レーヴァティン
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第六十四話 あやかしその五
「あれがあやかしか」
「ああ、凄いだろ」
「驚くべき大きさだな」
「船自体は襲わないんだよ」
船乗りは英雄に話した。
「中にいる人間もな」
「ただああして船の上を通っていくだけだな」
「そうなんだよ、けれどな」
「それでもだな」
「問題はその油でな」
「油が船に落ちてだな」
「その重さで沈めるんだよ」
「それが問題だな」
「ああ、しかしな」
それでもと言う船乗りだった。
「油を捨てる位ならな」
「使え、だな」
「最初に誰がそう考えたか知らないがな」
「実際に使ってみるとだな」
「それが随分といい油でな」
それでというのだ。
「ああして今じゃな」
「あやかしが出るとか」
「逆に船を出して取ってるんだよ」
その油をというのだ。
「そうしているんだよ」
「成程な」
「けれどああしてもう一週間だ」
「それならだな」
「そろそろだな」
時間的にというのだ。
「終わりだな」
「ではここでな」
「通り過ぎるのを待とうな」
「最初からそのつもりだったしな」
「それではな」
二人で話してだ、そしてだった。
一行はあやかしが通り過ぎるのを待った、妖怪は船乗りが言った通りに数刻経ってから姿を消した。待つ間英雄達は釣りをしていた。
その釣りをしていた一行にだ、船乗りは声をかけたのだ。
「おい、行ったぜ」
「そうか」
「ああ、しかしな」
「しかし。何だよ」
「あんた達釣りもするんだな」
このことを言う船乗りだった、英雄に対して。
「そっちも」
「駄目か」
「いや、意外に思ってな」
「暇潰しをするならな」
それならというのだ。
「これもいいからな」
「それでか」
「食える魚が釣れれば食うしな」
「そのこともあってか」
「水辺で暇ならな」
時間を潰したい時はというのだ。
「時々だがしている」
「成程な。それで釣れたかい?」
「ハマチが釣れた」
見れば傍に置いてある桶にその魚がいた。
「いい魚だな」
「へえ、こりゃいいな」
「出世魚だからだな」
「ああ、これが釣れるとな」
それならとだ、船乗りは桶の中で泳いでいる大きなハマチを見て英雄に話した。
「ことが成るって言うんだよ」
「こちらの島ではそうだな」
「そうさ、何しろ出世魚だからな」
それだけにというのだ。
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