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いたくないっ!

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カーテンコール

 会場には、満員の観客。
 拍手の嵐、そして歓声が、場内に響いている。

 どれだけ拍手が続いただろうか。
 降り閉まっていた幕が、突然ゆっくりと、静かに、巻き上がり始めた。
 場内の歓声が、より大きくなった。

 すーっ、と上がっていく幕の隙間から、ステージ上に立っている人の足元が見える。
 さらに、幕は上がっていく。

 ステージに立っているのは、

 定夫、
 トゲリン、
 八王子、
 敦子、

 の四人であった。
 だんだん拍手はおさまって、やがて場内は、しんと静かになった。

 定夫は、右手に持っているマイクを自らの口に近づけた。



 定夫「みなさま、この作品に最後までお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました!」

 一同「ありがとうございましたーーっ!」

 定夫「いやあ、それにしても、なんとか無事にラストを向かえることが出来ましたね」

 敦子「緊張したあ」

 トゲ「拙者、ござる言葉が抜けなくなったでござるよ」

 八王「長かったからなあ。この物語が始まってから。じゃあ、終わった今それぞれどんな気持ちか、順番に。はい、レンドルから」

 定夫「いやあ、別になんもない。走り終えたなあ、という漠然とした充実感があるだけかな。しいてなんかいうなら、そうだなあ……『まほの』のシナリオを書いていく中で、どんどんキャラが立っていくのが面白かったかな」

 八王「ほのかなんて、最初の構想と随分違うもんね」

 定夫「ほのかが、あんなに頭が悪いなんて設定、最初はなかったもんな。妖精猫との掛け合いが面白くて、どんどんエスカレートしちゃって、キャラが出来上がっていって、だから最初の方ほど随分と書き直したんだよな。なんか違う、ほのかはもっとバカだぞ、って」

 八王「敦子殿と出会って、その喋り方に影響を受けて、それでさらにほのかのキャラが変わったのもあるよね」

 敦子「ああ、それ作中でも説明してましたね。……えっ、えっ、それひょっとして、あたしがバカってことですかあ?」

 定夫「あ、いやっ、そういうわけではないが……ではっ、次はトゲリン!」

 敦子「ごまかさないでくださあい!」

 トゲ「なんだろうか。いま改めて問われると、一番苦労したのはやっぱ背景かなあ。……で、ござるっ、でござる、やはり、断然、背景でござるっ」

 定夫「別に慌てて『ござる』を付け足さなくてもいいんだぞ」

 トゲ「いやあ、もうこれがないとみなさん納得しないと思うので」

 敦子「八さんは?」

 八王「そりゃ大変だったのはデータ化や編集作業だけど、でも、一番印象に残っているのは、発声トレーニングかなあ」

 定夫「鬼軍曹が、厳しかったからなあ」

 敦子「誰が鬼軍曹ですかあ! そもそもみなさん、体力がなさすぎなんですよお」

 八王「そんな敦子殿は?」

 敦子「わたしはですねえ、『魔法女子ほのか』という素晴らしい作品のオリジナル版に参加出来たことが、とっても幸せでしたあ。でも、というか、とにかく印象に残っているのは、レンさんたちが星プロを襲撃しようとしてた時の、たっくさんのまほのファンの前で歌ったことかなあ。あれ、すっごいゾクゾクしたああ。気持ちよかったあ」

 定夫「別に襲撃したわけではないのだが」

 トゲ「あれはまことに、敦子殿の独壇場でござったなあ。腕を振り回して、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、端から端まで走ったり、びしっと敬礼ポーズを決めたり」

 八王「キラキラスパイラルの『君もひーとつぶ』の歌詞のとこで、前に大きくマイク代わりの手を突き出しながら、もう片方の手を耳に当ててんの、あれいま思い出しても笑っちゃう」

 敦子「えっ、えっ、わたしそんな恥ずかしいことしてたんですかあ?」

 八王「してたよ。こう、拳を突き出して『みんなあ、いっくぞおお!』」

 敦子「やめてーーっ!」

 八王子「『うみだーせ地球! キラキラキラ ヘーイ!』」

 敦子「ほんとやめてーーーーっ!」

 トゲ「似てる」

 敦子「似てません!」

 定夫「さ、そろそろ時間かな。ちょっとぐだぐだになってしまったが、まあいい頃合いだ」

 トゲ「そうでござるな」

 八王「それでは、みなさん! 改めて、長々とこの作品にお付き合いいただきまして、ありがとうございました!」

 敦子「もし機会があれば、またお会いしましょう!」

 一同「ありがとうございましたハーーーーン」



 四人は、深々と頭を下げた。
 頭を上げて、全員で繋いだ手を高く上げる。

 場内、拍手。

 そして、
 ぴーぴーきゃーきゃーの歓声が飛ぶ。

 とげりーん!
 八ちゃーん!
 ナイスバルク!
 もーーーっ!

 拍手と、普通の歓声と、意味不明の叫びが轟く中、そーーーっと幕が降りてくる。

 鳴り止まぬ拍手の中、歓声の中、四人の笑顔は完全に幕の向こう側へと消えた。 
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