空に星が輝く様に
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451部分:第三十五話 プラネタリウムその四
第三十五話 プラネタリウムその四
「とてもね」
「いい部分ですか」
「そうよ。明るいし」
まずはそこであった。
「それに面倒見もいいし」
「そうですか」
「自分が悪いと思ったら素直に認められるわよね」
これはだ。星華の気付いていないところだった。
「そうよね」
「それは」
「気付かなかったかしら」
「今はじめて言われました」
実際にだ。こう答えるのであった。
「そんなこと。本当に」
「自分で気付かなかったのね」
「私。そんなにいい性格ですか?」
「部活の練習を見てたらね」
先輩はそこから話すのだった。彼女の部活での行動を見てだったのだ。
「そう思えるわ」
「そうなんですか」
「悪いところを指摘されたらすぐになおそうとするじゃない」
それを言うのである。
「それについて努力して」
「だからそれで」
「それはとてもいいことよ」
「けれど私そんな」
「そんな?」
「いい娘じゃないです」
俯いてだ。そのうえでの言葉だった。
「悪いことも。随分しましたし」
「悪いこともなのね」
「許さないようなことだって」
月美にしてきたことがだ。今も彼女の心を責めていた。良心の呵責はだ。今も彼女を苦しめていたのである。それは彼女にはまだどうしようもないものだった。
「してきましたし」
「それはね」
しかしだ。先輩はここでまた星華に言うのだった。こう。
「誰だってよ」
「誰だってですか」
「そうよ。誰だってよ」
そうだというのである。
「誰だって同じよ」
「そうなんですか?」
「悪いことをしない人なんていないわ」
先輩はだ。微笑んで話したのであった。
「生まれて一度も。そんなことしない人なんて」
「いませんか」
「絶対にいないわ」
今度は断言だった。
「お釈迦様でもない限りはね」
「お釈迦様でも」
「ほら、教科書であったじゃない」
高校生らしい話だった。ここで電車が来た。
急行である。二人はそれに乗り込む。中央から左右に開く扉をくぐってだ。車両の中に入る。そうして空いている場所に二人並んで座ってだ。また話をするのだった。
席は薄い緑だった。そこに座ってまた話をはじめた。
「悪人正機って」
「確か親鸞ですよね」
「浄土真宗だったわね」
「そうでしたよね」
「それでその人の話であったじゃない」
その教科書の話をだ。先輩はそのまま星華にするのだった。
「悪人って自分が悪いことをしたって自覚してる人だって」
「自分がですか」
「あなたがそれよね」
他ならぬ星華がだというのだ。
「そのままよね」
「私がですか」
「ええ。そのままね」
「そうなんですか」
「そうよ。悪いことをしてきたって自覚してるわね」
「今は」
どうしてもだった。それは否定できなかった。
「それで。自分でわかってるから」
「だからそれで」
「そこからよ」
先輩の言葉がこれまで以上に優しいものになった。
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