| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空に星が輝く様に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

4部分:第一話 最初の出会いその四


第一話 最初の出会いその四

「それで高校はね」
「その高校は何処なんだ?」
「八条高校らしいわ」
「えっ、嘘だろ」
 父はそれを聞いて驚きの声を出してしまった。
「あいつは八条高校か」
「そうらしいわ」
「嘘だろ、それ」
 それをまた言うのだった。
「あいつの頭で八条高校って」
「信じられないのね」
「当たり前だ」
 はっきり言い切っていた。
「あいつの頭なんてな」
「私達似だからね」
「黄華だけあれだけれどな」
「あの娘はお姉ちゃんに似たじゃない」
 母の言葉である。
「私のね」
「胸もな」
 父はにこりともせず述べた。
「姉の方が大きいってのはいいことか?」
「胸の話は止めてよね」
 母はその話にはむっとして返した。
「その話はね」
「ああ、そうだったな。悪かったな」
「そうよ。まあとにかくだけれどね」
「あいつが八条受けるのか」
「八条高校には商業科とか工業科とか一杯あるけれどね」
 学部も色々ある学校なのである。要するにマンモス校なのだ。
「それであの娘が行くのはね」
「商業か?やっぱり」
「普通科らしいわ」
 そこだというのである。
「そこらしいわよ」
「そりゃもっと難しいだろ」
 父の言葉は懐疑的なままであった。
「あいつが受かるのかよ」
「さあ。無理じゃないの?」
 母の言葉も素っ気に」
「やっぱりね」
「そうだろ。滑り止めは受けさせるんだろうな」
「当たり前でしょ。それを受けないでどうするっていうのよ」
「よし、それならいいんだけれどな」
 妻の今の言葉を聞いてとりあえずは納得した顔で頷く彼だった。
「それでな」
「そうでしょ。とにかくね」
「ああ、八条高校か」
「黄華もそこ受けるって言ってるし」
 もう一人女の子の名前が出て来ていた。
「姉妹揃って高校も同じっていうのもいいじゃない」
「そういうものか。まあ話は合格してからだな」
「ふふふ、そうね」
 両親はそんな感じだった。受かるとは思っていなかった。だが星華は本気だった。連日連夜ほぼ徹夜で勉強してだ。そうして受験に臨んでいたのだ。
 そんな彼女は周囲からも見られていた。周りも日に日にやつれていっている彼女を見て気遣わずにはいられなかった。声をかける者も多かった。
「ちょっと、幾ら何でも」
「勉強し過ぎじゃないの?」
「身体壊すわよ」
「大丈夫よ」
 しかし彼女は微笑んで言うのだった。
「身体の方はね」
「いや、大丈夫じゃないし」
「だって目の下にクマ出来てるし」
「痩せたし」
「だから大丈夫よ」
 しかし彼女はこう言うだけだった。
「全然ね。平気よ」
「平気って大丈夫なの?」
「身体の方は」
「それで受験の時倒れたら」
「何があってもそれはないわ」
 星華の言葉は本気だった。そこには明らかに執念すらあった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧