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真田十勇士

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巻ノ百四十三 それぞれの行く先その二

「やはり」
「そうか、ではな。おそらく真田は生きておる」
「真田が」
 秀忠は家康のその言葉に眉を動かした、そのうえで父に怪訝な顔で淘汰。
「あの者は確か」
「うむ、昨日討たれてな」
「父上が首実検をしたと聞いていますが」
「確かにわしはあの者の首を見た」
「影武者だったのですか」
「いや、見た時に半蔵に言われた」
 彼にというのだ。
「あの首は偽物じゃとな、そして埋めた首を後で確かめさせたが」
「その首は」
「消えておった、今朝確かめたがな」
 それでというのだ。
「首は消えておったのじゃ」
「それでは」
「あの者の術でな」
 それによってというのだ。
「分身を出しておったらしい」
「そしてその首は」
「分身の一つであってな」
 それでというのだ。
「真田はおそらくな」
「まだ生きていますか」
「そうじゃ」
「左様ですか」
「敵を利用するのも戦で政じゃ」
 ここで家康の目は老獪な光を出した、その目で秀忠に語った。
「それでこの度はな」
「真田を使ってですか」
「右大臣殿を助命するか」
「あえてですな」
「そうじゃ、これでどうじゃ」
「わかり申した、では千は」
 秀忠は娘のことを述べた。
「こちらで引き取り」
「ことの次第は後で話してな」
「そうしてですな」
「千は千で生きてもらってじゃ」
「右大臣殿もですな」
「生きてもらう」
 そうしてもらうと言うのだった。
「おそらく薩摩に逃れるであろうが」
「薩摩のこのことは」
「あえて見逃す」 
 知らぬ振り、それをするというのだ。
「そのことはな」
「そうされますか」
「お主もそれでよかろう」 
 家康は秀忠に彼の考えを問うた。
「そうしていいか」
「はい、もうそうなればです」
「右大臣殿には何の力もないな」
「死んだことになれば」
 公にだ、そうなってしまってはというのだ。
「完全に無力です」
「ではな」
「それではですな」
「そうじゃ、もうそこまでして命を奪わずともな」
「よいです、それがしもです」
 秀忠にしてもだった。
「無闇な血は好みませぬ」
「戦をすればどうしても血は流れる」
「しかしそれはです」
「最低限でよい」
「はい、もう血生臭いことはせぬことです」
「天下が泰平になればな」
「尚更のこと、ですから」 
 それ故にとだ、秀忠も言うのだった。
「もうです」
「右大臣殿が死んだことになればな」
「豊臣の血は絶えますし」
「子息がおるが」
 家康は国松のことも話した。
「そちらもな」
「死んだということすればよいですな」
「それでよい、わしは治部の子も殺さなかったな」
 仏門に入れてそれでよしとした、この時本多正信が石田は家康に天下を取らせた功績があると言って彼の子の助命を願ってもいる。 
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