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マッドサイエンティストと子供

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第二章

「そして化学に興味を持ってもらいたいからな」
「だからか」
「それで初歩を教えたんだな」
「ああして」
「そうだったんだな」
「そうだ、私が普段行っている実験は極めて高度なものだ」
 このことでも知られている。
「そこに至るには多大な学問が必要だ。だが」
「だが?」
「だがっていうと」
「子供達はまだ化学を知ったばかり、それならだ」
「ああしてか」
「初歩の初歩をか」
「興味を持つことからだ」
 まさにそこからだというのだ。
「はじめてもらわないといけないからな」
「それで初歩を教えたんだな」
「化学は面白いってわかってもらう為に」
「その為にか」
「彼等の中から立派な化学者が出てくれれば」
 炎斗はこうも言った。
「私にとってこれ以上いいことはない」
「成程な」
「そうしたことを考えてか」
「あの子達と化学の将来を考えて」
「それでか」
「ああして教えた、ではこれからだ」
 炎斗は自分を囲んだままの彼等にこうも告げた。
「錬金術の実験だ」
「おい、錬金術?」
「そんなの本当にある筈ないだろ」
「何で石が金になるんだ」
「そんなの出来る筈ないだろ」
「違う、錬金術もまた科学だ」
 このことは真面目に言う炎斗だった。
「馬鹿に出来ないし否定も出来ないものだ」
「そうか?」
「あんなの空想のものだろ」
「ファンタジーの世界のものだろ」
「実際にはないだろ」
「今の科学の源流の一つに錬金術は確かにある」
 炎斗は彼が学んだことから周りに言い切った。
「その錬金術を学ぶことはだ」
「化学を学ぶことにもなる」
「そうだっていうんだな」
「そうだ、科学だけでなく化学もな」
 この学問もというのだ。
「学ぶことになる、だからこれからだ」
「錬金術か」
「そちらの実験をするんだな」
「そうしていくんだな」
「その通りだ、もっとも石を黄金にすることは」
 それを科学で言うと。
「元素記号を根本から変えることになるかも知れないからな」
「それはな」
「だからそれは無理だろ」
「石を黄金にするとか」
「流石に」
「今わかっている限りではな」
 これが炎斗の返事だった。
「確かに無理だ」
「永遠に無理だろ」
「元素自体を変換するなんて」
「今わかっている限りではな」
 これが炎斗の返事だった。
「無理だ。だがこれからはどうか」
「違うっていうのか?」
「ひょっとして」
「ひょっとしてだ、人間の知識なぞ僅かなのだよ」
 炎斗は周りにこうも言った。
「まさに大海原の小匙一杯だ」
「その程度しかない」
「だからか」
「錬金術も学び」
「石を黄金に変えられる日が来るかも知れないか」
「そうだよ、サン=ジェルマン伯爵が真実かは知らないが」
 一説によると不老不死の怪人だ、実在していたのは間違いないが様々な不可思議な逸話がある人物だ。錬金術でも有名なのだ。 
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