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393部分:第二十九話 壊れてしまったものその十二


第二十九話 壊れてしまったものその十二

「実にいい感じに」
「いい感じになのね」
「その通り。それに」
「それに?」
「神戸だから風も多い」
「あっ、そうね」
 椎名に言われてだった。月美はこのことも認識したのだった。神戸は六甲から吹き降ろす風が多くだ。それのことを思い出してだったのだ。
「それは」
「特に港には来るから」
「それも考えてだったの」
「ありとあらゆることを考えて手を打つ」
 また軍師めいた言葉だった。
「恋愛は全て戦争だから」
「戦争だったの、恋愛って」
「相手もいれば複数の勢力も絡み合ったりする」
「複数の」
「同盟国もできれば丁々発止のやり取りもある」
「何かそう言うと戦国時代みたいね」
「実際にそうだから」 
 だからだというのであった。
「よくわかっておいて」
「ええ、それじゃあ」
「今日は私と来て」
「次は陽太郎君と」
「そう、ここなら」
 その港町にいながらだ。椎名はさらに話したのだった。
「斉宮も陥ちるから」
「陥ちるの?」
「陥落する」
 そうだというのである。
「間違いなく」
「何かそれも戦争みたいね」
「みたいじゃなくてそのものだから」
「だからなの」
「そう、今回はいい偵察になったから」
 下見と言わずにだ。月美をその気にさせる為にあえて出した言葉だった。
 そしてだった。さらに話すのだった。
「次はね」
「ええ。陽太郎君と」
「ここで次のステップに向かうべき」
 見事な至難だった。
「そういうことだから」
「うん。じゃあ今日はこれで」
「帰ろう」
 椎名からの言葉だった。
「それじゃあ今から」
「そうね。寒いし」
「寒いのが問題ね」
「それはどうしようかしら」
「安心して。それも」
「寒さもなの?」
「寒さに対するには」
 どうすればいいのか。椎名はこのことも指南するのだった。やはり軍師であった。
「服を着ればいいから」
「服を。ってことは」
「制服の下に着込めばいいから」
「そうね。それじゃあ」
「まずブラウスの上にセーター」
「ベストタイプのね」
「それとハイソックスの下にストッキング」
 それも言うのだった。
「あと手袋も」
「ミトンでいいかしら」
「尚よし」
 いいというのであった。
「それも毛皮の」
「ええ。じゃあそういうので」
「それとマフラーも」
「それは必要ないんじゃ」
「そろそろ出してもいいから」
「秋の終わりなのに?」
「夜だといい」
 こう月美に話すのだった。
 
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