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大阪のつらら女

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第一章

               大阪のつらら女
 小長井晶子はこの時大阪市阿倍野区にある自分の家で夫の弟の妻であり学生時代の同級生でもある南口真奈と二人で話していた。
 晶子は穏やかなおっとりとした大人の顔立ちで茶色がかった肩を完全に覆う長さの髪の毛は波立っている。白い上着と青い膝までのスカートと上着と同じ色のハイソックスがかなり清楚で若妻らしい印象を与える。
 真奈はその清楚な感じの晶子と違い明るい顔立ちで小さな紅の唇と整った吊り目それに長い金髪を後ろでワイルドに束ねた感じが似合っている。ピンクのタンクトップとジーンズがよく似合っている。外見は正反対だが二人共スタイルはかなりよく胸が目立っている。
 二人は今お茶を飲んで水饅頭を食べている、晶子はそうしつつ自分の向かい側の席にいる真奈に対して言った。
「子供今何ヶ月?」
「三歳よ、もう賑やかでね」
「いいわね、うちはね」
「頑張ってるんでしょ」
「それでもよ」
 晶子は真奈に困った顔で返した。
「出来ないものはね」
「出来ないのね」
「子供はかすがい、宝って言われるけれど」
「お宝ってね」
「欲しくても手に入らないものでしょ」
「急に貰ったりね」
「本当にそんなものね」
 自分でだ、晶子はこのことを今実感していた。そうして言うのだった。
「だからよ」
「欲しくて頑張ってるのね」
「現在進行形でね、それも毎日」
「毎日なの」
「あの人が家にいる日はね」
 つまり夫が出張で家にいない時以外は毎日もっと具体的に言えば毎晩というのだ。
「そうしてるわ」
「それじゃあそのうち出来るわよ」
「だといいけれどね、あの人も乗り気だし」
「お互いがそうならね」
「ええ、そう思って頑張ってるわ」
 実際にとだ、晶子は真奈に応えた。そうしてだった。
 二人で水饅頭を食べた、ここで真奈はその水饅頭の話をした。
「この水饅頭美味しいけれど」
「ええ、そうでしょ」
「どのお店で買ったの?」
「お隣さんに貰ったの」
 晶子は真奈にこう答えた。
「お隣の氷上さんにね」
「氷上さんになの」
「そうなの、何か夏はあまりお外に出ない人だけれど」
「お仕事何してる人なの?」
「何かゲーム開発してるらしいわよ、自宅で」
「自分のお家で?」
「シナリオライターらしいのよ、そっちのお名前は氷柱っていうらしいわ」
「あれっ、氷柱さんってうちの旦那の会社のメインシナリオライターの一人じゃない」
 真奈は晶子の話聞いて気付いた顔になって言った。
「私が今やってるゲームでもね」
「シナリオ担当してる人なの」
「あのファンタジークエストⅩのね」
 八条ソフト、真奈の夫が務めている企業の代表シリーズの一つだ。尚八条ソフトとは八条グループが経営している企業の一つで日本のゲーム業界において三十年以上前から業界でかなりの大手として知られている企業だ。
「あの人なの」
「そうだったの」
「あの人がお隣さんなんて」
「世間狭いわね」
「ええ、私達にしてもね」
「そうよね、同じ高校の同級生で」
 晶子もこう返した。
「それでね」
「あんたがお兄さんの奥さんで」
「あんたが弟さんの奥さんでね」
「そうなるなんてね」
「世間狭いわね」
「本当にね」
 二人のそれぞれの夫である兄弟は兄弟で同じ八条大学出身で弟は八条ソフト兄は八条建築でそれぞれ八条グループの企業で働いている、これも世間だ。 
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