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戦国異伝供書

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第五話 岐阜の城からその十一

「さて、土佐もな」
「はい、海からだけでなくですな」
「山に道を通じさせてな」
「そうしてですな」
「讃岐や阿波とのつながりをよくするぞ」
「そして土佐も往来をよくすると」
「そうじゃ、どうもこれまで土佐は往来がなかった」
 天下の国の中でもというのだ。
「前は海、三方は山に囲まれておってな」
「はい、ですから流罪の地にも使われてきました」
「そこを変える、土佐もじゃ」
「海からそして山からも」
「往来をよくするぞ」
「では土佐からもですな」
「そうじゃ、讃岐と阿波からも道を造っていってな」
 信長はさらに言った。
「そうしていき」
「土佐も往来をよくする、そして土佐にも楽市楽座を行うと」
「うむ、そう考えておる」
「土佐でもとは」
「当然じゃ、お主も織田家の家臣となった」
「そして土佐も織田家の国となったので」
「そうするのじゃ」
 こう土佐一国を引き続き治めさせている長曾我部に話した。
「わかったな」
「はい、さすれば」
「さて、四国は残るは伊代のみ近畿は紀伊じゃが」
「その二国は何時でも手に入れることが出来ますが」
 信行がこのことを言ってきた。
「それでもですか」
「今でようやくであろう」
「治められるには」
「そうじゃ、ここで二国増えるとな」
「余計に人手と銭が必要になり」
「他の国がおそろかになりかねぬ、しかもあの二国は国人が多い。紀伊はしかも本願寺の力も強い」
「だから迂闊には」
 信行は兄に問うた。
「手を出さぬ」
「うむ」
 その通りとだ、信長は弟に答えた。
「そうするのじゃ」
「あの二国は後ですか」
「今の領国が全て治まってな」
「朝倉家とのことが終わり」
「それからと考えておる」
 こう信行に答えたのだった。
「わしはな」
「わかりました、それでは」
「その様にな」
「はい、それでは」
 信行も納得した、こうして織田家は今は自国が手に入れている領国だけを治めていった。そうして次の段階に備えもしていた。


第五話   完


                    2018・6・8 
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