戦国異伝供書
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第七話 長可の修行その十
「誰もがあの時は驚いたであろう」
「うむ、殿が領内の関所を全て廃すると言われてな」
「楽市楽座も言われてな」
石田と大谷はその藤堂に応えた。
「あの時はわしも何と思った」
「わしもじゃ」
「関所を通る際に結構な銭が入る」
「そこを通る者達から銭を得てな」
「しかもそこで怪しい者を抑えられる」
「それが出来るからのう」
だからどの戦国大名達も関所を備えているのだ、銭と怪しい者を国の中に入れない為だ。そうしているのだ。
「しかしそれをじゃ」
「あえてそうされるとはな」
「人の往来を自由にされる為に」
「そうされるとはな」
「わしもお止めしようかと思った」
藤堂もというのだ。
「あの時は、しかしな」
「うむ、平手殿がお止めしたが」
「それでもな」
「殿はそれでもと言われた」
「それだったな」
「関所は廃されて座もじゃ」
それもというのだ。
「なくした」
「それもどうかと思ったが」
「しかしこの通りじゃ」
「街は賑わい」
「そしてこの豊かさじゃ」
「凄いことじゃ」
こう三人で話す、そしてだった。
その話の後でだ、こうも言った藤堂だった。
「この豊かさ大きいぞ」
「うむ、織田家の力も増してきた」
「田畑からの年貢に加えて街の税も入る」
「そうなってきたからのう」
「こんないいことはないわ」
「殿は鉄砲鍛冶も多く迎え入れられた」
藤堂はこのことも話した。
「これも大きいのう」
「そうじゃな」
「これも大きなことじゃ」
「領地でどんどん鉄砲が造られておる」
「このままいくと何千丁もの鉄砲が使える様になる」
「どれだけ凄いことか」
「そうじゃ、殿の政は違うぞ」
藤堂の声は強いものになっていた。
「他の大名とはな」
「国の在り方が大きく違ってきておるのう」
「何かと」
「ではこれからどうなるか」
「天下は」
「そこも見ることになるか、若しやな」
こうも言った藤堂だった。
「あの武田や上杉にもな」
「何千丁の鉄砲で向かえば」
「勝てるか」
「そうやも知れぬ、しかし気になるのは」
「何じゃ?」
「気になるとは」
「比叡山はどうなのじゃ」
藤堂がここで言ったのはこの寺のことだった。
「あの寺は」
「都の傍にあるからか」
「その動きが気になるか」
「うむ」
まさにというのだ。
「わしとしてはな」
「本願寺か」
石田はその目を鋭くさせて言った。
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