レーヴァティン
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第五十九話 名古屋の街その十三
「お世話になった場所の悪口も言い回り他人の家でも横柄に振る舞い」
「どうしようもない輩か」
「はい、まさに」
「恩知らずで傲慢で怠惰で図々しいか」
「簡単に言うと」
「そんな奴と結婚したのか」
「それで不幸になったでござる」
こう英雄に話した。
「まさに」
「それは悪い選択だったな」
「ただあまりにも酷いので選択しなおしたでござる」
「離婚したか」
「そしてずっとましな人と再婚したでござる」
「それはいいことだ、そしてその男はどうなった」
「先程お世話になった場所の悪口を言い回ったと申し上げたでござるが」
このことから話す智だった。
「その時でござって」
「それでそこからも顰蹙を買ってか」
「いられなくなってでござる」
「物乞いにもなっているか」
「どうなったか」
それはと言う智だった。
「もう誰も知らないでござる」
「行方不明か」
「死んでいるかも知れないでござるな」
「そうなってもどうということはないな」
そうした輩ならだとだ、英雄も素っ気なく返した。
「最早な」
「はい、そして実際にでござる」
「いなくなってもか」
「その場所でも半ばいなかったことになっているでござる」
「そこでも相当嫌われているか」
「はい」
その通りという返事だった、今の智のそれは。
「もう誰もいなかったことにしているでござる」
「そうか、そいつはおそらくな」
「運命をでござるな」
「悪い方に悪い方に自堕落に選んだ」
その結果だとだ、英雄は冷たい声で述べた。
「その無意味に傲慢で図々しい性根のままな」
「五十を過ぎてもでござる」
「傲慢で怠惰でか」
「図々しい性根だったでござる」
「本当にどうしようもない奴だったのだな」
「努力もしなかったごでざる」
そちらも怠っていたというのだ。
「引きこもりと言っていいでござるが」
「下手な引きこもりよりもだな」
「酷い男だったでござる」
そうした輩だったというのだ。
「何でも長男で母親が甘やかしていたそうでござるが」
「母親のせいだけではないだろうな」
「どうも祖母の方にも贔屓されていたそうで」
「長男だからか」
「はい、贔屓を受けて育って」
そのうえでというのだ。
「その結果で、ござる」
「そうした人間になったか」
「とかく嫌な奴でござった」
智にしては珍しく嫌悪を見せて語った。
「無意味に傲慢で怠惰で横柄で図々しく」
「それでいて何の長所もなかったか」
「はい」
その通りだったというのだ。
「その能力も性格も」
「どちらもだな」
「長所を磨いてこなかったでござるから」
「そうした奴になったか」
「拙者ああした輩にはなりたくないでござる」
嫌悪の色はさらに濃くなっていた。
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