| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十八話 伏龍と昇龍その一

               第五十八話  伏龍と昇龍
 東国の軍勢を順調に退ける、そう言っていい形でだった。
 関西の軍勢は東国を攻めていっていた、その状況に武蔵で東国の棟梁である幸田自身が率いる軍勢と対峙してだった。
 芥川は楽し気に笑ってこんなことを言った。
「ほんなお約束の展開やな」
「今の僕等はですね」
「そうなんですね」
「そや、めっちゃ順調に攻めてるわ」
 こう佐藤兄妹に応えた、二人は芥川の後ろに控えて立っている。
「ええ具合にな、敵の反撃はあってもな」
「それを全部跳ね返して」
「攻めてますね」
「そして拠点の江戸に行く道ではですね」
「こうして対峙してますね」
「敵は江戸だけは守ってる」 
 そうなっているというのだ。
「何とかな、しかしな」
「そのお約束の展開がですね」
「それがですね」
「桶狭間を見るんや」
 芥川は日本の歴史に名高いこの戦を話に出した。
「今川の軍勢は大軍で順調に攻めてたな」
「尾張の織田信長を」
「そうしてましたね」
「そのまま織田信長を降せた」
 果たして破った後腹を切らせるつもりだったか家臣にするつもりだったかはわからない、だが少なくとも今川家はこの戦で織田信長に決定的な勝利を収め今後に大きなものを手に入れることは間違いないと思われていた。
 だがそれがだ、日本の歴史にある通りにだったのだ。
「しかしや」
「そこで、ですね」
「思わぬ奇襲を受けた」
「全てが順調にいってる時に」
「そこでいけるって思った瞬間に」
「織田信長さんはその時を待っていただがや」
 名古屋人の坂口がここで言ってきた。
「田楽狭間に今川の本陣が来てだがや」
「そや、そして雨が降ることもな」
「全部わかってて情報も全部掴んでたがだがや」
「それでや、一気にや」
「奇襲を仕掛けてだがや」
「勝ったわ」 
 芥川は坂口にはっきりと話した。
「歴史的な勝利やった」
「今川家はそれで終わったも同然だったがや」
 実際は明治の頃まで今川家は残っていた、今川義元の子氏真は武田家に敗れた後徳川家康の元に身を寄せ彼と親しくしつつ都で暮らし子孫は高家として続いたのだ。
「そうなっただがや」
「そや、万事順調に見えてや」
「それは敵の罠である」
「そうしたこともありますね」
 今度は滝沢と正宗が言ってきた、諸将は今芥川の周りに集まっている。見れば九尾の狐も共にいる。
「戦は相手があるものですから」
「それで」
「そや、そうしたことはほんまにある」
 芥川は二人にも答えた。
「だからや」
「こうした時こそですね」
「気をつけていくべきですね」
「そういうこっちゃ、特に相手が切れ者やとや」
 芥川は敵の軍勢を見た、もっと言えばそこにいる幸田達をだ。
「特に仕掛けて来るわ」
「はい、幸田さん達は味方にすれば頼もしいことは間違いないですが」
 雅も話してきた。
「敵に回すとです」
「手強いな」
「そうした方々です」
 まさにというのだ。
「ですから」
「まず間違いなくや」
「策を用意しておられますね」
「そうしてる、そしてその策はな」
「ここぞという時で」
「出してくる、こっちを順調に攻めさせてな」
「そのうえで」
 雅はさらに言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧