八条学園騒動記
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第四百七十六話 水晶の髑髏その五
「それもいいよ」
「そうだね、しかしね」
「しかし?」
「これ誰かこれまでしたことあるかな」
ベッカは水晶の髑髏を観つつローリーに尋ねた。
「水晶の髑髏のシャングリラ」
「いないんじゃないかな」
「いないんだ」
「だってそんなもの造ったら」
それこそとだ。ローリーはベッカに話した。
「話題になるからね」
「それで語り継がれるから」
「それでね」
「歴史にも残って」
「言われているから」
「水晶の髑髏って有名だから」
「絶対に言われ続けるからね」
そうなるからだというのだ。
「企業が売りに出しても個人が趣味で造ってもらってもね」
「どっちにしてもだね」
「話題性は抜群なんだから」
「ううん、それでないんだ」
「ちょっと検索してみるね」
ローリーは自分のスマホを出して実際にそうしてみた、するとそうしたものを造った人物はというと。
「やっぱりいないね」
「そうなんだね」
「お金があってもね」
「それをした人はいないんだ」
「そうみたいだよ。けれどお金があったら」
「やってみたいかな」
ベッカは赤や青に輝きつつ回転する髑髏を観つつローリーに述べた。
「僕としては」
「僕もそう思うよ。しかしね」
「しかし?」
「この髑髏一つでも相当お金かかるけれど」
人の頭程の大きさの水晶に職人の手で細かく作業をして造り上げるものだ、途方もないコストがかかるのは当然だ。
「それを何十にもなると」
「凄い額になるね」
「この学園の理事長さんなら出来るから」
「いや、理事長さんだったらね」
それこそとだ、ベッカは八条義統という人物のことを話した。
「そんなのポケットマネーでね」
「出来るんだ」
「だって連合有数の企業グループの経営者の一族で」
その立場にあってというのだ。
「しかも次期総帥だからね」
「そのお立場なら」
「まあ今は中央政府国防長官もしておられるけれど」
連合ではむしろこの役職で有名である。
「それでもね」
「凄い資産家だから」
「何でも収入は一ヶ月辺りでエウロパの国家予算の一パーセントらしいから」
「エウロパのって」
「まああの国は連合の六百分の一位の国家予算で経済規模で」
それ位の国だというのだ、長い間対立関係にあるがその富の程はそこまでの開きが出来てしまっているのだ。
「それ位だけれど」
「それでも相当に多いけれど」
「本当かな、これ」
「流石にないんじゃ」
実際これは噂で八条義統もそこまでの収入はない。エウロパの国家予算の一パーセントとなると連合の国家予算の約六万分の一だから流石にそこまでは個人の一ヶ月の収入とはなるまではない。連合はそこまで富の偏在はなっていないのだ。
「幾ら資産家でも」
「そうなんだね」
二人でこうしたことも話した、そしてだった。
ベッカは今も髑髏を観つつローリーに話した。
「まあそれで理事長さんの資産なら」
「水晶の髑髏のシャングリラも」
「普通に造られるよ」
「お金があるから」
「どっちにしろあの人超が付くお金持ちだから」
それでというのだ。
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