空に星が輝く様に
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286部分:第二十一話 見てしまったものその三
第二十一話 見てしまったものその三
「私も」
「シャワーかよ」
「身体は清潔にするもの」
椎名はぽつりと言った。
「特に女の子は」
「いや、そりゃ男もだろ」
「そう。けれど女の子の匂いはきついから」
「そうなのか?」
「試しに女子更衣室の前を通ればいい」
こんなことを言うのであった。
「するとわかるから」
「そんな場所の前通ったら変態って怪しまれるだろ」
「それでも通ればわかる」
「そんなに凄いのかよ」
「甘い腐った匂いがする」
その匂いはだ。そうした匂いだという。
「それはまさに毒の花」
「毒かよ」
「だから毎日シャワーを浴びるかお風呂に入る」
「女の子も大変なんだな」
「それがわかるのとわからないのとで男が変わる」
椎名はぽつりとした口調でかなり大事なことを話した。
「そういうことだから」
「そうなのか」
「そういうことじゃあ。三十分」
「ああ、わかった」
椎名のその言葉に頷いてだった。陽太郎はバスタオルやボディーソープ、それに替えのトランクス等を持ってシャワールームに向かった。
そこで身体を洗い着替えて歯を磨いてだ。そのうえで屋上に向かった。
「三十分か。丁度だな」
左手の腕時計を見ながら屋上への階段を登る。屋上への階段は暗い。学校の廊下全体が暗く教室からの灯りが目の頼りになっている。
その階段を登って屋上に出るとだ。そこには。
椎名はいなかった。そのかわりに彼女がいた。
「あっ・・・・・・」
「月美?」
「は、はい」
月美は戸惑った調子で陽太郎に応えてきた。じっと彼を見ている。
「愛ちゃんにここに来るように言われまして」
「そうだったんだ」
「シャワーを浴びて歯を磨いてからここにって」
「何だ、俺と同じか」
「同じっていいますと」
「俺も椎名にそう言われてここにさ」
「来られたんですか」
月美は陽太郎の話を聞いて言った。
「そうだったんですか」
「あいつまた仕掛けてきたな」
陽太郎はここでようやく椎名の今回の考えがわかった。
「そういうことだったのかよ」
「あの、それで」
「ああ」
「どうしましょう、これから」
少し戸惑った感じで陽太郎に問うた。
「私達」
「そうだよな。多分な」
「はい、多分」
「ここで何もしないで帰ってもな」
「駄目ですか」
「椎名怒るだろうな」
こう予想したのだ。
「絶対にな」
「愛ちゃん怒りますか」
「だってさ。俺達をここに来させたのはさ」
「はい」
「あいつの考えがあってのことだし」
「そうですよね。それは」
「だからここで何もなくて帰っても駄目だろうな」
陽太郎はここまで読んだ。そのうえで月美に対して話す。
「だからさ」
「だから?」
「折角二人になったんだし」
微笑んだ。夜の灯りの中でその微笑みが月美の目にも入った。
「暫くここにいようか」
「そうですね」
月美の微笑みも陽太郎に見えた。
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