空に星が輝く様に
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235部分:第十七話 姿の見えない嫉妬その八
第十七話 姿の見えない嫉妬その八
「冗談か本気かわからないところがあるからな」
「そうよね」
狭山のその言葉に津島も頷く。
「今はどうなのかしら」
「半分本気で半分冗談じゃないのか?」
陽太郎はすぐにこう分析した。
「流石に全部本気で自分を美少女なんて言わないだろ」
「まあそんなところだろうな」
「そうよね」
狭山と津島も陽太郎のその分析に頷いた。
「椎名はそこまで言わないしな」
「自惚れ屋さんでもないし」
「自惚れたら足元すくわれるから」
また言う椎名だった。
「それは気をつけてる」
「じゃあやっぱり半分冗談なんだな?」
「そのつもり」
陽太郎の問いにもこう返した。
「だから安心して」
「安心するな。それで安心するのはこのことだけじゃないんだな」
「メインのことは一番安心していい」
その運動会のことであるのは言うまでもない。
「ちゃんと。優勝するから」
「よし、それじゃあな」
「頑張るわよ」
狭山と津島は早速乗り気になっていた。
「ぶっちぎりで優勝してな」
「文化祭につなげるわよ」
「文化祭のことも考えてあるから」
やはり椎名は軍師だった。冷静に先の先を読んでいた。
「やっていこう」
「そういうことでね」
赤瀬は頃合いを見計らって絶好のタイミングでこう述べた。
「皆、頑張ろう」
「ああ、よくな」
「アクシデントが起こった場合も考えてるけれど」
最後にまた椎名が皆に言ってきた。
「それでも各自怪我には気をつけて」
「それはか」
「大会が起こる前も起こってからも」
言うのは両方の時だった。起こる前だけではなかった。
「一番痛いのは自分だから」
「だから怪我には気をつけようね」
赤瀬もそこは注意した。
「そういうことでね」
「よし、それじゃあ」
「怪我に気をつけてそれで」
「頑張るか」
「そうよね」
皆意気あがった顔で笑顔で頷き合う。三組は椎名の用意周到な策略というか根回しと言葉のやり取りによりだ。まとまってもいた。
しかし四組はだ。全く違っていた。
星華が勝手にだ。こんなことを言ったのである。
「だから。これだけじゃなくてね」
「他にもですか?」
「これとこれにも出るわよ」
いつも横にいる椎名を他所にだ。こう月美に彼女の机の前に立って言うのである。それもかなりぞんざいで横柄な口調でだ。
後ろには橋口達もいる。そのうえで無言の圧力を月美に仕掛け同時に星華を援護していた。月美には到底守れない状況だった。
「いいわね」
「けれど佐藤さんって」
「何よ」
「もう三つの競技に出てますよね」
指摘するのはこのことだった。
「しかも最後のは」
「何なのよ」
「あの、マラソンですけれど」
月美は自分の席に座ったままだ。そのうえで少し怯えた感じでだ。自分の前に両手を腰に置いて立つ星華に対していたのである。
「いいんですか?最後にですけれど」
「いいのよ」
月美はここでもぞんざいな口調だった。
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