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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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重なる面影

 
前書き
もう少し早く出せるかと思っていたのに、結局はこの時間になってしまうのか。
でも予想よりも話が進んでいる現在。このストーリーが終わったらこの小説ともお別れになるのでしょうか?それともオリジナルで何かやってもいいのかな? 

 
「レオンが・・・」

ヨザイネからティオスの正体を聞かされたシリルの心は揺れていた。プルプルと震えている彼を見て、セシリーはアタフタしている。

「レオンがティオスのわけないだろ!!」

信じたくない想いと、もしかしたらという想いが交錯している。そんな彼が本来の力を出せるわけもなく・・・

「本当は気付いていたんでしょ?心のどこかでは」

鉄拳を振りかざそうとしたシリルを足蹴にするヨザイネ。バランスが崩れた彼にさらなる追撃を喰らわせる。

「母なる大地よ、真実に背けるドラゴンに天罰を!!」

突如訪れる大きな揺れ。シリルはそれに立っていられなくなり膝をつく。

「飛べない自分を恨みなさい」
「!!」

飛び上がったヨザイネは体を一回転させ動けなくなっているシリルの後頭部にかかと落としを喰らわせる。

「ガッ!!」

高いところからの勢いのある攻撃に地面にめり込む。続けてヨザイネは少年に一撃を食らわせようとしたが・・・

「や~!!」
「キャッ!!」

間一髪でセシリーが体当たりをし、彼女の流れを断ち切る。

「大丈夫~!?シリル~!!」

心配そうに近寄ってきた友。起き上がった少年はその彼女を押し退けた。

「邪魔しないでくれ、セシリー」
「でも~!!」

いつもの彼ではない。感謝の言葉を述べることもなく、淡々としている彼は明らかに普段の少年ではない。

「大丈夫。もう立ち直った」

そう思っていたセシリーだったが、シリルの横顔を見て安心していた。態度こそ普段とは違っていたが、その真剣な表情は彼そのもの。先程の冷静さの欠けた行動をまたやるようなことはないと、確信を持った。

「ふふっ、自分を保つために必死ね」

そんな彼を見た少女は小さく微笑んだ。見下すようなその視線に、猫耳の少女の背筋が凍り付いた。

「ここからどうなってしまうのかしら、あなたの心は」


















「アイリーン、これは陛下への裏切りということでよいのか?」

その頃、傷だらけのアイリーンが相対しているオーガストは、怒るわけでもなく静かに問い掛けた。

「・・・ごめんなさい。でも・・・」

ボロボロで立っているのもやっとはずの緋色の女王。しかし、彼女は痛む体にムチを打ち、仁王立ちする。

「私はこの子を守ります。命に代えても」
「母さん・・・」

かつてドラゴンたちと戦うことを決意した時のように、背筋の伸びた彼女の姿は凛々しかった。それに見惚れるエルザとウェンディ。その姿にオーガストは無表情でさらに問いかける。

「親は子を愛し、子は親を愛する。それがお主の答えか?」
「えぇ、そうですわ」

長いすれ違いの期間を経てしまった(アイリーン)(エルザ)。それをようやく、こんな形にはなってしまったがわかり合うことができた彼女には、怖いものなど何もない。

「そうか・・・」

愛情が芽生えた親子の声を聞いたオーガストは、唸るように呟く。その姿に覇気は感じ取ることができない。

「ならば、なぜ陛下の子は愛されなかったのか」

その問いを出された瞬間、三人は固まった。彼のその言葉の意味が全く持ってわからなかったからだ。

「ティオスのことかしら?オーガスト」

陛下の子と言われて真っ先に思い浮かぶのはティオス。エルザとウェンディもマカロフから聞かされた情報しかないため、彼のことがゼレフの子供だと思っていた。

「そなたは子供がいないからわからないかもしれませんが、あれは親なりの愛情なのよ。優しい陛下も――――」
「違う」

長きに渡り離れていたとはいえ、子への愛情は持っていたアイリーンがゼレフのティオスへの対応について話そうとしたが、オーガストが口を挟んだ。

「ティオス・・・ラーケイド・・・二人は陛下の子ではない」
「「「!!」」」

オーガストの突然の宣言に驚愕の三人。言葉を失っている彼女たちに、オーガストはなおも続ける。

「ラーケイドは陛下の作り出したエーテリアス。ティオスはRシステムによって蘇ったことにより、陛下に近い魔力を手に入れただけ」
「Rシステムだと?」

かつてジェラールが使用したその魔法によりティオスが生まれたと聞かされたエルザは唖然とする。Rシステムはゼレフ書の魔法・・・つまり、エクリプスと同様に使用者はゼレフに近い魔力が体内に残留してしまう。
それがティオスをゼレフの子と勘違いされる大きな原因。

「じゃあ、あなたが言うゼレフの子供って・・・」

これにより彼女たちは彼が誰のことを言っているのかわからなくなり、完全に呆けてしまう。悲しそうなオーガストの表情に、少女たちは気が付かない。

「知らずとも良い。私だけが知っていればそれで」

そう言って杖を構えるオーガスト。アイリーンは彼に攻撃させまいと魔法を放つ。

「大地への付加(エンチャント)。だが、もう力は残っていないか?」
「!!」

地面が削れ落ちたが、それを難なく回避する。オーガストはそのままアイリーンに突進すると、彼女の腹部に杖を突き立てた。

「ガハッ!!」
「母さん!!」

既にグロッキーだったアイリーンにはこの一撃で十分だった。突き飛ばされ倒れ込んだアイリーン。オーガストは彼女の脇を抜けると、エルザにそのまま突撃する。

「親が子を失えば、どうなってしまうのか」
「やめて・・・」

動くことができないエルザ。アイリーンももう助けられる距離にいない。

「親と子の愛など」
「エルザ!!」
「エルザさん!!」

エルザ目掛けて放たれた杖。それは彼女の肉体を貫こうとした。

「はぁ!!」
「!!」

だがそれは、一人の青年の手によって阻まれた。

「また貴様か」

青色の髪をした顔にタトゥーのある青年。彼は傷だらけの肉体で敵を睨み付ける。

「俺にできるのは、光を守ること」


















「チッ、また違う展開になって来やがったな」

立ち上がり苛立ちを隠すことのないティオスは、砂を蹴りあげる。

「頼むから裏切らないでくれよ、ヨザイネ」

そう言うと彼は、多くの魔導士たちが集まる、自分の知る未来と変わり始めている大地へと向かった。



















ドゴォン

ぶつかり合う悪魔と竜。彼らはお互いに口を利くことすらなく、ただひたすらに技を繰り出していた。

「スティングくん!!起きてください!!二人を止めて!!」

グレイとローグ・・・仲間同士の潰し合いを見てもどうすることもできないレクターは、もう息をすることもない一番の友人に必死に助けを求めていた。

「僕じゃ二人を止められない!!スティングくんしかいないんです!!」

力のない自分では二人の間に割って入ることなど不可能なのはわかっていた。だからこそ、二人をよく知る人物に助けてほしかったが、そんなものはもういない。

「誰か・・・誰か助けて!!」

みるみる削れていく二人の肉体。このまま何もできずに見ていることしかできないのかと、レクターはひたすらに叫び続けるしかなかった。

















「大丈夫?ソフィア」

その頃、カグラに言われるがままにリュシーを抱え戦場から離れたソフィアは、動くことのない肉親に涙を溢している。

「お姉ちゃん・・・」

普段の彼女からは想像もできない落胆ぶりに、ラキはなんて言葉をかければいいのかわからない。

「あんたたち、ここで何してるの?」

そこに通りかかったのはルーシィとメルディ。その背中に背負われているナツを見たラキは目を見開いた。

「ナツ!!どうしちゃったの!?」

慌てて駆け寄るが、その少年は完全に息の根が止まっている。それにより、懸命にこらえていたものが崩壊してしまった。

「なんで・・・なんでこんなことにならなきゃならないの・・・」

ここに来るまでに、多くの人の死を見てきた。その被害はどんどん大きくなり、今では誰が生きているのかすらわからない。

「もうやだ・・・こんなのもうやだよぉ!!」

絶叫するソフィア。その一声でルーシィも、メルディもハッピーも、全員がその場に崩れ落ちてしまった。

「どうすればいいの・・・」
「私たちに・・・勝ち目はないの?」

立ち上がるかとすらできない少女たち。フィオーレに押し寄せる絶望の渦を、食い止めることができるものは果たして現れるのだろうか。

















頬を膨らませて敵に狙いを定める。全身から溢れ出る高い魔力は、少年の中では過去最高のものであろう。

「水竜の・・・咆哮!!」

地面を削り取るほどの威力のある魔法。本来であればそれは誰にも防ぐことなどできるわけもないはず。しかし・・・

「残念ね、どの魔法も私には通じない」

ヨザイネはそれを片手で防いでしまう。

「私には、人間の魔法は通じないの」
「そうかよ・・・だったら・・・」

目の輝きがさらに増していく。それによりドラゴンフォースの際に全身を包み込む魔力がさらに増幅した。

「ドラゴンの力で挑むだけだ!!」

溢れている魔力がまるでドラゴンのような形へ変化している。それを見た少女は驚いてはいたものの、翼を羽ばたかせ上空へと回避する。

「逃がすかぁ!!」

急ブレーキで立ち止まったシリル。彼は空にいる敵目掛けて大地を蹴り、飛び上がった。

「無駄よ。人間が私にダメージを与えることはできない」
「そんなの・・・」

全身が水で包まれていく。彼は重力に負けることなくどんどんそのスピードを増していく。

「やってみなきゃわかんねぇだろ!!」

全身全霊をかけた頭突きが突き刺さる。ヨザイネはそれでも平然と・・・

「ぐっ!!」

していることができず、地面へと急降下していく。

「この・・・」

地面にぶつかる直前で体を半回転させて事なきを得る。だが、彼女はシリルを見て不思議そうな顔をしていた。

「なんで・・・普通の人間のあなたが私に・・・」

彼女はオルガやルーファスの魔法を受けてもまるで平気だった。そのダメージがなかったかのように反撃をしていたはずの彼女は、シリルからの攻撃で自らの肉体にダメージを受けたことに動揺している。

「自惚れるなよ。俺は今まで・・・」

地面に着地したシリルはその付近にいたヨザイネに突進を試みる。

「色んな強い奴を倒してきた!!」
「キャッ!!」

捨て身のタックルに宙を舞うヨザイネ。彼女は地面を転がったものの、すぐさま立ち上がった。

「私は・・・天界から追放された堕天使・・・人間の攻撃など効くはずがないのよ!!」

想定外の出来事に再度魔法を繰り出すヨザイネ。それをシリルは片腕でガードしてしまった。

「バカな・・・なんで・・・」

さらなる動揺が彼女を襲う。自分にダメージを与えてくること、さらには自分の攻撃を防いでしまう彼に恐怖すら覚えてしまった。

「大した設定だな。そんなので勝てると思ってるのか?」

ニヤっと笑みを浮かべるシリル。調子が出てきた相棒の姿を見ていたセシリーは、思わず大盛り上がりだ。

「設定?ふざけたこと言わないでくれる?」
「「??」」

悪ふざけでそんなことを言っているのだと思っていたシリルとセシリー。しかし、彼のその一言でヨザイネの顔色が変わった。

「私は天使だったのよ。400年前までね」
「あ・・・そうですか・・・」

なおも狂言を続けるのかとイライラしてきたシリルは吐き捨てるようにそう答えた。そのまま彼はヨザイネへと突撃する。

「そんじゃあ、天使は天国にでも帰れよ!!」

拳を構えて突進。ヨザイネは自分の言葉を信じないシリルに目を細める。

「天国じゃなく、天界よ、おバカさん」

その拳を払い落とし地面に叩き付けられるシリル。ヨザイネは彼を踏みつけようとするが、彼は間一髪で回避した。

「しぶといわね、勝てもしないのに」

イライラが立ち込めていくヨザイネ。その言葉を聞いたシリルは立ち上がり再度突っ込む。

「勝てるかどうか決めるのはお前じゃない!!俺の心が決めるんだ!!」
「!!」

両腕にドラゴンの翼のように魔力を高めていく。その姿を見たヨザイネは目を見開いた。

「なんで・・・」

迫ってくる少年の目が、ある人物と重なる。彼女がもっとも愛したその青年と、まるでそっくりだった。

「水竜の翼撃!!」
「うわあああああ!!」

少年の動きに気を取られていたヨザイネはそれを交わすことなどできなかった。宙に打ち上げられた彼女は体勢を整えることもできず叩き付けられる。

「なんで・・・どうしてなの・・・」

涙声の少女にギョッとする。倒れたままの少女は目元を押さえながら、懸命に嗚咽を抑えている。

「なんであんたみたいなドラゴンが・・・あの人と同じ目をしているの?」
「あの人?」

目頭を熱くしたままシリルを見つめるヨザイネ。その目に映る少年に、重なる水色の髪をした最愛の男性。

「あんた・・・名前は?」
「シリル・・・シリル・アデナウアー」

その名前を聞いた瞬間、彼女は驚愕した。彼をドラゴンの子供としか認識していなかった彼女は、彼の名前など気にも止めていなかったからだ。

「あの子と同じ名前・・・どうして・・・」

体を起こした彼女は、シリルを見据えたまま固まってしまう。そして、次に放たれる名前に、シリルもセシリーも目を見開くことになる。

「どういうことなの、ヴァッサボーネ」
「「え?」」

突然出てきた父の名前。なぜ彼女が彼の父の名を口にするのか、少年たちは困惑するしかなかった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ここで出てくるヴァッサボーネ。もう何がなんだかわからなくなっていますね。
次はヨザイネの過去をやっていこうと思います。
それが終わるといよいよティオスを倒すためのキーとなる展開が出てきますよ。さぁ、彼を倒すのは果たして誰なのか? 
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