつは・・・」
「お願い・・・話を聞いて、ゼレフ」

ナツとの真剣勝負に水を差された上になおも見せるこの甘さ。彼は心底彼女の優しさにうんざりしていた。

「私はあなたを救える・・・あなたを不老不死から解放できる」

メイビスのその言葉を聞いたゼレフは目を見開いた。

「思い付いたの、あなたを"倒せる"方法を」

彼女のその提案は彼にとって喜ばしいものではあった。だが、もうそこに戻ることはできない。

「無駄だよ。死ぬためのありとあらゆる方法は試した。ENDでさえ、僕は倒せない」
「ならばなぜアクノロギアに怯えるのです」

不老不死である彼が人類最大の敵であるアクノロギアをなぜ恐れなければならないのか。それが解せなかったメイビスは問いかけてみることにした。
その彼女の問いに、ゼレフは深刻な目で答えた。

「死ねないから恐ろしいんじゃないか。たとえ不死者であっても、アクノロギアには勝てない。
あれは人類の歴史を終わらせる者。つまりはこの先・・・すべての人類は滅びるんだ。
そして僕と君だけが残される・・・奴は毎日僕たちを使って遊ぶだろう。
何をされるんだろうね・・・でも僕たちは死ねない・・・永遠に奴のオモチャだ」
「その永遠を終わらせる方法があるんです!!」

恐怖に怯える青年の心。メイビスはそれをわかっていた。だからこそ、この提案を受け入れてほしかった。

「僕にもあるんだよ」

だが、ゼレフの決意した心が揺らぐことは決してなかった。

「ネオ・エクリプスという最善手が!!」

その直後、二人の体から強烈な光が放たれる。それと共に響き渡るメイビスの悲鳴。

「初代!!」
妖精の心臓(君の魔力)は僕がもらう!!」

メイビスの体に秘められた強大な魔力をゼレフが吸収しているのだ。それを見たナツは我慢できずに突進する。

「やめろぉ!!」

迫ってくる弟。ゼレフは彼を睨み付けると、魔力の圧力で押し返してしまう。

「ゼレ・・・フ」
「メイビス・・・」

魔力を吸い続けられているメイビス。彼女はかつて愛した青年を見上げ、青年もまた、彼女を見つめた。

「ネオ・エクリプスは人生をもう一度やり直せる魔法。僕は400年前の自分に戻る。
家族がいて、かわいい弟がいて・・・僕は不老不死になることもなく死を迎える。
もう一度君に出会うことができないのは残念だけど」

ネオ・エクリプスは時を巻き戻す魔法・・・いや、それに近い魔法とでもいうべきだろうか。全ての時をリセットし、術者だけがかつての記憶を引き継ぐ。もう二度と同じ世界が繰り返されることはない魔法。

「僕に会わなければ君はもっと幸せになれたはずだ。ごめんね、メイビス」

彼は心のどこかで彼女のことを気にかけていた。不老不死となり、少女の姿から成長できなくなってしまった彼女のことを。

「ゼ・・・レ・・・」
「でも約束するよ。今ほど力をつける前に・・・必ずアクノロギアを倒してみせる。そうだ!!ナツも一緒に戦ってくれる。人類の未来は僕が守ってみせる。
だからこの世界とはさようならだ」

この時、ゼレフの目からは涙がこぼれ落ちていた。無理もない。愛したものとの永遠の別れ・・・それも次の世界では、彼女は自分のことを知ることもないのだから。

「この世界を・・・消しては・・・ダメ・・・だってこの世界は・・・私たちの出会った世界」
「僕たちの出会った世界」

二人の声は見事に重なった。彼らはそれだけ互いのことを思い合っていた。そしてその言葉を最後に、メイビスは地面へと崩れ落ちる。

「初代!!」

ようやく魔力の圧力から解放されたナツが真っ先にメイビスへと駆け寄る。

「もう・・・これで未練は全て断ち切った」

メイビスを必死に揺するナツ。ゼレフの顔に、もう笑顔はない。

「死んではいないよ。だけど全ての魔力を吸い取った。もう立ち上がることすらできない」
「てめぇ」

怒りの視線を向けるナツ。ゼレフはそれに気付かないのか、ゆっくりと手を広げ上げる。

「時は来た。これが・・・フェアリーハートだ!!」

ゼレフから解き放たれた魔力の波動。それが終わると、その中央にいる青年の体は白く輝いていた。

「無限の魔力。時をも超える神の力」

永遠の魔力を奪い去ったゼレフ。黒魔導士から白魔導士へと変化を遂げた彼は、この世界を終わらせるためにひた走るのであった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ナツvsゼレフはほとんど描写もないまま佳境になってしまいましたね、ごめんなさい。
次もシリルvsティオス、ナツvsゼレフでお送りいたします。 
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