死んでいない
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第三章
遂に槍が刺された、だがその槍がだ。
イーサーの身体に刺さらない、かえって刃が砕けてしまった。それを見て処刑を行う兵士達も仰天した。
「槍が砕けただと!?」
「身体を貫かないぞ」
「何だこれは」
「鉄よりも硬いぞ」
イーサーの身体がそうなっているというのだ。
「まさか」
「これこそがか」
「アッラーの奇跡なのか」
兵士達もそう思いはじめた、だが信じない者達は頑迷で。
槍が通じないならと今度は矢を放たたせた、石もこぞって投げそうしてイーサーを殺そうとしたのだが。
矢も石もだ、全てだった。
イーサーの身体に弾き返され一切効かない、そして十字架のイーサーは全く平気な顔をしていた。それは幾らそうしても同じで。
矢も石も尽きたところでだ、イーサーは十字架から言った。
「これでわかったな、ではだ」
「まだ何かあるのか」
「何かするのか」
「ここから降りさせてもらおう」
こう言ってだ、そしてだった。
イーサーは十字架にかけられている手足に力を入れて釘を引き抜いた、釘を打ち込まれていた傷は見る見るうちに治り。
彼は十字架から飛び降りた、そのうえでそこにいる全ての者に言った。
「私は死ななかったな」
「嘘だ」
「この様なことが起こるとは」
「何故何も通じない」
「しかも十字架から自ら出られたのだ」
「これこそがアッラーのお力なのだ」
イーサーは自分を攻撃していた者達に笑って話した。
「私は最後の預言者の前に預言を残す役目を与えられた」
「その役目を果たす為にか」
「アッラーが力を授けて下さり」
「そのお力でか」
「死ななかったのか」
「そうだ、私はあらゆるジンをこれ以上はないまでに封じるまじないを全てかけられていた」
このことにも言及したのだった。
「若しそれで私が本当にジンの妖術を使っていたならどうか」
「助かっていなかった」
「間違いなく」
「そうなっていた」
「そうだ、だが私は生きている」
今皆が見ている通りにというのだ。
「それは何故か」
「アッラーに力を授けられているからか」
「ジンの力ではなく」
「だからなのか」
「それが今証明されたのだ」
まさにというのだ。
「私が生きていることによってな」
「これこそアッラーのお力だ」
「お師匠様が生きておられることこそが」
ここで弟子達が口々に言った。
「何よりの証ではないか」
「そうだ、お言葉通り生きておられる」
「預言通りにな」
信じている者達も同じであった、彼等は奇跡に感激していた。
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