空に星が輝く様に
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64部分:第六話 次第にその二
第六話 次第にその二
「これで頭を叩けばぐっすり寝られる」
「何でそんなの持ってるんだ?」
「護身用」
それだというのだ。
「悪い奴が来たら蹴りとこれで撃退する。他には三段式の特殊警棒も持ってる」
「物騒だな、おい」
「世の中何があるかわからない」
それを理由とする。しかし理由を超えたものがあることは陽太郎にはすぐにわかった。持っている椎名の目もかなり剣呑な感じに見えた。
「だから」
「そんなので殴られたら死ぬだろうが」
「大丈夫、手加減する」
しかし目は本気だ。
「心配しなくていい」
「つまり起きろってことか」
「どうするの?それで」
「ああ、わかったよ」
流石にそんなものを見ては起きるしかなかった。彼も我が身は大事にする。
それで起きるとだ。今度は狭山と津島が来たのだった。
「よお、陽太郎」
「何よ。へばって」
「御前等滅茶苦茶元気だな」
「おうよ、ゴールデンウィークの映研は撮影が順調でな」
「こっちはお店が大繁盛だったのよ」
二人は学校の中と外の学園生活をそれぞれ満喫していたのである。そのせいかその表情はそれぞれかなり晴れやかなものであった。
「おかげでもうな」
「最高のゴールデンウィークだったから」
「俺もゴールデンウィークはよかったさ」
それは陽太郎もだと答えはする。
「けれど終わったからな」
「はじまりあるもの絶対に終わる」
「そうじゃないの?」
二人の反論は正論である。しかしそれが陽太郎に受けられるかどうかというとまた別問題だった。少なくとも今の彼にその気力はない。
「それでもだよ」
「だから気を取りなおしてだな」
「また頑張ればいいじゃない」
「そうするのが一番か」
二人の話を聞いてはいる。しかしまだ起き上がってはいない。
「じゃあ」
「よし、起きろ」
「クッキーあるから」
「クッキー?」
「そうよ、クッキーよ」
津島の言葉だった。
「私のバイト先のお店のね」
「そういえばバイトしてたんだな」
「そう、実家でもあるし」
「そうか。お菓子の家か」
「それじゃあ童話じゃない」
間髪入れず津島の突込みが来た。
「お菓子の家って。ただのスイーツ店だけれど」
「けれどお菓子だよな」
「まあね。それはね」
「じゃあお菓子の家じゃないか」
「ちょっと違うから。まあとにかくね」
「クッキーかよ」
「好き?」
そのクッキーを見ながらの話だった。
「それでクッキー。好きなの?」
「好きだけれどな。それもかなり」
「じゃあ起き上がったら?」
「起きないと俺が食っちまうぞ」
絶妙のコンビネーションで狭山が入って来た。
「それでもいいのか?」
「いや、それは駄目だ」
言いながら起き上がった。それも瞬時にだ。
「俺が食う」
「おい、それで起きるかよ」
言った狭山もここで呆れた。
「ったくよ。食い物のことになるとそれかよ」
「いいじゃないかよ。とにかくクッキーだよな」
「赤瀬も大好物」
椎名がここでまた言う。
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