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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第5章:幽世と魔導師
  閑話14「足掻き続けて」

 
前書き
優輝が守護者と死闘を繰り広げてる中、司達は……的な話です。
前回、援軍が来ておきながら描写が少なすぎたので、こちらで補完する事にしました。
 

 





       =out side=





 最初に織姫が守護者に刺され、次に帝が天羽々斬に斬られ、なのはが斧使いの式姫に吹き飛ばされて戦闘不能に追い込まれた。
 既に量で負け、質でも同等の相手がいる状況で、さらに劣勢に追い込まれていく。
 ……その中でも、司達は足掻き続けた。

「っ……!」

     ギィイイン!!ギギギィイイン

 蓮が、目の前の式姫と何度も切り結ぶ。
 相手は天羽々斬。刀を扱う式姫でもトップクラスに位置する式姫だ。
 当然、憑依と京化によるパワーアップがあっても、蓮では彼女に劣る。

「ッ!」

 押し負けそうになった瞬間、天羽々斬に向けて黄緑色の鎖が迫る。
 難なくそれは躱されしまうが、蓮が体勢を立て直すには十分だった。

「助かりました!」

「気にしないで!」

 鎖はチェーンバインドで、放ったのはユーノだ。
 防御魔法をいつでも使えるようにしつつ、全員をバインドによって援護していた。
 ユーノは本来バインドが特別得意という訳ではない。
 マルチタスクによる防御魔法の付与を行い、頑丈なバインドに変えているだけだった。
 だが、魔力と霊力の相性を考えてもバインドは式姫にとって厄介になっていた。
 いくら劣勢の司たちでも、少しばかり足止めができればその隙を突いて式姫を倒す事を狙っていたからだ。

「あの小僧の術で、上手く牽制になっているな」

「ええ。魔法のようだけど、なかなか便利ね」

 例えそのバインドが初見以外全く当たらないとしても、役には立っていた。
 悪路王と鈴はそれを示すように目の前に迫る式姫の攻撃を防ぎながらそう呟く。

「マーリン、貴女、何かできないかしら?」

〈この状況だと一回しかできないかな〉

「一回はできるのね。機会はそっちで見て頂戴」

〈仰せのままに〉

 この状況下でなお軽くふざけているマーリンとの会話を切り上げ、鈴は目の前の事に集中する。槍による攻撃の受け流しから、悪路王と交代。
 即座に術式を練り、その霊術で目の前の式姫達を後退させる。

「はぁっ!!」

 さらに司がジュエルシードから全員を円で囲うように砲撃を放つ。
 そこからメリーゴーランドのようにジュエルシードを回転させながら円を広げる。
 式姫達を近づけさせない牽制にしつつ、さらに後退させる。

「(帝君もなのはちゃんもやられて、牽制が心許ない……それに、二人がやられた時点で気づくべきだったな……もう、包囲されているなんて)」

 そう。司が砲撃の檻で自分たちを囲ったのは、式姫に包囲されていたからだ。
 360°全方向から襲われないように、誰かが牽制し続ける必要があった。

「(ジュエルシードの魔力も無限じゃない。私自身も疲労が溜まってくるし、牽制を突破してくる式姫を倒すのにも当然魔力を使う。……既にやられた三人も、守り続けないといけないし)」

 ただ包囲されただけならば、一度包囲を突破すれば問題がない。
 しかし、それが出来ないのは戦闘不能になった織姫、帝、なのはがいるからだ。
 応急処置で命に別状はないが、守り続けないといけない状況になっている。

「(なのはちゃんの砲撃で後衛の式姫はそれなりに倒した。前衛もいくらか倒したし、三人が戦闘不能になっても、マイナスよりだけど実質プラマイゼロ……とは、思えないかな)」

 当人たちにすれば、上手く攻防が出来ていると司は思う。
 しかし、一度視点を切り離して状況を見れば、完全に防戦一方だった。
 全ての行動に対し、受け身の態勢になり、反撃以外で式姫に攻撃していなかった。

「(このままだと、押し負ける。何か、別の行動を起こさないといけない)」

 魔力弾で牽制しつつ、司は思考を巡らせる。

「(スピードなら、フェイトちゃんと奏ちゃん。ユーノ君とアリシアちゃんに援護してもらえれば、そのスピードで式姫に隙を作れるはず。そこを他の皆に突いてもらえば……!)」

 そこで、ふと司は奥の方にいる式姫が目に入る。
 その式姫の女性は、ふわふわとした桃色の髪に、司には見えなかったが赤と青のオッドアイを持ち、眩いばかりの満面の笑みを浮かべていた。
 ……尤も、そこから感じられる霊力は恐ろしいものだったが。

「ッ……!!シュライン!!」

〈“Barrière(バリエラ)”〉

     ドォオオオオオオオオン!!

 冷たい感覚が司の背中を駆け巡る。
 その悪寒に促されるように、全員を守るように上に障壁を張る。
 その瞬間、落雷のように極光が降り注いだ。

「ぐぅううっ……!!」

 その威力に、司は驚く。
 まるで、織姫が放っていた慈愛星光にも劣らない威力。
 疲労が積み重なっているとはいえ、司の障壁でも負担がかかるほどだった。

「あれは……伊邪那美(いざなみ)!?」

「まずいな……。神話系の式姫が他にも残っている。今まで動かなかったのは、あのような威力を発揮するためか……!」

 その式姫が誰か知っている鈴と悪路王が、焦りを見せる。
 “神話級”。それは数多くいる式姫でも最上位に位置する式姫の事だ。
 その式姫は、全員が有名どころの神の分霊だ。
 神話級とあって、その力も神の如き強さである。
 一斉召喚による力の制限があったとしても、驚異な事に変わりはない。

「『っ……フェイト!奥にいる式姫の足止め……!』」

「『うん……!』」

 すぐさま、奏とフェイトが動く。
 猛スピードで式姫の間を駆け抜け、飛び抜けて力を持つ式姫の前に躍り出る。
 霊術を扱わないフェイトですらも、その式姫から力を感じる。
 奥にいる伊邪那美を含めた七人の式姫、その全員が“神話級”だ。
 建御雷も“神話級”ではあったが、フェイトによって既に倒されている。
 それでも、七人。一人一人が奏やなのはに匹敵する強さを持っている。

「……マーリン!」

〈言わなくてもわかるよ。だけど、タイミングがまだだ〉

「そう、ねっ!」

     ギィイン!!

 鈴の言葉にマーリンがそう返す。
 その間にも刀を持った式姫が斬りかかり、鈴がそれを受け止める。

「ぉおっ!!」

     ギィイン!!

「シッ!」

「そこよ!」

   ―――“弓技・螺旋”

 そこへ悪路王が斬りかかり、怯んだ所で鈴が掌底。
 吹き飛ばした所に澄姫が矢を放つ……が、それは他の式姫に防がれる。

   ―――“扇技・護法障壁”

「っつ……!耐えきれ、ない……!」

「アリシア!っ……!“チェーンバインド”!!」

 三人の連携の間は、アリシアが障壁を張って司と共に牽制する。
 しかし、障壁は式姫達の放つ矢によってすぐに罅が入る。
 咄嗟にユーノがチェーンバインドを鞭のように振り回して矢を防ぐ事で立て直す。

〈ボクを振るって。技の名は“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”。ボクが聖剣の形をしているのは、この技を放つためでもある〉

「いつ放つのかは……私が選べって訳ね」

〈そうさ。すぐには放てない。その間にタイミングを見極めて〉

 マーリンが聖剣に姿を変え、それを鈴が手に取る。
 本来の聖剣ならば、鈴が手にした所で十全な力を発揮できない。
 だが、デバイスに合わせられた今なら、放つ事が出来る。

十三拘束解除(シール・サーティーン)――円卓議決開始(デシジョン・スタート)!〉

 マーリンが放つための力を集束させる間も攻防は続く。

〈―――ケイ〉

「早い……!」

「っ、避けるのが精一杯ね……!」

 時間稼ぎに“神話級”の式姫の所に行ったフェイトと奏。
 しかし、時間稼ぎの戦いが出来ない程に、逃げの一手を選ばされていた。
 辛うじて攻撃は躱し続けているが、当たるのも時間の問題だ。

〈―――べディヴィエール〉

「っ、ぁああああっ!!」

     ギィイイイン!!

   ―――“刀奥義・一閃”

 蓮の方では、澄姫による矢の援護をもらった事で、ついに天羽々斬を倒した。
 だが、当然ながらそれで終わりではない。

「はぁ、はぁ……次です……!」

 まだ、式姫は大量にいる。
 一人を苦労して倒していては、体力が持たない。

〈―――ガヘリス〉

「っ……キリがないわね……」

『ど、どうするのよ……!』

「……諦めない。それだけよ」

 澄姫もまた、戦闘不能の三人を守るように立ちながら、弓矢で攻撃を続ける。
 葉月とは違い、依り代の澄紀への負担は紫陽よりもかなり少ないため、まだまだ戦える状態ではある。……が、これ以上の良策が浮かばずジリ貧だった。

〈―――ランスロット〉

     ギギィイイン!!

「ちぃ……!」

 悪路王の鬼産みの力も、追いつかなくなっていく。
 ジリジリと、彼らの布陣が集束するように追い詰められていく。

「ッ……これは……!」

〈―――ギャラハッド〉

 だが、その間にもマーリンの準備は進む。
 円卓の騎士の名が呼ばれる度に、承認が下りて制限が解除されていく。

「っ……!『フェイトちゃん!奏ちゃん!その式姫達を引き付けて!』」

「『わかったわ……!』」

「『うん……!』」

 鈴が何をしようとしているのか、司は感づく。
 そして、すぐに念話でフェイトと奏に伝達。
 上手く誘導して、鈴と一直線上になるようにする。

「(これだけだと、放った瞬間に避けられる。だったら……)」

 司はそのまま式姫達の動きを制限しようと考える。
 しかし、ユーノは他の式姫の足止めで手一杯。
 他の面子も動きを制限できる余裕がある訳ではない。

「『合図を送ったら、引き付けてる式姫達の左右に砲撃を撃ち込んで!散らばって避けられないように、動きに制限を!』」

 ならばと、攻撃に対する回避行動を逆手に取る。
 二筋の砲撃が放たれ、その間が当たらないのならば、回避行動は取る必要がない。
 後は司が上への退路を塞ぐ事で、回避を許さなくする。
 ……再現されただけで自分で思考しない式姫達相手だからこそ、出来る事だ。

〈―――アーサー〉

「ッ……!」

 そして、準備が整った。
 制限が十分に解除されたのを、鈴は肌で感じる。
 司もそれを見て、合図を送る。

「フェイト……!」

「うん……!」

   ―――“Fortissimo(フォルティッシモ)
   ―――“Plasma Smasher(プラズマスマッシャー)

 振り返り、同時に砲撃魔法を放つ。
 司もその後ろからジュエルシードを使って砲撃を撃つ。
 左右、そして頭上を砲撃が通り、追いかけていた式姫達はそのまま前に進むしかなくなり、完全に動きが制限された。

〈鈴!今だよ!〉

「ええ……!“約束された(エクス)……!」

 そこまでされて、鈴が理解しないはずもない。
 元より、自分の攻撃のために行動していたのは理解していた。
 故に、このチャンスを逃す事はありえなかった。

勝利の剣(カリバー)”!!!」

 星の息吹が束ねられた極光が放たれる。
 左右と上への移動を禁じられた式姫達に、それを避ける術はない。
 唯一、下……つまり地中は安全だったが、即座に掘れる訳もない。
 ……“神話級”の式姫七人は、驚異だったからこそ、ここであっけなく倒された。

「ッッ……!」

 剣を振るった鈴は、その反動で膝を付き、息を切らす。

「しまっ……!」

 そして、そこへ他の式姫が放った矢が迫る。
 攻撃の反動で動けない鈴は、それに対する反応に遅れ……。

     パァアン!!

「っ……!?」

「っぁ……!」

 その矢は、飛んできた魔力弾によって逸らされた。

「なのは!?」

「っ……まだ、終わってない、よ……!」

 それは、戦い自体はまだまだ続いている事に対してか。
 それとも、自分はまだ戦えるという意思表示か。

「なのは、無茶したら……」

「大、丈夫……援護だけだから……!」

 帝と違い、なのはは吹き飛ばされた衝撃で戦闘不能になっていた。
 傷としては、なのはの方が軽く、だからこそ戦線復帰が出来た。

「(戦線復帰は理解できる。……でも、いくら傷が軽くても、早すぎる……。何か別の力が働いている……?それとも、ただ単になのはの回復が早いだけ……?)」

 それでもなお“早い”と、アリシアは引っかかったように疑問に思う。
 だが、そんな疑問を気にしている暇はない。

「くっ……!」

 すぐさま澄姫と背中合わせになり、矢を放つ。
 鈴が“神話級”の式姫を倒したとはいえ、包囲はそのままだ。
 背後からの襲撃も警戒し、二人の弓術士が警戒に当たる。

「ッ……!」

   ―――“Prière pluie(プリエール・プリュイ)

 すぐさま司がジュエルシードから砲撃魔法の雨を降らせる。
 これにより、式姫達が襲い掛かってくるルートを制限させる。
 また、鈴の攻撃によって反応が遅れた式姫もおり、この魔法で倒す事もできた。

「っつ……!?」

 だが、それまでだった。
 まるで眩暈がしたかのように、司はふらつく。

「司!?」

「……さすがに、無茶、しすぎた……!」

 ユーノが司がふらついた事に驚く。
 そのまま膝を付いた司は、胸を押さえながら息を切らす。

「気にせず、戦って……!」

「ッ……!」

 自分を気にすることで隙を晒させる訳にはいかない。
 そのため、司は目の前の事に集中するように言う。

「(全員の身体強化に加え、連戦での天巫女の魔法の行使……これじゃ、私も優輝君の事言えないなぁ……でも……)」

 ジュエルシードの魔力は無尽蔵ではなく、負担は少なかったものの、常に全員の身体能力を上げ続け、その上で魔法を使い続ける。
 そうなれば、さすがのジュエルシードでも魔力が残り少なくなっていた。

「(まだ、やれる……!!)」

 ここで倒れては意味がない。
 そう断じて、司は立ち上がる。
 そして、シュラインから手持ちの魔力結晶を全て取り出す。

「ジュエルシード、取り込んで!」

 結晶を全て砕き、その魔力を全てジュエルシードが吸収する。
 結晶を作ったのは優輝なため、ジュエルシードの魔力を回復するには心許ない。
 だが、ないよりはマシだった。

「(範囲、指定……!魔法の対象外にするのを選んで……!)」

 即座に魔法を行使する。
 味方を巻き込まないように範囲指定をし、準備を整える。

「ぬ、うっ!?」

「く、ぁあっ!?」

 その間にも、悪路王が式姫の猛攻に押され、フェイトと奏が式姫達の攻撃を躱しきれずに防御して大きく弾き飛ばされる。

「ッ……!」

「抑えきれない!」

「このままだと……!」

 蓮も防戦一方で、援護射撃だけでは抑えきれなくなる。
 全員が一か所に集められ、尚且つ牽制で抑えられない。
 そうなれば、一斉に襲い掛かられて一網打尽にされるだけだった。

「間に合った……!」

 だが、司はそれを予測していた。
 いや、打開の手段をそれに使ったというべきか。
 包囲され、追い詰められた皆の中心に司は転移。
 魔法を、行使する。

「押し潰して!」

   ―――“pression(プレシオン)

 そして、味方を除いた全てを圧し潰す。

「ッ……!奔れ、極光!」

   ―――“Evaporation Sanctuary(イヴァポレイション・サンクチュアリ)

 重圧により、身動きができない式姫を、極光が包み込む。
 その極光の影響を、味方が受けることはなく、周囲の式姫のみに与える。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 襲い掛かってきた式姫は消し飛ばした。
 だが、式姫はまだ残っており、司はもう魔力がなかった。

「ッ……ごめんなさい……!身体強化も、ままならない……!」

 崩れ落ちるようにその場に膝をつく司。
 同時に、ジュエルシードの光が非常に弱くなった。

「そんな……」

 司のその言葉に、アリシアが絶望したように声を漏らす。
 何せ、まだ式姫は残っているからだ。
 それなのに、戦力の高い司が脱落した。
 精神的支柱の一つが崩れたも同然なため、ショックも大きい。

「とにかく、今の内に態勢を……!」

 奏がそう言った瞬間。
 遠方で、大きな炎が上がる。

「ッッ……!?」

「な、今の炎は……」

 その炎から感じられる霊力に奏たち霊術使いは驚く
 フェイトたちも炎の規模に驚いていた。

「ッ……!?何、この熱気……!?」

「アリシアちゃん!」

「させない!!」

 炎と共に熱気が放たれ、その熱気はアリシア達のところまで届く。

「くっ……!」

 熱気に驚いたアリシアをフォローするようにユーノが助けに入る。

「ごめん……!」

「気にしないで!……今ので、奥の式姫が巻き込まれたみたい。劣勢が、何とかなるかも……!」

 ユーノがそう言いながら、状況を分析する。
 その霊術は、奇しくも司たちの助けになっていた。
 奥にいた式姫は炎の熱気に巻き込まれたため、弱っていた。
 中には装備している霊力で丈夫なはずの着物が燃え、そのまま消滅する式姫もいた。

「……優輝君の方で、一体何が……」

「ッ、娘、後ろだ!」

「ッ……!?」

 だが、相手は自我と理性がない抜け殻のようなもの。
 どれほどの被害が出たとしても、攻撃の手は緩まない。
 そして、狙うのは弱っていた司。
 悪路王が事前に気づいたが、弱っていては対処が間に合わない。
 すぐに反応できない司は、せめてシュラインで攻撃を受け止めようとする。

     ギィイイン!!

「させ、ねぇよ……!」

 だが、その一撃は帝が飛ばした剣によって逸らされた。

「帝君!?傷は……!?」

「俺の特典を侮っちゃ困るぜ……“王の財宝”なんだ。一回斬られた程度の傷、すぐに治せる霊薬ぐらいあるぜ……!」

「まったく、恐ろしい効果ね。正直致命傷だと思っていたのだけど」

 同じく霊薬を飲んで回復した織姫が帝の隣に立ってそういう。

「なのは……あの茶髪のおさげの子を頼む。俺達と違って、攻撃を受けていながら霊薬を飲んでいない」

「その上で動いているのね……わかったわ。ただし、貴方も無理しないように。傷は治せても瘴気の影響が残っているわ」

「なぁに、武器を飛ばすぐらいはできるさ」

 なのはの回復を織姫に任せ、帝は武器を飛ばして援護する。
 驚いていた面子もその援護射撃で我に返り、布陣を立て直す。

「後、少し……!」

 そして、数が減った事で対処も容易となり、徐々に司達が優勢になっていく。
 そのまま勝てると、そう思った時……。

「ッ……!?」

「結界が……?」

 何かに吸い込まれていくように、結界が解除されていく。
 その様子に、なのはやフェイトなどの霊力を扱わない面子は首を傾げる。
 しかし、霊力が感知できる面子は、顔を引き攣らせた。

「あれ、は……!?」

「スターライトブレイカー……?」

 見ただけでなのはのものとは別物だとはわかる。
 しかし、“集束する”という性質において、“ソレ”は似ていた。

「くっ……!?」

「悪路王の鬼産みの力を掻き消すほど、瘴気を集束させている……。まずい、あんなのが放たれたら……!?」

 悪路王が膝をつき、周囲の鬼の妖が消え去る。
 守護者が優輝に向けて放とうとしている術の影響で、瘴気が吸収された結果だ。

「ど、どうなるの!?」

「着弾地点を中心に、かなりの範囲が死の大地と化す……!」

「具体的に言えば、京都を中心に隣接した県も飲み込むほどに瘴気の影響を受けるわ」

「ッ……!?」

 その被害を聞いて、全員が戦慄する。

「と、止めないと……!」

「もう、遅いわ。私たちではあれを止める方法が思いつかない。唯一それができそうな彼女は、今は力を使い果たしている。……止められるとしたら……」

「優輝、君……」

 止めようとするアリシアをそういって止める鈴。
 そして、司が優輝の名を呟く。

「ッ……!なんて濃密な魔力……!まさか……!?」

「優輝さん……!」

「まずい!余波でこっちにも被害が出る!防御を……!」

 まだ動ける面子で防御を固める。
 そして、守護者の術と優輝の放つ極光がぶつかり合った。









「っ……状況は……?」

「何とか、全員耐えきったようね……」

 咄嗟とは言え、その場にいる全員で障壁を張った。
 そのため、余波を何とか耐えきった。
 それでも、防ぎきった瞬間に最後の障壁が砕け散り、ギリギリだったが。

「式姫は……」

「全員、消えたみたいだな……」

 奏の呟きに、周囲を確認した帝が返事する。
 そう。今の余波により、他の式姫は消し飛んでいた。
 また、結界がなければ存在が維持できないので、その事もあって全滅していた。

「っ、そうだ!優輝君……!」

「「「ッ……!」」」

 司が気づき、その声に全員が衝撃の中心点に注目する。

「アレを、人間が凌ぎきるか……」

「優輝さん……」

「あいつ……すげぇな……」

 悪路王と帝が驚き、奏は心配した声を上げる。
 優輝が今にも崩れ落ちそうな状態になっていた。

「……嘘でしょ?」

「何が……っ、そん、な……!?」

 鈴が茫然と呟き、その視線を負った蓮も戦慄する。
 その視線の先には、自由落下して着地する守護者の姿が。

「……優輝のあの攻撃は、相殺が精一杯だったんだ……!」

「それじゃあ、守護者は……」

「まだ、戦闘が可能……!」

 ユーノの言葉にアリシアと奏が驚きながら呟く。
 守護者がまだ戦える。それは大きな衝撃だった。
 ……故に、反応が遅れてしまう。

「しまっ……!」

 守護者が優輝へと肉薄する。
 それに対し、誰もが助けに動こうとした。
 しかし、距離から考えてどうしても間に合いそうにはない。
 瞬間的な速さを出せる奏も反応が遅れたために間に合わず、転移で間に合うはずの司は魔力が尽きて転移が出来ない。















   ―――全員が、優輝の無事を諦めようとしていた。



















 
 

 
後書き
伊邪那美…神話級(UR)式姫の一人。夫である伊邪那岐に“自分が破壊して直してもらおう”という歪んだ(?)愛を持っている。回復系だが、それでもその力は非常に強い。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)…青セイバーの方ではなく、プロトタイプの方のエクスカリバー。本編ではマーリンが溜めに溜めた魔力で放っている。使い手が魔力を扱えるならば、その魔力を使用できるが、今回は持っていない鈴なため、貯蓄魔力を使った。

pression(プレシオン)…プーセと同じく“圧力”の意。ただし、こちらは最大効果範囲が狭くなっているものの、対象を指定する事ができる。


シールサーティーンについてですが、FGOと違いガレスがないのは悪路王が仲間にいるからです(利害が一致しているだけで、味方ではないため“勇者”認定されない)。また、モードレッドも相手が元々式姫だった事もあるため、除外されています。その代わり、ケイとガヘリスが加わっています。

帝が成長するにつれ、どんどん便利キャラと化していく……。王の財宝が便利すぎる……。もし、この後も戦いが続いていたら、魔力を回復できるアイテムとかも使っていたりします。 
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