オーストラリアの狼
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第三章
「確かめるべきね」
「それが科学、生物学もそうだね」
「学問よ」
「だから僕達も現場に行って」
そしてというのだ。
「フクロオオカミをその目で見て」
「捕まえるのね」
「それが出来ないなら動画や写真に撮ってだよ」
そうしてというのだ。
「僕達自身でもね」
「そのうえで検証して」
「論文としてね」
書くこともして、というのだ。
「そしてね」
「発表してなのね」
「そこまでしてね」
そうしてというのだ。
「全てだよ」
「やったことになるということね」
「そう、じゃあ今度ね」
「ええ、動画が映された現場の一つに行って」
「僕達もフクロオオカミを観て撮影しよう」
こう話してだ、そしてだった。
二人はフクロオオカミが撮影されたそ場所、オーストラリアのある森林地帯に近い草原に向かった。そこに行ってだ。
何日かテントを置いてそこを拠点としてフクロオオカミを待った、だが何日経ってもそれでもだった。
フクロオオカミは出ない、それでマリーは夕方ベジマイトを塗ったパンを食べつつヘンリーに言った。持って来ている食料や水はかなりのものだ。
「中々出ないわね」
「それは予想していたんじゃないかな」
「ええ、相手が相手よ」
それこそとだ、マリーは返した。
「絶滅したと言われている生きものよ」
「そう、だったらね」
「それならね」
「若しまだいてもだよ」
「数が少ないから」
「だからね」
「そうそう会えるとはね」
それこそというのだ。
「思ってないわ」
「そうだよ、フクロオオカミは元々個体数が少なかったんだ」
絶滅する前からというのだ。
「タスマニア島にしかいなくてね」
「そうだったわね」
「若し本土にいてもね」
「それでもよね」
「数自体は少ない筈だよ」
「そうなるわね」
「うん、だからね」
「私達にしても」
「待つしかないよ」
ヘンリーはオレンジを食べつつマリーに話した、他にはマトンの缶詰もあってそちらは既に食べている。
「まだね」
「お昼も夜も」
「そう、待っていてね」
「そうしてね」
「もう動画を撮影する準備は出来ているし」
「写真もね」
「出て来れば動画はね」
周囲に幾つも置いたそれ用の装置でだ。
「自動的に撮影出来るし」
「写真もそうだし」
「だからね」
「待つことね」
「そう、交代で見張りをしてね」
そうしつつというのだ。
「待っていよう」
「それじゃあね」
マリーはヘンリーの言葉に頷きそうして今はフクロオオカミをひたすら待った、出来れば捕獲することも考えつつ。
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