空に星が輝く様に
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387部分:第二十九話 壊れてしまったものその六
第二十九話 壊れてしまったものその六
陽太郎も月美もその顔を強張らせる。先程のことを思い出したからだ。椎名はその二人を横目で見てからだ。それで言ったのだった。
「今は話さない」
「あっ、そうか」
「そうするのね」
「うん。とにかく今は部活」
「だよな」
「それかバイトね」
「そういうこと。アフターも楽しく」
ここではあえて英語をその会話に入れてみせる。これは椎名の茶目っ気である。
「学園生活はかくあるべし」
「じゃあこれからは」
「つきぴーは居合を磨く」
月美に返した言葉だった。
「そうあるべし」
「そうよね。それじゃあ」
「剣は心をも映し出す」
椎名はこうも言った。
「だからこそ」
「部活で居合をなのね」
「心身共に磨く」
「うん、わかったわ」
「そうすればいいから」
「ええ、それじゃあ今から」
「頑張ってきて」
また月美に告げた。
「存分にね」
「ええ」
月美も笑顔で頷く。そうして彼等は部活に行くのだった。
しかしだ。星華達は。体育館裏で呆然となっていた。辺りは赤く染まりそれが闇の中に落ちようとしている。その中でだった。
月美は沈んだ顔でだ。動かない。三人がその彼女に声をかける。
「ね、ねえ」
「もう行かない?」
「部活に」
「部活・・・・・・」
星華は三人のその言葉に声を出した。
「今から」
「うん、行ったら?」
「もうね」
「行こうよ」
「けれど」
星華は項垂れたまま言葉を返す。
「私、もう」
「もうって?」
「あの、確かにさ」
「斉宮ああ言ったよ」
三人はおろおろとしている。それでも言うのだった、
「けれどよ。またチャンスあるから」
「諦めないでね」
「また次によ」
「言えばいいじゃない」
「そうそう」
「そうしようよ」
「けれど。絶交って」
三人が何を言っても無駄だった。今の彼女にはだ。
それで項垂れたままだ。その目から。
涙を流しだした。それは静かだが確実に溢れ出る。そしてそれはもう止まることがなかった。
そしてそのまま泣き崩れた。両手を肘から地面に置き伏せてだ。顔を隠して泣きだしたのだった。
その星華にだ。三人は言う言葉がなかった。
そうして彼女はこの日は何もできなかった。部活にも行かずそのまま家に帰りだ。夕食も食べずに部屋に閉じ篭もってしまった。
そんな彼女に気付いてだ。両親も言うのだった。
「どうしたんだ、あいつ」
「さあ」
母が父の言葉に応える。今二人はちゃぶ台に座ってそれで夕食を食べている。コロッケに味噌汁、それに野菜の惣菜という典型的なメニューだ、
父はコロッケにソースをかけながらだ。言うのだった。
「いつもは夕食になったら真っ先に降りて来るのにな」
「そうよね、本当にすぐになのにね」
「けれど今日に限ってどうしたんだ?」
父は首を傾げさせて言う。
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