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戦国異伝供書

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第六話 都への道その十

「これまで通りな」
「どうも慶次殿は柴田殿や平手殿を怒らせて」
「そしてか」
「はい、追い掛けられてです」
「楽しんでおるか」
「殴られるまでを」
「それがいかんわ、子供ではないか」
 慶次のそうした楽しみ方こそがというのだ。
「元服した大の大人がそれでどうするか」
「それは柴田殿平手殿のお考えで」
「あ奴は違うか」
「それが傾きなのでしょう」
「傾奇者か」
「童心ですな」
 ここでこの言葉を出した羽柴だった。
「それがし先日この言葉を教わりましたが」
「子供の時の澄んだ心じゃな」
「慶次殿はそれをお持ちで」
「そのうえで傾いておるか」
「そうなのであろう」
「左様か」
「はい、そうしてです」
 まさにというのだ。
「ああしてです」
「あの男は悪戯を続けておるか」
「左様かと」
「全く、織田家は色々な者がおるが」
「その中にはです」
「そうした者もおるということか」
「左様かと」
「やれやれじゃな、ではわしはその童心に向かい合ってやるか」
 柴田は慶次のそうした心に怒りながらも笑って言った。
「大人としてな」
「そうしてですか」
「うむ、また殴ってやるわ」
「ははは、権六殿が慶次殿を殴られるのも織田家の風物詩になっていますな」
「そういえばそうじゃな」
「何かと」
「昔からであるしな」
 柴田が慶次の悪戯に怒って彼を殴ることはというのだ。
「ではそれをじゃ」
「これからもですか」
「続けていこう」
 こう言ってだ、柴田は羽柴と共に茶を飲んだ。そしてその後二人はそれぞれ子宝を授かりたいと神社で願いごとをした。
 森は二人のその話を聞いてだった、自身の屋敷での槍の鍛錬を一時止めてそのうえで子供達に言った。
「世の中色々じゃ」
「子沢山の家もあればですな」
「そうでない家もある」
「そうなのですな」
「そうじゃ、わしは幸いじゃ」
 森は自分の子供達、槍を今教えていた彼等に話した。
「お主達がおるがな」
「しかしですな」
「そうした家ばかりではない」
「柴田殿や羽柴殿の様な家もある」
「子宝が授からず困っている家も」
「そうじゃ、わしはお主がおってじゃ」
 まずは長可を見て言った、織田家では今や慶次と並ぶまでの猛者になっていて戦の場での恐ろしさは彼以上とも言われている。
「それでじゃ」
「はいさらにですな」
「お主達もおる」
 長可の下のまだ小さい子達も見て言った。
「だからな」
「子沢山で、ですか」
「そのことを有り難く思っている」
「そうなのですか」
「そうじゃ、何という果報者か」
 こうも言うのだった。
「わしはな」
「父上、しかしです」
 まだ幼い子の一人が言ってきた、名を蘭丸と言う。幼いがその顔立ちはまるで女の様に整っている。 
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