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レーヴァティン

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第六十八話 女枢機卿その二

「残念ながらな」
「いや、それでいいだろ」
「いいか」
「出入りする人のチェック位しないとな」
 それこそとだ、久志は兵達に明るく話した。
「門番の意味がないぜ」
「それでそう言うのか」
「ああ、それで俺達が何者なのか」
「その証拠はあるか」
「身分証明書なり何なりだな」
「そうしたものはあるか」
「証明書はないぜ」
 久志はまずはこちらのことを話した。
「これはな」
「それでは何を持っている」
「これだよ」
 こう言ってだ、久志は腰にある剣を抜いた。
 そしてその紅く燃え盛る刀身を見せてだ、門番達に言った。
「これでわかるよな」
「燃え盛る剣、レーヴァティンか」
「この島ひいては世界を救うという」
「それを持つということは」
「若しや」
「そのまさかだよ、俺とこの連中がな」
 まさにとだ、久志は門番達に見せたその剣を鞘に戻してからまた答えた。
「世界を救う他の世界から来た奴等なんだよ」
「では枢機卿様と同じだな」
「うむ、あの枢機卿様とな」
「ではだ」
「あの方に会いに来たのか」
「そうさ、それじゃあ中に入っていいか?」
 久志は笑って兵達に尋ねた。
「今から」
「うむ、わかった」
 右にいる兵が応えた。
「ではな」
「これからな」
「中に入ってくれ」
「そうさせてもらうな」
 久志が応え他の面々が続いてだった、そのうえで。
 一行は寺院の中に入った、そうしてだった。
 寺院の中に入るとそこはステンドガラスとフレスコの宗教画に飾られていた白亜の世界だった。主がいれば天使も聖人達もいる。
 その中を見回してだ、久志は思わずこう言った。
「本当に神聖な場所だな」
「はい、神を感じますね」
 順一が久志のその言葉に頷いた。
「私もこの世界では最初はです」
「ああ、司祭だからな」
「こうした中にいました」
 こう久志に話した、彼と共にその聖なる場所の中を歩きつつ。
「そうでした」
「そうだったよな」
「今では懐かしい思い出です」
「ここには来てなかったな」
「はじめてです」
「ローマ自体に来てなかったか」
「そうでした」
 そもそもとだ、順一は久志に話した。
「今がはじめてです」
「成程な」
「だから余計に嬉しいです」
 今こうしてここにいることがとだ、順一は久志にこうも話した。
「素晴らしい場所ですね」
「そうだよな、本当に神様がいる場所だな」
「はい、ですが淳二君の言う通りにです」
「ここはか」
「そうです、悪魔もいます」
 神だけでなくというのだ。
「陰謀も渦巻いています」
「何ていうか人間ってのはな」
 順一にも言われてだ、久志はキリスト教の宗教画フレスコのものだけでなくルネサンス期のものを思わせる聖母受胎のものも見つつ言った。
「善と悪が一緒にあるんだな」
「はい、どうしても」
「だからこんな場所でもか」
「悪魔もいます」 
 つまり人間の負の面があるというのだ。 
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