『組長と零』
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『脱走』
監禁が空けた。と、いっても実際は許可がないと学校すら行けない。だから私はいつでも夜中に全力疾走の脱走をする。
監禁中は、養父に縛られていたりして身動きの取れない状況。
身動き取れる状態になったら意地でも隙を狙って脱走っ!
やっと組長に逢いに行ける。
...でも、もしかして迷惑かな?同情されただけかな?こんな浮かれた感じで逢いに行って『誰ぞ?』とか言われたら立ち直れるかな?
公衆電話を見つけてかけてみた。繋がったのに、言葉が出てこなくて黙ってしまった。そしたら『零か?零やな!返事せぇ!』って...。
動揺を隠せなかったけど『はい』と、返事だけは返した。そしたら『いっちゃん始発早いんドコや?』って。『それは知らんわ。普段2ヶ所からしか乗らんし』
組長は暫く考えて『絶対船乗る迄捕まるなよ!絶対コッチ来いよ!着いたら絶対ワシが守る!!でも今どうにもしてやれんのが歯痒いのぉ』って言ってくれた。もうこんなこと言ってもらえただけ充分(泣)
『始発早い方から来れんか?』
『組長ごめん。家から港迄だいぶ遠いんよ。でも、必死やから限界迄全力疾走しよんよ。もう此処から暫く動けそうにない。それに、背中一面の傷が燃えよるみたいに熱くて辛い(泣)』
『辛かったなぁ...手当てしような!ちゃんと化膿せんようにしたる!はよ来い!はよコッチ来い!零...生きてるだけ良かった!また逢えるなら良かった!』
『ありがとう...そんなに心配してくれて...大丈夫、殺されはせん思う。殺しじゃなく、いたぶって虐めるんが目的やから...』
『後何分で始発出るんや?コッチから行く方が早いんか?調べさす!今ワシんとこに居らんのんが悔しいてならん!零、ワシはオマエを守ったる!』
『...うん...ありがとう...』
守るって何?
常に一緒じゃないと守ることは不可能やのに。仮に、常に一緒でも守ることは難しいのに...。
零は、あんなに大事な茉莉花先輩を守れんかった。守り抜くって決めたのに守れんかった。
だから『守る』ってことが、どれだけ難しいことか身に染みて解ってる。
でも、組長だって厳しい世界で生きてるんやから、解ってるよね。本当に守られるんかな...もう屈辱な目に遭わんで済むんかな...?
ほんの少し、期待してしまう自分が赦せんかった。
『零!先コッチ出るから行く!ワシが行く迄何があっても絶対隠れとけ!もうすぐや...な?』
『解った...』
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