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戦国異伝供書

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第八話 浅井家の内その十

「立花殿、高橋殿がおられます」
「大友家の武の柱じゃな」
「お二人の強さは鬼の如きですので」
「そうは敗れるか」
「はい、お二人がおられる限りそうおいそれとは」
「わしもそう思う、しかしな」
「島津四兄弟の強さを考えると」
「その立花殿、高橋殿でもな」
「後れを取ることもですか」
「考えられる」
 どうにもというのだった。
「だから九州のこともな」
「天下統一の時にどうするか」
「考えていこう、しかしな」
「今はですな」
「うむ、今の領国を治めてな」
 それを整えてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「朝倉家ですな、やはり」
「大名はあそこじゃ、しかしな」
 それでもと言うのだった。
「近頃公方様があの家にじゃ」
「はい、どうもです」
 小西が言ってきた。
「しきりに文を送っておられますな」
「うむ、わしに不満があるのか」
「どうも天下をご自身で治めたく」
「それはどうか」
「もう幕府はです」
 小西は信長の今の言葉にあらたまって述べた。
「六代様のことがあり」
「あれからな」
「権勢が落ちて応仁の大戦で」
「より衰えてな」
「はい、山城一国を治めるのがやっとになり」
「そうしてであったな」
「そうです」
 ここで小西は松永を横目で睨みそこにいる殆どの者が続いた、だが塔の松永は平然としたものであった。
「先の公方様も弑逆され」
「今ではな」
「都を治める力もです」 
 山城一国どころかというのだ。
「ありませぬ」
「かとうじて二条の城におられる位じゃ」
「もう何もお力もありませぬ」
「ではな」
「天下を治めるなぞ」
「出来る筈がない」
 これが誰が見ても明らかだった。
「だからな」
「それで、ですな」
「はい、もうそれはです」
「我儘じゃな」
「幕府は今はです」
「当家が支えてな」
 織田家である、言うまでもなく。
「そのうえで」
「はい、そうしてです」
「生きていくしかない」
「左様ですな」
「朝倉家に文を送られるのも」
「お止めしますか」
「それはわしに話してな」
 そうしてというのだ。
「して頂く」
「これからは」
「うむ、勝手をされては困る」
「幾ら公方様といえど」
「そうじゃ、確かに公方様であられるが」
 武家の棟梁、それになるがというのだ。
「しかしな」
「もう幕府はあの通りの状況」
「幕臣も碌におらぬ」
 そこまでの存在になっているからだというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「自重して頂こう」
「公方様には」
「こちらもお支えしているのじゃ」
 幕府をというのだ。 
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