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悪役の素顔

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第二章

「ですから」
「当然ですか」
「我々にそうしてくれることは」
「そうです、わしはあの方の食客だったではないですか」
 高俅は目の前にいる彼等にこのことを話した。
「遊侠の徒のわしを置いて学問もさせてくれたのです、何かとよくしてもらって」
「それが為にですか」
「我等にですか」
「今」
「そうです、本当に何でも言って下され」
 目の前にいる者達、老若男女の彼等にまたこう言った。
「銀も人もあります、ですから」
「その銀と人を」
「我等に」
「お渡ししますので。ご安心して下さい」
 こう言ってだ、高俅は彼等を助けた。このことは宰相である蔡京の耳にも入ってだった。蔡京は高俅を自身の屋敷に呼び二人だけで飲みつつ難しい顔で尋ねた。
「あの御仁の一族を」
「それが何か」
 高俅は蔡京の堂々とした態度にも負けじに返した。
「私はあの方には随分よくしてもらったので」
「だからと言われるか」
「左様、それにあの方の一門はもう官職にありませぬな」
「ならよいと言われるか」
「官職にないなら何の力もないでありませぬか」
 このことは宋、科挙により官吏の力がとりわけ強いこの王朝では絶対のことだ。だからこそ多くの者が科挙に及第し進士となりそこから官吏それも高位の者になることを目指しているのだ。蔡京にしてもそうした者だ。
 だからこそだ、高俅は蔡京に言ったのだ。
「それでは宰相も問題ないかと」
「確かに。では」
「はい、これからもあの方のご一門はです」
「太尉殿は助けていかれますか」
「私の遊侠の戯れとも思って下され」
「本気の戯れですか」
「ははは、遊侠は命も賭けることがあり申す」
 高俅は蔡京に笑って返した、切った張ったもありその中でそうした出来事も有り得るのだ。
「ですから」
「左様でありますか、では」
「はい、このことは大目に見て下さいます様」
「仕方ありませぬな」
 憮然としつつもだ、蔡京は高俅に応えた。
「それでは」
「はい、遊侠の徒のすることとして」
「私も何も言いませぬ」
 その長い髭があり恰幅のある顔で応えた、蔡京にしては面白くなかったが相手が官吏にないなら確かに彼もそれ以上は何もすることもなかった。
 こうして高俅は彼等を助けた、そのうえで家の者達に話した。 
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