真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚
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インテグラル・ファクター編
掛け勝負
2層のある時、
「へー。もうプレイヤーの鍛冶屋が現れたのか」
「鍛冶屋って?」
「武器のメンテナンスとか武器を作って売ったりする生産系の職だな。βの時はこんなに早く現れなかったけどな」
一層攻略を達成した俺たちは、第二層の街《タラン》に拠点を移した。
「よ!アー坊とハーちゃん久しぶりだナ」
「アルゴさん!お久しぶりです!」
「二人も見たみたいだナ。まさかこんなに早くにプレイヤーの鍛冶屋が現れるなんてナ」
そうβでのプレイヤーの鍛冶屋は四層辺りから現れた。NPCの鍛冶屋と違いプレイヤーの鍛冶屋は強化の成功率が高いのがウリだ。それが腕のいい鍛冶屋であればあるほどその確率は高くなる。
「とりあえず今は鍛冶屋は後だ。まずはフィールドボスの《ブルバス・バウ》の討伐に行こう」
「うん!」
俺とコハルは圏外に向かった。
「ホント、仲がいいねェ……」
アルゴはそんな二人を見て呟いた。
「あれがボスか……ステーキ何枚だよ……」
「大きいねー」
ん?あそこにちょこんと座ってるのはアスナか?またフード被ってるし多分そうだな。
俺はアスナの座ってるところに向かい声をかける。
「おっすアスナ。今日はキリトはどうしたんだ?」
「ああ、こんにちはアヤト君。……知らない。そもそもお互い基本的にソロなの。誤解しないで」
「そっか。じゃあ俺たちとパーティ組まないか?三人じゃあ雑魚敵担当は変わらないけど効率はよくなるし」
「そうね……その前に……」
アスナは立ち上がると近くの草むらに歩いていくと、草の中に手を突っ込んだ。
「このコソコソ活動してる黒い人も一緒にね?」
「ちょっ!?《隠蔽》スキル使ってたのに!?なんで!?」
首根っこ掴まれて現れたのはキリトだった。何やってんだよ……。
「「ビーター……!」」
ざわざわと周りが騒がしくなる。
やはり、前回のフロアボス戦の出来事は攻略組の中で深く根付いているようだ。
「今回の作戦のリーダーさん。この人も参加するわ。でも安心して?この人も雑魚敵の蜂担当。ボスとは本隊がピンチになるまで戦わせないから」
「チッ……余計なことはすんなよ?」
リーダーはそう言ってパーティメンバーの中に戻っていった。そのままアスナはキリトを引きずってこっちに来た。
「あー……やっぱゴメン。小心者の俺としてはこの針の筵はちと厳しいかなーと……」
「見くびらないで」
アスナがピシャリと言う。その一言に周りは一瞬固まる。
「仲間と思われるのが嫌なら最初から引きずり出してきたりしないわ」
「……お見通しか」
「あなたがSAOのプロなら、女子校育ちの私は心理戦のプロよ?顔色を読むぐらい朝飯前だわ」
「その通りだ。俺たちはお前を見捨てないし、何より負けたくないからな」
「アスナ……アヤト……」
「そうそう水臭いですよ!キリトさん!」
「コハルも……みんなありがとう」
キリトは頭をかく。
「じゃあ早速始m『平均レベルはこっちが上なんや!四の五の言わんとアタックはワイらに任せい!!』
突然後ろから怒声が響いてきた。この訛りはキバオウか?
「いいや!ディアベルさんがいなくても、俺たち《ドラゴンナイツ》が最前線に立つ!!」
「なぁにがドラゴンじゃ!さぶイボ立つわ!男やったら虎やろ虎!!」
そういう問題!?あ、キバオウのパーティの人が俺と同じツッコミ入れてる……。
「ゴホン!とにかくや!格好だけディアベルはんと同じにしたからゆうて後継者気取りはやめてもらおか!ディアベルはんの正しい後継者はワイら《アインクラッド解放隊》や!」
「ふん、大層な名前に見合った実力があるとは思えないがな……!」
「なんやとぉ!」
いやーなんていうか、大丈夫なのか?最前線……。ぶっちゃけソロまたはコハルとやってる俺は関係ないが、このままでは力が分散して大変な事になる。
「ん?見ない顔だな?それになんだか装備もいいやつ持ってるし、今までどこで燻ってたんだ?」
「最近前線に来たみたい。レベルはあまり高くないようだけどね」
「ほーんちなみに彼らにも名前があったりするのか?」
するとコハルとアスナは微妙な顔になる。
「レ……」
「レ?」
「レジェンド・ブレイブス」
「伝説の勇者たちね」
ブフッ
俺とキリトほ手で口を抑える。
「メンバーは……ベオウルフさんに」
「あの人がクフーリンさん」
もうやめてあげて!俺たちの腹筋のライフはもうゼロよ!
「で、リーダーの……」
「わかった!よくわかったからちょっと待って!」
「レベルにそぐわない装備の豪華さにも得心がいった!要は形から入るタイプなわけだ」
コハルとアスナは?を浮かべていると
「あ、あの人がリーダーのオルランドさん」
オルランドは例のプレイヤーの鍛冶屋のところで武器強化を行なっていた。やけに「である」だの「なのだよ」とか使っているし、どこの緑の人だよ。
「さ、流石はリーダー」
「キャラ出来上がってるのな……」
そんな俺たちに気づかずに説明するコハルとアスナ。
そんなこんなしているとオルランドは鍛冶屋と握手していた。鍛冶屋はネズハというようだ。
「5回連続で成功ってやっぱりプレイヤーの鍛冶屋は違うな」
「ああ、それにしてもこんな前線に鍛冶屋がねぇ。ま、よく考えてみれば上客捕まえるチャンスだもんな」
「危険を承知で出張りもしますよね」
納得してると、一悶着ついたのかキバオウとリンドが呼びかけをしていた。
「じゃあ始めるとしますかね」
「うん!頑張ろう」
俺はふとネズハの方を見る。
「鍛冶屋のお兄さんは参加しねーのかい?」
「僕は戦闘は苦手で……皆さん命懸けで戦ってるのに役立たずで……」
「何言ってんだ。生産職だって立派な戦力だ。俺たちが戦えるのだってあんたら鍛冶屋がいないとやっていけないんだ」
「アヤトの言う通りだ。今度俺の剣も頼むよ。じゃ!」
「これで25!」
「甘いぜキリト!これで26だ!」
「なに!?」
「一歩リードってこったな!」
「27っと」
「「ふぁ!?」」
「悪いわね〜二人とも!」
「「ぐぬぬ!」」
「ふっふっふっ、私も27だよ!」
「「なぬっ!?」」
俺たち四人で蜂の討伐合戦をやっているわけだけど、くっそーアスナはともかく最近コハルも剣の速度がめちゃくちゃ早くなってきてる。ついこの間、数日顔を合わせなかった間にレベルもどんどん差が縮まってきてるし、こりゃあ本気でやんないと負けそうだな!
「じゃあ早速俺たちの奥の手を使うとしようぜキリト!」
「おう!そっちがスピードならこっちは手数だ!」
蜂の毒針攻撃をしゃがんで交わし、俺たちは拳を握ってキリトは蜂の腹と胸の間を俺はもう一匹の蜂の頭に拳を叩き込み、その勢いで首が千切れて蜂はポリゴンとなって砕けた。
「全く二人して隠れてなんのスキル習得してるんだか……いやらしいわね」
俺とキリトが拳をコツンとぶつけ合うと
「三人とも、《トレンブル・ショートケーキ》って知ってる?」
「知ってる!食べたことないけど凄い美味しそうなやつだよね?」
「そ、せっかくだし男女で別れて勝負しない?負けた方が奢りってことで!行くよコハル!」
「うん!絶対勝とうねアスナ!」
散ッ!っと二人は凄まじい勢いで蜂を捌いていく。
つーか
「息ぴったしってどういうことよ……ん?なんだ?あのMob、プレイヤーに見向きもしないとか」
蜂はフィールドボスの牛に向かって飛んでいくと、牛のお尻に針をぶっ刺した。
「ぐぇええええ!!!」
牛は突然の蜂の攻撃に暴れ出す。
「二人とも!勝負は一旦お預けだっ!牛行くぞ!」
「えー?……んもぅ!」
「仕方ないよ。勝負はまた後でにしよ!」
「はぁ……しょうがないか」
四人は牛のところまで走り込む。
牛の猛攻に陣形がまた崩れ始める。
「行くぜキリト!」
「おう!」
「行くよコハル!」
「うん!アスナ!」
二手に別れて牛の足に剣戟を浴びせる。
「アイツら嘘だろ!?四人でやるつもりか!?」
「無理無理!流石に無理があるって!」
そんな声をBGMに俺たちは剣で切りつけ続ける。
たしかこいつの弱点は……
「額の上のコブって書いてあったよ、でも……あんなの届かないじゃない!!」
そう、この牛の高さは4メートル近くあり俺たち四人とも軽装のため突進を受けることも出来ない。
「ま、本来は《投剣》スキルで狙うんだろうけど、そんな趣味スキル鍛えてないしなぁ……仕方ない、アレ試してみるか」
「アレ?」
「アスナとコハルは前足を狙ってダウンを誘ってくれ!チャンスは通り過ぎる一瞬だ!細剣ならクリティカル必須!膝関節だ!」
「「了解!」」
「アヤトは俺と来てくれ!」
「おう!」
俺とキリトはタイミングを計る。アスナとコハルは関節を狙って攻撃する。お!膝が曲がった!
「行くぞ!」
「おう!」
俺とキリトは飛び上がる。
「ダメだ届かない!」
一人のプレイヤーが声をあげる。
そう諦めるのは早いと思うけどな。
ギュン!!
俺とキリトのソードスキルが発動する。発動したソードスキルはそのまま剣先を向けた牛のコブに飛んで行く。
ドシュッ!!パァーッン!!
牛はポリゴンとなって砕け散った。
「流石アヤトだな。説明しなくても意図を理解してくれるなんてな!」
「まぁな。キリトならこれぐらいするだろうと思ったんだよ」
俺たちは拳をコツンとぶつけ合う。
「ちょっと!なにそれっ!」
「ふふん、どうだ?こいつは《空中ソードスキル》。簡単そうに見えて結構タイミングがシビアなんだぜ」
後ろでキリトとアスナが騒がしいな。何ごと?
「ジブンらがローテのルール守らんと居座ったせいでまたアイツらにやられたやないか!どないしてくれるんや?」
「なんだと?君らの回復が間に合わないから俺たちが前線を支えていたんだぞ?」
うわぁ、前も喧しいし
「帰るか……」
「アヤト君どこに行こうとしているのかな?」
アスナの手が俺の肩を掴む。離れる感じしないしどんな力で足止めしてるんだよ……。
「そうだよアヤト!さっきの空中ソードスキルもそうだし、ケーキの約束がまだだよ!」
あらーバレてしまわれたか。流石にどこぞのラノベの主人公みたいにステルス能力は使えなかったか。
「おまたせしました。こちら《トレンブル・ショートケーキ》でございます」
「結構デカイな」
アスナがケーキナイフを持つと四当分に切り分け……てないじゃん!?つーか俺たちの薄っす!?10分の1を二人で分けろってか!?
キリトと二人で抗議しようとしたら踵で踏まれた、解せぬ。
でもコハルが言ってくれて10分の1から4分の1貰えた。(二人で4分の1←ここ重要な)
「「美味しかったぁ……」」
アスナとコハルは今にも昇天しそうな顔をしていた。
「βの時より美味かったかも……」
「マジか!?」
「アヤトは甘いもの好きなんだね。すっごく美味しそうに食べてたし」
「まぁな。甘いものっていうかケーキが好きだな」
「そ、そうなんだ……今度作ってみようかな」
「ん?どうした?」
「な、なんでもないよ!」
コハルの呟きがイマイチ聞こえなかったけど、まあいいや。
「なあキリト。このHPバーの隣にある《幸運値上昇》ってβの時あったっけ?」
「いや、たしか無かった筈だ。でも15分限定って……今からじゃあエリア移動で終わるぞ?」
四人で考えていると、アスナが口を開いた。
「じゃあ武器強化したいから付き合ってよ!」
例の鍛冶屋のところに行き、アスナは自分の愛剣《ウィンドフルーレ》を渡した。
「では始めますね」
鍛冶屋は一瞬悲しそうな顔をした後、作業を始めた。
「心配しなくても添加材は上限まであるし95%はあるしやれることはやったよ」
「やれることは……ね」
するとアスナはキリトとコハルの手を握った。
「アスナさん!?」
「どうしたの?アスナ?」
「二人の幸運もちょっと貸して」
「あ、じゃあアヤトの分も!」
そういうとコハルは俺の手をとる。
「でもまあ、失敗してもこわれるわけじゃないよね?」
「はは、そんなこと流石にあるワk……」
ポキン……パリン……
その時、俺たちの時間が止まったように感じた。
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