夢幻水滸伝
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第五十六話 幸先よい勝利その七
「そうしてね」
「承知させてもらった」
有島も応えそうしてだった。
箱根で戦う東国の軍勢は退いた、その退き様は見事なもので怪我人も助けそのうえで敵に追撃を許さないものだった。
箱根での戦は関西の勝利に終わった、橋頭保を確保した関西の軍勢はそのまま箱根を越えてだった。中里も空船で箱根を越えた。
そうしてだった、中里は全軍にあらためて話した。
「ほなこっからや」
「伊豆、そして相模にでごわすな」
「そや、攻め込んでいくで」
こう言うのだった。
「そうするで」
「鎌倉、横須賀、横浜、川崎を占拠していくでごわすな」
「そや、こうした場所を占領するとな」
「東国の国力はかなり落ちるでごわすな」
「そや、ただ土地を占領するだけやない」
こうした場所を占領していくことはというのだ。
「東国の国力も奪っていく」
「その意味もあるでごわすな」
「そやからどんどんや」
「そうした場所を占領していくでごわすな」
「そうや、ただ箱根は越えて今は皆疲れてる」
将兵の疲労、このことを考慮してのことだ。
「今日はゆっくり休もうな」
「それではでごわすな」
「ああ、飯食うて酒も飲んで」
この時も酒は出るのだった、関西の軍勢にとっても酒は切っても切れないものになっていた。
そしてだ、今回はそれに加えてだった。
「風呂にも入るんや」
「箱根の温泉でごわすな」
「そや、お湯にも浸かってな」
「身体の疲れをいやすでごわすな」
「そうしてや」
「あらためて進軍でごわすな」
「そうしてくで、あと今日の夕食は関西の誇りや」
中里は笑ってそちらの話もした。
「お好み焼きとたこ焼き、焼きぞばや」
「そういえば」
美鈴はその三品の料理を聞いて言った。
「これまで私達もそうしたものは」
「食べてなかったやろ」
「関西の粉ものは」
「それでや、今晩はな」
「お好み焼き等ですね」
「ああ、ただ井伏と山本のリクエストでな」
ここで中里は少し苦笑いになってこうも言った。
「あれや、お好み焼きは両方用意する」
「大阪のものと広島のものを」
「どっちもな」
「どっちでもいいと思いますたい」
純奈はお好み焼きについてはこう述べた。
「うちはどっちでも好きですたいからな」
「それは自分が九州人やからでな」
「こだわりがあるとですね」
「そや、お互いな」
中里は純奈にこのことも話した。
「関西は関西でな」
「山陽は山陽で、ですと」
「こだわりがあるんや」
「何かそこ難しいね」
雪路もこのことについてはどうかという顔で言った。
「お好み焼き文化っていうのかね」
「それがほんまにあってな」
「お互い引けないんだね」
「そや、まあ僕も実際広島の方も嫌いやない」
ここで広島焼きと関西でのそちらのお好み焼きの呼び方を言わなかったのは中里の井伏達への気遣いである。
「あれはあれで美味いわ」
「そうたいね」
「私もどっちも好きだよ」
純奈も雪路もこう中里に応えた。
「勿論焼きそばもね」
「そっちも好きとよ」
「たこ焼きがいいですね」
織田はこちらを食べたいと言ってきた。
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