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真田十勇士

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巻ノ百四十五 落ちた先でその四

「我等十人今も揃っております」
「大助様もおられますし」
 望月は自分達の若い主も見ていた、彼等にとって大助は幸村と同じく主なのだ。
「皆無事に逃れらましたな」
「それもまたよいことです」
 穴山も笑みを浮かべて言った。
「あれだけの戦で皆無事だったことは」
「国松様もご無事ですしな」
 由利は彼のことをよしとしていた。
「あの方も」
「後藤殿は大和で養生されているとか」
 こう言ったのは筧だった。
「あの方も生きておられますし」
「長曾我部殿、明石殿も無事にここまで来られれば」
 根津は彼等のことを話した。
「さらによいですな」
「はい、そして我等はですな」
 伊佐は確かな声で言った。
「近いうちに」
「共に駿府まで向かい」
 清海は幸村に笑って述べた。
「次の戦をするのですな」
「その時が来れば」
 霧隠も今は確かな声である。
「参りましょう」
「殿、その時はです」
 最後に猿飛が幸村に言った。
「我等全員で参りましょうぞ」
「わかっておる、薩摩に入って暫くしたらな」
 その時はとだ、幸村は己に言う十勇士達に話した。
「よいな」
「はい、そうなれば」
「すぐにでもですな」
「駿府に向かい」
「再び戦ですな」
「次の戦は軍勢同士のものではない」
 幸村は十勇士達そして大助にこのことを断った。
「忍と忍、武芸と武芸のな」
「戦ですな」
「我等のみで駿府に入り」
「そして個々で戦う」
「そうしたものになりますな」
「左様、だからな」
 それでと言うのだった。
「お主達はそれまでに傷を完全に癒しておいてくれ」
「わかっております」
「そうさせて頂きます」
「ではです」
「その時までには」
「傷を癒しておきます」
「それがしも」
 大坂での戦を足を負傷している大助も言ってきた。
「必ず」
「頼むぞ、お主もじゃ」
「駿府にですな」
「来てもらう、駿府には伊賀十二神将もいて服部殿もおろう、しかしな」
 それでもというのだ、家康を守る猛者達が集っていても。
「我等はな」
「必ず勝つ」
「そうするの」
 こう大助に述べた。
「そしてじゃ。お主は拙者の子だから違うが」
「父上と十勇士の者達は」
「主従であるが友であり義兄弟でもある」
 そうした間柄であることも話した、尚十勇士の家族達は幸村の家族と共に落ち延びて片倉に保護されている。
「生きる時も死ぬ時もな」
「同じですな」
「死ぬ場所もな。そう誓っておる」
「だからですな」
「駿府でも死なぬ」
 誰一人として、というのだ。
「そのつもりじゃ」
「左様ですな」
「我等も人、必ず死ぬ時が来るが」
「それはですな」
「共に同じ時同じ場所でじゃ」
「だからですな」
「駿府で死ぬなら皆となるが」
 それでもというのだ。 
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