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戦国異伝供書

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第七話 長可の修行その十二

「僧兵達はおってもこの三つの寺より勢力は遥かに小さく」
「当家に次々と従ってな」
「僧兵もなくしてきておる」
「だからよいが」
「しかしこの三つの寺はそうはいかぬ」
「とりわけ本願寺はじゃ」
「うむ、何十万もの信者に雑賀衆もついておる」
 藤堂は彼等の名も出した。
「紀伊のあの者達がな」
「紀伊も本願寺の手にある」
 事実上そうなっている、紀伊も本願寺の信者が多くしかもこの国で強い力を持つ雑賀衆が本願寺に従っているからだ。
「だから迂闊に手出しが出来ぬ」
「あの寺には」
「とりわけそうじゃな」
「しかし本願寺を何とかせねばじゃ」
 藤堂はあらためて二人に話した。
「当家の天下布武、即ち天下統一は成らぬしのう」
「寺社も何とかせねば」
「全くじゃな」
「どうしたものか」
 難しい顔でだ、藤堂は述べた。
「この度はな」
「難しいのう」
「これからを考えると」
「寺社のこともな、国人達は織田家に組み込まれていて何よりも民達は慕っておる」
 信長の政により彼等の暮らしがよくなっているからだ、信長は民達からは非常によい殿様であるのだ。
「後は諸大名とな」
「寺社じゃな」
「朝廷も認めて下さっているし」
「その二つか」
「大きな問題は」
「そう思うが。どうも殿は」
 ふとだ、藤堂はいぶかしむ目になって二人に話した。
「何か感じておられるな」
「うむ、何者かがおるのではとな」
 石田も言ってきた、伊達に織田家の中でも指折りの切れ者とは言われていない」
「時折言われておるな」
「勘十郎様のお傍におったという津々木という者」
 大谷はこの者のことを思っていた。
「何者であったか」
「何かあるのか」
 石田はまた言った。
「この天下にはまだ」
「まさかと思うが殿は鋭い方」
 藤堂は自分達の主のこのことから話した。
「その殿が察しておられるなら」
「それならばな」
「ならば」
「おるのではないか」
 そうした者がというのだ。
「何かな」
「そうじゃな」
「殿が言われるなら」
「おるだろうな、何かが」
「そうであるな」
 三人で話す、そしてだった。
 それぞれの仕事に戻ったが石田がそれが終わってから大谷にあらためて言った。
「やはりわしもな」
「殿が言われていることはか」
「間違っていなくてな」
「何かがおるか」
「本願寺かとも思うが」
「あの寺か」
「あの寺ならば力があるからな」
 それでというのだ。
「裏で動いているのかと思うが」
「では顕如殿がか」
「違うであろうか」
「顕如殿か」
 大谷は微妙な顔になって述べた。 
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