夢幻水滸伝
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第五十八話 伏龍と昇龍その九
「あの人はもう」
「綾乃ちゃんはザルだからな」
幸田はその目をやや鋭くさせて綾乃の酒のことを話した。
「冗談抜きで」
「そうですよね」
「学園の中の神社の娘も凄いけれどな」
この娘もザルだというのだ。
「それでも綾乃ちゃんはな」
「別格です」
千歳もこう言うのだった、綾乃の酒のことについては。
「幾らでも飲める人ですから」
「おいらも自信あるけれどな」
「遥かにですね」
「ああ、無茶苦茶な強さだよ」
まさに無類のというのだ。
「特に日本酒を飲むっていうな」
「あのお酒が一番お好きの様ですね」
「みたいだな、こっちの世界でも日本は日本酒だしな」
この名前である。
「それで酒は関西や安芸だな」
「あちらですね、やはり」
「土地や水がいいからな、まあ今はな」
今度は豆腐を食べつつだ、幸田は言った。
「酒はなしだけれどな」
「夜もですね」
「ああ、今は相手に隙が出来たらな」
まさにその時にと言う幸田だった。
「仕掛けるからな」
「夜でも」
「だから酒はなしだ」
飲んでいては満足に戦えないからだ、幸田もそれがわかっているからこそ今は星の者達にも将兵達にも飲むことを許していないのだ。
「勝ってからだ」
「そういうことですね」
「ああ、浴びる位に飲もうな」
その時にとだ、こう話してだった。
幸田は今は仲間達と共にすき焼きを楽しんでいた、そうしつつ関西の軍勢に隙が出来るのを待っていた。
関西の軍勢と東国の軍勢はお互いに隙を伺う様にしていた、その間に中里の軍勢は相模と伊豆を完全に制圧してだった。
そのうえでだ、今度は横須賀から船で上総及び下総に攻め込もうとしていた。その横須賀の港を見てだった。
中里は強い顔になってそうして言った。
「ええ港やな」
「そうだな」
中里の隣には吉川がいる、二人で今港を見ている。軍港で多くの船が停泊しているが東国の船は木造の帆船ばかりだ。
「この港は今からだ」
「整備していってか」
「我々の船が効率的に使える港にしていく」
「そうするねんな」
「今のこの港は帆船の為の港だ」
そうした港だというのだ。
「だからだ」
「それをやな」
「軍艦が使える様にする」
「鉄のやな」
「そうだ、それを行うが」
しかしというのだ。
「今はな」
「ああ、上総と下総にな」
「攻めていくな、船に乗って」
「そやからここに軍勢を集結させてるんや」
「そうだな、では運ぶのは任せろ」
まさにそこでというのだ。
「いいな」
「頼むで」
「うむ、江戸湾の制海権も手に入れた」
「無血でやな」
「東国の水軍とは戦っていない、いや」
「東国は水軍自体がやな」
「これといってない、元々水軍には力を入れていなかった」
このことはその通りだ、幸田は水軍はこの軍を動かせる者が星の者でいないこともあり統一してからと考えていたのだ。
「民の商いや漁の船は多いがな」
「それでもやな」
「水軍はだ」
こちらはというのだ。
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