GOD EATER STUDIUM
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第一部 少年たち
第四章
建設
前書き
アラガミの表現が困難です。
ヘリが到着した先に建設中のアーコロジーが立っていた。壁には足場が組まれていてアーコロジーが未完成なのを表していた。足場の上では作業員が対アラガミ装甲壁の建築を行っていた。作業員の人たちはアリサさんの姿を見るなり、おーいと手を振っている。その中の一人が、また近くで強力なアラガミが出現したので頼みます。と言った。それに釣られるように他の人たちもよろしく頼むと声を掛ける。アリサさんは笑顔でわかりましたと答えている。周囲には自然に囲まれている。
「アリサさんここは? なんですか」
「ここはアナグラだけでは保護できない人たちの新しい居住区です。私たちは未保護集落の人たちが安全に暮らせる場所を提供しているんですよ」
今のアナグラはゴッドイーターの資格を持つものとその家族だけが住むことを許されている。と思っていた。そうしていたのも身をもってしっている。それは仕方がないことということも。アナグラで保護できる人も限りがあるし、食料などの資源にも限界がある。この限界がある世界で命の価値に優先順位をつける優生思想も必要だ。その人たちがいたからこそ今これだけの人間が救われているのも間違いはない。わかってはいるけど、どうしても目の前のことにとらわれてしまう。だからこそこういった支援の届かない人たちに安全な環境を提供しているゴッドイーターがいることがものすごく嬉しい。これがアリサさんの言っていた全世界の人間が安心に暮らすことってことか。
あ、アリサさんがこっちを見て目を見開いている。今自分はどんな表情をしているのだろ。自分の頬を触ると涙が伝う。そっか、いま泣いているのか。だからアリサさんはこっちを向いているのか。なぜだろう? いや、わかっているあの時の、ルイが命を懸けて救った人たちが救われる場所があることを知ったからだ。自分の行動を肯定しているようで嬉しいんだ。
「アリサさん。ここ最近、フェンリル独立支援部隊に保護された人っていますか? ここ一週間ぐらいで」
「ええ、あなたたちが救ってくれた三人の家族は、クレイドルが保護していますよ」
よかった。と言葉が零れ落ちると、一瞬で身体から力が抜ける。力を抜きすぎて尻餅を着き、座り込む。胸を撫で下ろす。自分の中でモヤモヤしていた気持ちが晴れる。するとアリサさんはそれを見て微笑みながらそっと近づく。
「だから、言ったじゃないですか。あなたが守れていないと思ったものでも守れていることがあるって。まあ伝えたかった意味とは少し異なりますがこういう事ですよ」
そして優しく手を差し伸べてくれる。俺はその手を取る。そのまま、持ち上げるように引っ張られ立ち上がる。アリサさんは手を離し、その手を頭に乗せる。
「とっても頑張りましたね」
包まれるような笑みを浮かべ、頭をポンポンと優しく叩く。堪えていた涙が溢れそうになるのを我慢するために上を向く。お腹にギュッと力を入れて目に手を当てる。開きそうな口を閉じる。おっさんの言っていたクレイドルってアリサさん達のことだった。あの時おっさんはわざとあんな態度を取って、だからクレイドルを目指せって。もっと素直に言ってくれよ。
◎
「落ち着きましたか?」
アリサさんは手に持っていたお茶を俺の前の机に置く。お茶は暖かいようで湯気を上げている。あの後、結局堪えることができなかった為、場所を変えて落ち着くまでそっとしてもらった。どうやらここは活動拠点らしく、椅子と机と仮設用ターミナルなど必要最低限のもののみで構成されている。
「ありがとうございます」
「落ち着いたならここで今回のミッションについてお話しします。先ほど見てもらった通り、ここのアーコロジーは建設途中ですが、完成は間もないです。しかし、ここ最近アラガミが近くで活発に活動しており、物資の供給はおろか、ここでの建設にも影響を出しています。そこでサキ君達にはここの警護してもらいます」
「ここのアーコロジー全体ですか? それは俺とアリサさん二人だけですか?」
「いえ、私は単独で物資運搬の護衛をするのでここにはいないですが、なにか対応できない事態に陥ったら無線を飛ばしてください。すぐに来ますので。それに安心してくださいこの広いアーコロジーを一人で見るのは無理があるので、他にも三人の神機使いが配置についていますから」
「わかりました」
「後、この周辺のアラガミは日が落ちるとともに活動範囲が広く活発に行動するため、夜に特に警戒してください。逆に日が昇ると鎮静するのでその時に交代で休憩をしてください。わからないことがあったら他の神機使いの方に聞いてください」
何か質問はありますか? と普段違って凛とした表情で問いかける。俺はその場の雰囲気から察し、ありません。はっきりと答える。
「もう日没も近いのでくれぐれも無茶はしないように」
アリサさんが拠点であるベースキャンプから出ると入れ違いで大男の神機使いが入ってきた。すれ違い際にアリサさんが、後はよろしくお願いします。と言っていた様子から、この大男の人がアリサさんの代わりに指揮を執る人なのだろう。
「よお! お前が新入りで間違いないな」
「はいじめまして、作楽サキと言います」
慌てて席を立ち、挨拶をする。
「別にかしこまらなくてもいい。俺はカン・モムジェン。ここが完成するまでよろしくな」
カン・モムジェンと名乗る大男が手にしている神機は見た目通りでバスター型の刀身にショットガン型の銃身、タワーシールド型の装甲でなされている。鍛え抜かれた体は筋肉が膨れ上がっている。服の上からでも筋肉の膨らみがわかる。
「ついてこい、お前の持ち場と他の奴とあわせてやる」
俺は、カンに促されるままついていくと装甲壁の上に登る。ちょうど、日が沈みかけている。空はオレンジ色に染まっている。そこからは、アーコロジーを見渡すことができた。
「ここに何人の人を匿えると思う?」
「この広さからだと100人ぐらいですか?」
「いや、その50人ぐらいだ。さて、その50人のために何人の犠牲を払うと思う」
犠牲という言葉に反応して、戸惑う。
「答えは、平均して3人だ。この数字が多いと思うか少ないと思うか?」
「……多いと思います」
「そうか。この計画は、上層部にあたる本部の奴らからはすごく批判を受けている。それもそうだ。なんでもない人を今日なゴッドイーターを減らして助けるんだからな。この意味が分かるか」
「わかりません」
「素直はいいことだ。つまり……」
森の方から大きな爆発音が鳴る。音のする方を見ると土煙が空高く舞い上がり、鳥たちが逃げていく。
「ちっ。また来やがったか」
カンは、慣れた手つきで無線で連絡を取る。
「こちらカン、第3班応答せよ。なにがあった」
雑音の後に無線に連絡が入る。
『こちら第3班、最近出没中の例のアラガミに遭遇。撤退中』
「わかったくれぐれもこっちらに立ち入れぬよう、細心の注意を払え」
『了解』
通信を切り、森の方をみていると、下から他の作業員が上がってくる。
「隊長、どうやら例のアラガミは、シユウの感応種と予想されます」
「なに、感応種だと。厄介なアラガミがどうしてこの地にやってきた。事前調査に問題があったのか。どちらにせよ感応種が相手となると応援を要請するしかないな。至急、極東支部へ連絡をし、対策を練る」
作業員は啓礼し、下に降りていく。
「感応種ってあの感応種ですか?」
「あのがどのことかはわからんが、そうだと言っておこう。感応種についての知識はあるだろう?」
「はい、通常の神機使いでは手も足も出ない。遭遇したら撤退するようにと言われています」
「奴らの放つ偏食場パルスの影響で神機の制御不全に陥る。コントロールの上手い神機使いでも、戦力としては半減するといわれている」
カンは腕を組み森の方角を見る。
「明日にはアリサも戻ってくる。そしたら作戦を立てる。それと極東とブラッドに応援を呼ぶか」
カンは深いため息を吐く。次に自身の顔を両手ではたく。
後書き
はじめに出す感応種は、イェン・ツィーにしようと思ってました。私の感応種ランキングの上位です。
次回 9月27日
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