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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百六十四話 二学期その五

「何か本当にボロボロになるっていうから」
「自分もしないって決めてるか」
「そうなんだ」
 こう池田君に話した。
「そんなことまでしたら」
「本当に人間終わりだな」
「そうなるよ、そんな入れ歯に電波を受信して騒ぐとか」
 それで東京から博多まで新幹線で行くとかだ。
「ヤクザ屋さんらしいけれど」
「売る方の人だな」
「売る方の人も結構やってるらしいよ」
「むしろカタギの人より多いか?」
「そうかもね、まああれだね」
 ここで僕が思った言葉はというと。
「深淵を覗くとっていうじゃない」
「何だよそれ」
「ええと、ニーチェだったかな」
「それ誰なんだよ」
「あれっ、知らない?」
「知らないな」
 池田君は僕に本気で知らないと返した。
「誰なんだよ」
「ああ、哲学者だけれど」
「僕は哲学は読まないんだよ、読むのは推理小説だよ」
 池田君は推理小説好きだ、コナン=ドイルだって好きだし江戸川乱歩も好きで最近はエラリー=クイーンを愛読している。
「だから哲学を言われてもな」
「知らないんだ」
「そうだよ、それでニーチェは」
「まだ教科書でも習ってないからな」
「だからだね」
「予習しているところにも出てないな」
 僕にこうも言ってきた。
「だから知らないんだよ」
「十九世紀後半のドイツの哲学者でね」
 僕はニーチェを知らないと話す池田君にそのニーチェについて僕が知っている範囲の中で話をした。
「神は死んだって言っていて」
「神様が?」
「うん、超人思想を唱えた人でね」
「それでその人がか」
「深淵を覗くなら深淵も自分を見ているってね」
「つまり深淵に飲み込まれるな、か」
「そう言ったからね」
 こう池田君に話した。
「だから覚醒剤を売っていてね」
「ミイラ取りがミイラになったんだな」
「そうそう、諺で言うとね」
「それだよな」
「それで覚醒剤に手を出す人が多いらしいよ」
 割合的に一般人よりもだ。
「そうなったみたいだよ」
「そうなんだな」
「だからヤクザ屋さんでやってる人多いみたいだよ」
「皮肉な話だな」
「本当にね、それでそのヤクザ屋さんの話とか聞いて」
「自分もしないってか」
「心に誓ってるよ、それで親父もね」
 ここでまた親父の話をした。
「そういう遊びはしてないよ」
「真面目なところは真面目な人なんだな」
「そうなんだ」
 このことは紛れもない事実だ。
「お酒と女の人だけだよ」
「遊ぶのはか」
「借金も作らないしね」
「そこもいいな」
「うん、借金作るまで遊ぶことも」
 このこともだ。
「親父はしないよ」
「それならな」
「かなりましだよね」
「ああ、人間としてな」
 池田君もこう言った。 
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