空に星が輝く様に
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283部分:第二十話 準備の中でその十三
第二十話 準備の中でその十三
「買出しは」
「ああ、順調だぜ」
「椎名のお店からよね」
「そうだぜ。今そこにいるんだけれどな」
「どれ位ある?」
椎名はまた狭山に問うた。
「それで」
「どれ位ってか」
「そう。どれ位」
また問う椎名だった。
「どれ位あったの」
「椎名が言った分だけはあったぜ」
「そうなの」
「材料全部な」
それだけあったというのである。
「あったぜ」
「じゃあ後はそれをクラスに戻って来るだけ」
椎名はぽつりと話した。
「ただし。どれも割ったり落としたりしないでね」
「ああ、わかってるさ」
「狭山はこの場合あまりあてにならない」
ところが椎名はここできつい一言を出したのだった。
「津島と斉宮に任せる」
「ちぇっ、俺信頼ねえなあ」
「信頼はしている」
それはだというのだ。
「信頼は」
「じゃあ何でそんなの言うんだよ」
「狭山はおっちょこちょいだしものもよく落とすから」
「それでかよ」
「そういうこと」
こう話してだった。また狭山に話す。
「わかったわね」
「わかったよ。けれど何か信頼されてねえ気分だな」
「信頼しているからこう言う」
「そうなのか?」
「できることとできないことがある」
だからだというのである。
「そういうこと」
「そうか。じゃあな」
「そう。持って来て」
「わかったよ。じゃあな」
こうしてであった。狭山達とのことを確認してだった。この話は終わった。そして四組ではだ。月美が椎名の呟きのままに動いてだ。準備を順調に進めていた。
「このままだったらいけるよな」
「ああ、いけるな」
「もう開始の頃にはね」
「準備全部いけるし」
「そうそう」
「それに」
四組の面々は月美の指示や行動に満足していた。そのうえで彼女を見てだ。見直す顔をしていた。
「西堀って案外やる?」
「そうよね。ただいるだけのクラス委員って思ってたけれど」
「しっかりしているし」
「機転も利くしね」
「案外いける?」
「確かにな」
そしてこうした声は星華達の耳にも入る。彼女達も月美の指示に従いだ。そのうえでクラスの準備にかかっていたのである。
しかしだ。ここで彼女は言うのだった。
「何かね」
「そうよね、何かね」
「あまり面白くないわよね」
「そうよね」
彼女の言葉にだ。橋口達三人が頷く。四人でだった。
「あいつあんなにてきぱきと動いて」
「いつものあいつと違うじゃない」
「何か違うわよね」
三人が言う。
「折角今回あたふたするって思ってたのに」
「何よ、てきぱきして」
「思惑外れたし」
「まあいいわ」
星華はここで釈然としないながらも頷いたのだった。
「準備は順調だしね」
「それならそれでいいの」
「そうなの?」
「文化祭優先なの」
「何だかんだでお化け屋敷は大事だしね」
だからだというのである。
「それでいいわ」
「そう。星華ちゃんが言うんならね」
「それでいいけれどね」
「私達もね」
三人もそれでいいというのだった。そうしてだ。
そのまま作業を続ける。しかし星華はここで言った。
「見てなさいよ」
忌々しい顔で呟く。
「この文化祭の間にぎゃふんと言わせてやるから」
こう話してだった。その機会を探っていた。彼女はである。今本来の姿から離れだしていた。そしてそれには自分では気付いていなかった。
第二十話 完
2010・9・8
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