デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜
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情報交換
<フラクシナス>艦橋に転送された暁夜は、兎型人形を手に、司令席に座る琴里に声をかけると、
「おーい、持ってきてやったぞー!むっつりスケベガーぶァはッ!?」
フルスイングで投げられたチュ○パ○ャ○スが頬に直撃した。思わず、頬を突き破ると思ってしまうほどの投球スピードだった。勿論、それをやってのけたのは、むっつりスケベガールこと、五河琴里司令である。
「おま、チュ○パ○ャ○ス投げちゃダメでしょうよ!? ママから教わらなかったのかい!?むっつりスケベガーるヴァ!?」
二本目のチュ○パ○ャ○スが腹部に直撃した。物の見事にクリティカルし、体力ゲージを大幅削られる。ノリで大仰なリアクションをとり、倒れ込む。 チラッと視線を琴里に向けると、司令席と現在の位置の高さの差で必然的に、足組む琴里の縞パンが見えた。
「琴里さんよ、おパンツ見えて--」
「何か言ったかしら?」
「・・・何でもございませぬ」
三本目のチュ○パ○ャ○スを構えた琴里に睨まれ、暁夜はムクリと起き上がり、降参の意思を示すため両手を上げる。
「はぁ。 そろそろ本題に入ってもいいかしら?」
「ん? ことリンがお兄ちゃんのパンツをクンカクンカしてるかしてないかの話?」
「違うわよ、バカ!!」
ブンッ!!
と、三本目のチュ○パ○ャ○スが放り投げれられた。 が、
「甘いわ!」
べシっ!
と、手刀でチュ○パ○ャ○スを叩き落とした。ちなみに、痛かったことは言うまでもない。
「くっ!弾くんじゃないわよ!!」
「フッ、フハハハ!!3度も同じ目は喰らわぬわ!!」
勝ち誇った笑みを浮かべる暁夜。 涙目なのは内緒である。
「ぐぬぬ。 もう許さないわよ!」
「かかってこいよ! むっつりスケベガール!!」
両指の間に三本ずつチュ○パ○ャ○スを挟み構える琴里と、兎型人形を手に煽る暁夜。 そんな一触即発の空気の中、令音の軽い咳払いが聞こえた。
「落ちつきたまえ、二人とも」
「そ、そうね。ありがとう、令音」
「も、申し訳ありませぬ」
令音の言葉に、一瞬にして、一触即発のムードが霧散した。流石は、大人の女性だ。思わず惚れてしまいそうになるが、折紙に殺される気がしたので惚れるのはやめた。
「今度は話の腰おらないでよ? つぎ折ったら、上空に転送するわよ」
「オーケイオーケイ! もう話は折らない。ただ弄るのはオケ?」
「それもダメよ。というか何もしないで」
「・・・ぜ、ぜん・・・ぜんし・・・善処します」
苦渋の決断と言わんばかりの表情で頷く暁夜。それに対し、琴里は気にすることもなく話を始める。
「その人形をこちらに渡してくれないかしら?」
「理由を求めます」
「それもそうね。 理由もなく渡せというのはおかしいわね」
暁夜の言葉に頷き、琴里はクルーにモニターをつけるよう指示する。 暫くしてモニターが映り、<ハーミット>の姿が映し出された。背景からして昨日のデパートの中だろう。
「<ハーミット>がどうかしたのか?」
「ええ。 あなたが持ってるその人形は彼女の物なのよ」
「・・・成程な。 だから返してくれと?」
「ええ、そういうことよ」
兎型人形をブラブラと左右に振りながら尋ねると、琴里は頷く。
「だったら、最初から構成員の方達を呼ばずに俺に連絡すればよかったのに」
「ふん、嫌よそんなの。どうせ、アンタに連絡しても素直に渡してくれるわけないわ」
「おいおい、俺だって人の心ぐらいあるんだぜぇ? まぁ、ことリンの言ってる事は合ってるけど」
「予想通り過ぎて、反応に困るわ」
否定することもなく素直に認める暁夜に、額に手を当てる琴里。
「それで? この人形で<ハーミット>を誘き寄せて、ザクッてか?」
暁夜は見えない空間に、剣を突き刺す動作をしながら、尋ねる。
「アンタ達、野蛮人と一緒にしないで。私達、<ラタトスク>は精霊を殺さずに救うのがモットーよ」
「ふむ。 てことはまた士道を使って、精霊の力を封印か? 十香の時みたいに」
「ええ、そうよ」
「ひとつ質問していいか? これに答えてくれたらこの人形を渡してやる」
先程まで巫山戯ていた暁夜がいきなり、真面目モードになる。
「いいわ。 何が聞きたいの?」
「士道について・・・と言うより、精霊の力を封印するのは士道にとって安全なのか?どうか?についてだ」
「その安全というのは封印する際の事?それともその後?」
「出来れば両方聞きたい」
「別に構わないわよ。但し、私からもあなたに聞きたいことがある。まぁ、その件はこの話を終わらせたあとにじっくり聞かせてもらうわ」
琴里はそう言って、説明を始めた。
「まず結論から言うと私達も精霊の力を封印する術をなぜ士道が持っているのかは知らないわ。で、封印方法ってのが、精霊とのキスよ」
「それで、精霊に恋をさせる、って言ったのか、あん時」
「あら、ちゃんと覚えてたみたいね。ウチのバカ兄と違って優秀ね」
「そういうのいいから、話進めろ」
暁夜はそう話の続きを促す。
「次に、封印後の話だけど。 封印された精霊の力は士道の中にあるわ」
「成程な。どおりで、十香から精霊の力を感じないわけだ」
と、納得する暁夜だが、とある疑問点に気づき、
「ちょっと待てよ。 士道に封印されたって事は、今のアイツは天使を顕現できるって事か?」
琴里に尋ねる。
「悪いけど、その点に関しても不明よ。ただ、監視はしてるから士道が天使を顕現させたら、あなたの憶測通りってことでしょうね」
「成程な。 悪いが、もうひとつ質問していいか?」
「いいけど、こちらの質問も2つにさせてもらうわ」
その答えに、了解し、暁夜は疑問を投げかける。
「万が一、封印した精霊の力が暴走したらどうする?」
「・・・その時は、適切な対処をするわ」
「--殺すってことか?」
暁夜の言葉に、<ラタトスク>クルー達が、驚愕に顔を歪める。それに対し、琴里は覚悟しているのか、苦しげな表情で頷く。
「その役目、俺に任せてくれないか?」
「・・・は? 何言って--」
「何って、士道を殺す役目だよ。俺なら殺しなんて慣れてるからさ、罪悪感感じねえんだ」
「でも・・・あなたは・・・それでいいの?」
琴里が悲しげな瞳で暁夜を見つめる。
「あぁ、平気だ。お前は罪悪感なんて抱かなくていい。妹に実の兄を殺せなんて言えるか? 俺は言えない。それにさ、アイツは俺の親友だ。だったら、俺がアイツを救ってやらねえと」
そう言って、笑顔を浮かべる暁夜。 傍から見ればサイコパスのように思われるかもしれないが、琴里は気づいていた。
彼は、自分に兄を殺させないために、汚れ役を憎まれ役を買って、無理矢理笑顔を浮かべているのだと。
「・・・分かったわ。 あなたに任せる」
琴里は、視線を暁夜に向けず、下唇を噛み締めて呟いた。
「うっし。 じゃあ、次はことリン、お前の質問だ」
重苦しい空気を取っ払うように暁夜は告げた。その声に、琴里は頭を振って、いつも通りの司令官モードに戻った。 足を組み直し、チュ○パ○ャ○スを舐めながら、口を開いた。
「私からの質問は2つ。 リンレイ・S・モーガンの件と、この映像についてよ」
そう告げると共に、モニターに映像が映し出される。 それは、黒紫色の片手剣に紅色の光粒を収束させている暁夜と、闇色に彩られた柄に鍔、そして刀身を持つ片刃の巨大な剣を握る十香の姿だ。
(・・・撮られてたのか)
暁夜は頬をポリポリとかいて、胸中で呟く。
「その様子だと、言いたくない事かしら?」
「あー、まぁ、アレ使ったのはDEMにいた頃以来だからな。それにいつかはバレるって分かってたし、教えてもいんだけど、内緒にしてくれる?」
「万が一、誰かに話したら?」
「んー、DEMを敵に回す事になるかな」
暁夜はケロッとした態度で恐ろしいことを告げる。
世界規模で事業展開を行っている大企業、DEMに敵対するということは、世界を敵に回すようなものだ。それは琴里達も避けたい展開だ。
「オーケー。 分かったわ」
琴里は、チュ○パ○ャ○スの棒をピコピコさせながら頷く。 それを確認した後、暁夜は説明を始めた。
「まずあの力は精霊と同じ天使だ」
「せ、精霊と同じ!?」
クルーの一人が大声をあげるが、琴里はそちらをひと睨みして黙らせる。
「続けていいか?」
「ええ、続けて」
「あの天使は【明星堕天】。 識別名は【アヴェンジャー】。 因みにこれを知ってるのはDEMの社長と秘書に数名、そしてお前らのみ」
「アヴェンジャー・・・『報復者』か」
暁夜が告げた識別名に、令音が自身の顎に手を当てて呟いた。まるで一言一言を記憶に刻み込むように。その仕草に暁夜は既視感を覚えるが、人違いだと思考を切り替えた。
「ちょっと待って。あなたが精霊? じゃあ元から人じゃなかったってこと?」
「それは違う。 俺は元々お前らと同じ人間だ。 要するに十香や<ハーミット>みたいに元から精霊の奴と違って、俺は半分人で半分精霊と言ったところだな」
「ふむ、半人半霊か。興味深いね」
「でもおかしくないかしら? どうして精霊の力を得たあなたが精霊を憎むの? 一応、同胞ってことじゃないの?」
琴里がそう尋ねる。 確かに疑問だろう。 人であり精霊である暁夜が、なぜ精霊を殺そうとするのか? というのは。
「それってさ、言わなきゃダメか?」
「・・・どうしても言いたくないことかしら?」
「あぁ、特にお前には」
暁夜は琴里を見て、頷いた。
「はぁ、分かったわ。 じゃあ、彼女のことを教えてくれる?」
「大した情報はないけどいいか?」
「別にいいわよ。 私達よりは知ってるはずだから」
「分かった」
その後はリンレイについての情報提供だ。とりあえず説明したのは、
『対精霊特化のCRユニットを持つ』
『敵味方関係なく邪魔するもの全てを攻撃する』
『暁夜が対人戦で勝ったことは無い』
の三つだ。
「なるほどね。あんたよりもバケモノだって事は把握したわ。もしかしてDEMにはアンタらみたいな化け物しかいないの?」
「あー、と。 それは残念ながら否定できない」
暁夜は視線を横に逸らして苦笑いを浮かべる。
「とりあえずこれで聞きたいことは終わりよ」
「じゃあ、約束通り人形返すわ」
暁夜は右手にはめていた兎型人形を外し、琴里に投げた。それをキャッチして、
「ありがとう、暁夜」
琴里はお礼を言う。
「お礼はいらねえよ。俺も知りたいこと教えて貰ったし、元々、折紙に内緒で捨てようと思ってたからな」
「そう、それなら良かったわ。 神無月、転送の準備お願い」
琴里は横で直立不動で待機する神無月に声をかける。
「了解しました、司令!」
神無月は敬礼した後、部下に転送の準備をさせる。 クルー達が複雑そうなコンソールを操作し、転送装置が起動させた。
「準備完了。 いつでもいけます!」
「分かったわ」
指示を待つクルーに首肯する。その間に、暁夜は転送装置の中心に立つ。
「出来れば家の前で頼むわ」
転送座標を伝えて、待つこと数分、暁夜の身体を淡い光が包み込んだ。そして--次の瞬間には、扉の前に立っていた。オマケに騒がしい警報が鳴り響いている。
「精霊出てくんの早すぎだろ」
暁夜は後頭部を掻き、そう文句を垂れると扉が内側から開き、
「・・・むぎゅ!?」
「・・・うっ!?」
胸あたりから可愛らしい声と衝撃が同時にきた。 不意打ちということもあり、倒れそうになるが、なんとか踏みとどまる。そして、視線を下に向けると、視界一面に銀色の髪が見えた。その銀髪がサラリと動き、それに合わせて胸あたりに埋もれていた顔があらわになる。
「・・・暁夜?」
アイドル顔負けの無表情銀髪美少女がそう言葉を零した。
「よ、よぉ。 お、おり、折紙さん」
吐息のかかるほどの顔の距離にドキドキしながら、暁夜は言葉を返す。
「そうえばこんな所で止まっている場合ではない」
「は?」
意味不明な折紙の言葉に、はてなマークしか浮かばない暁夜。
「空間震警報聞こえなかったの?」
「あぁ、そういう事ね」
「早く現地に行く」
「あ、ああ」
暁夜の手を引っ張り、折紙は目的地へと走り始めた。
同時刻の天宮駐屯地第二格納庫。
「よーし、準備完了、っと」
CRユニット<モルドレッド>を装着したリンレイは右手に<クラレント>を握り、告げる。
「気をつけてね、リンレイ」
「うん、任せて。 シス」
格納庫の扉を開けたシスがリンレイにそう声をかける。
「うん、じゃあ、まぁ。 精霊ぶっ殺しに行くとしますか!」
と、口元に獰猛な獣の笑みを刻み、血に飢えた獣のような瞳を妖しく光らせながら、<ハーミット>が現れたという出現地へと飛び立っていった。
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