ギャルの恋
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第四章
「だからないと思っていたけれど」
「そう思ったよね、けれどね」
「いいんだ」
「そうよ、じゃあ今からね」
「俺となんだ」
「付き合うわ、宜しくね」
晋太郎の告白の真意は不純だったがそれでもだった、友紀は彼との交際をはじめた。そのうえで友人達に言うのだった。
「いや、まだ手もつないでないけど」
「それでも?」
「純愛はじまった?」
「そういう感じ?」
「そうなの、あいつあれでチョー奥手で」
その晋太郎のことも話した。
「手なんか自分じゃね」
「出さないの」
「そうなの」
「そうなの、だから手をつなぐこともね」
その段階すらというのだ。
「まだなの、まあ付き合って二週間だけれどね」
「それ位だと手位握ってるでしょ」
「そうよね」
友人達は友紀の言葉に自分達だけで話した。
「それなら」
「もうね」
「キスはともかくとして」
「それ位は」
「そうなの?まあとにかくね」
身振りまで入れて話す友紀だった、爪は長くマニキュアを塗っていて顔のメイクも派手だ。まさにギャルといった外見だ。
「あーし純愛はじめたから」
「それはなの」
「ちゃんとはじめたっていうの」
「そう、いい感じよ」
友人達ににこりと笑って話した。
「あーし達ね。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「いや、あいつあーしと付き合ったのはね」
もっと言えば告白してきた理由はというのだ。
「もうすぐ簡単にね」
「やれるって思ってたからよね」
「遊んでるって思って」
「ビッチだからって思って」
「そうよ、けれどあーし違うから」
そうしたことは全くないというのだ。
「本当に誰とも付き合ったことないし」
「キスも男の子と手をつないだことも」
「一切ね」
「そうよ、これってファッションだし」
ギャルの外見もというのだ。
「だからね」
「それでよね」
「外見で判断されるとね」
「困るっていうのね」
「そう、そんなこと思われると」
それこそというのだ。
「あーしも困るわ、けれどすぐにやれるって思ってコクってきたのに」
「自分から手を握ろうともしないってね」
「マジ何なのって話よね」
「それなら自分からってなるわよね」
「もうそれこそ」
「全くよね、あーしだって経験ないのに」
そうなのにというのだ。
「困るわ、けれど悪い奴じゃないのよ」
「いい奴なの」
「そうなの」
「レディーファーストでいざって時は勇気出すから」
実はこの前変なチンピラ達が休日二人で外を歩いていた時に寄ってきたが晋太郎は足が震えながらも友紀の前に出てチンピラ達に帰れといったのだ。もっともチンピラ達は友紀が特殊警棒やスタンガンを出してお断わりをしたら逃げていった。
「いいのよ、欲望丸出しだったけれど」
「人間としてはいい」
「だからなのね」
「付き合ってるのね」
「それでよかったっていうのね」
「そう、だからね」
友紀は笑って話した。
「あーしこれからもあいつと付き合ってくから」
「そうしたいならね」
「そうしたらいいわよ」
「楽しく幸せになればいいよ」
その友紀に笑って言う友人達だった、友紀のはじめての恋は今はじまった。それは彼女にとって実にいいものだった。もどかしいがそれもまたよくて。
ギャルの恋 完
2018・3・13
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