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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica16-B犯罪者狩り~Hammer vs Axt~

 
前書き
台風の勢いが本当にすごいですね。
さっきから家がちょっと震えるほどの風なので、さすがに今回は停電を食らうかも。
というわけでして、1日早いですけど投稿しますね~。
 

 
†††Sideヴィータ†††

「どこもかしこも最後の大隊のニュースで持ちきりだな。ホントしつけぇ連中だな」

あたしは今、航空戦技教導隊の一員として、第4管理世界カルナログは首都ケラノスにある、魔導端末の研究・開発を売りにしてるメーカー、バルケッタ・インダストリーの第8開発棟へ赴いてる。教導隊の役目は、新しく開発された装備や考案された兵装や戦闘技術テストや研究、他には演習での仮想敵役、技能訓練を主してる。今日は前者なわけだ。

「最後の大隊のメンバーが連続殺人犯を殺害。その後に逃走・・・」

んで、今は休憩中。休憩室でソファに座りながらテレビのニュースを眺める。逃走中だった大隊メンバーを陸士隊員が追跡中だったんだが陸士隊の管轄区を脱したことで、追跡中だった陸士隊が大隊メンバーを逃してしまった。けど管理局法から脱したことで、局への支援・協力要請をせずに事件・事故の解決に乗り出す事が出来るようになった教会騎士団が、大隊メンバーを逮捕した・・・っていうやつだ。

(教会騎士団に籍を置いてる騎士は、冗談じゃないくらいに強い奴らばっかだしな・・・)

そんな騎士団が好き勝手に動けるんじゃ、局は後手に回るしかねぇってこった。でもだからこそ、局は世論に叩かれ、騎士団は評価はうなぎ上り。嘆息してると、「だね・・・」って、あたしの隣に座ってるなのはが頷いた。

「これまでに管理局・騎士団が捕らえた仮面持ちはおよそ100人に上ってる。その大半は自爆して、その自爆に巻き込まれた局員・騎士からも数十名が死傷してる」

「ああ。・・・そんだけ構成員が自爆してる最後の大隊だが、なかなか潰れねぇんだよなぁ~」

それもこれも大隊のメンバー補充の早さにある。自爆してるのは人型の機械――アンドロイドばかりで、生存してるのは最後の大隊の思想に賛同したフリーの魔導師たち。重犯罪者には死罪を下すっつう大隊は、罪を犯しながらも悪を裁く義勇兵、みたいな風潮になりつつある。

(死んでも認めたかねぇけど、あたしら元パラディース・ヴェヒターみたいなっつうか・・・)

そんなわけで被害者遺族からの支持が結構あったりするわけで・・・。実際、犯罪発生率が減少した世界があるのも事実。局の不正問題や騎士団の独立のドタバタの最中に、犯罪者を殺しまくる最後の大隊の登場。完全に見計らってたろ、これ。

「出来るだけ早く、この一件を早く解決したかったんだけど・・・」

「んあ?」

「ほら、ヴィヴィオもフォルセティも明日から冬休みに入っちゃうでしょ。ヴィヴィオは大隊に狙われてる。フォルセティやアインハルト達も護衛として頑張ってくれてるけど、やっぱり冬休みくらい、子供らしく安心できる中で過ごしてほしかったな~・・・って。一応、冬休み中はイクス、シャルちゃん家にお泊りすることになってるけど・・・。やっぱり不安は完全には拭えない」

「・・・そうだな」

聖王女オリヴィエのクローンとして生み出されたヴィヴィオ。その資質を受け継いでる所為でヴィヴィオは、目的は判らねぇが最後の大隊に狙われちまってる。教会騎士団やオットーやディード達も密かに張ってくれてるから、学院祭の時みたく一方的な拉致未遂にはならないはずだ。

「・・・っと、そろそろ時間だね、ヴィータちゃん」

「あ? ああもう休憩時間も終わりか」

先にソファから立ち上がったなのはに続いてあたしも立ち上がって、教導隊としての仕事を行うために外へ出る。あたしは5番隊2班の副班長で、なのはは5番隊5班の班長だから、「それじゃヴィータちゃん、また後で」って、それぞれの所属してる班へと分かれる。

「それでは第2班の皆さんには、彼らとの模擬戦をお願いいたします」

広大な試験場のど真ん中、白衣姿の若い女技術者(他の技術者から主任って呼ばれてる)をリーダーとする第5開発班がウィングボディ型のトレーラーへと歩み寄っていって、空中に展開したコンソールを操作してトレーラーのコンテナを開けた。

「アレらが、私たちの相手となる人型魔導デバイス・・・か。ふむ。総員、気合を入れろ。高町教導官率いる5班に恥ずかしい様は見せられんぞ」

あたしの上司である2班の班長、ヴィオラ・オデッセイ三等空佐がそう言いながら、遠くに居るなのはとその班へと視線を向けた。ヴィオラ班長は、なのはが教導隊に入ったばっかの頃に同じ班だった先輩らしい。プライソン戦役後は教導隊から離れてたんだけど、騎士団独立のあおりを受けて人手不足になったことで復帰することになった。

「では総員、防護服着装!」

ヴィオラ班長の号令に従って防護服へと変身。なのは達5班も変身を終えて、あたし達とは別の新兵装の稼動試験を行う予定だ。

(あー、そっか。ようやっと思い出した。バルケッタ・インダストリーって名前に聞き覚えがあるな~って思ってたが・・・)

10年以上前、“夜天の書”を完成させるためにパラディース・ヴェヒターとして参加した犯罪者たちの宴、デスペラードパーティ。その大会に参加してた企業だ。目の前にズラリと並べられた成人サイズの人型デバイスを見て、ようやく思い出した。

「2班の皆さん、準備はよろしいですか?」

「はい、いつでも構いません。総員、戦闘準備!」

ヴィオラ班長が槍型デバイス・“レーヴェンゲブリュル”を構えて、あたし達もそれぞれデバイスを構えた。それを確認した技術者がまたコンソールを操作し始める。

「SS‐17スパンカー、SA-8ゲッコー、AS-11キルター、AA-5アッシュ、AA-13アロー、順次起動します」

デバイスを拘束してた金具が一斉に外れて、5体のデバイスが二足歩行でトレーラーのコンテナから地面に降り立った。んで、あたし達の前で整列した。トレーラーが訓練場の端へ移動していくのを横目で見てると、なのは達5班もフェンスの向こう側にある別の試験場に移動した。そこにもまたトレーラーが4台停まってる。

≪スパンカー、戦闘準備完了≫

青いデバイスが両手にガトリングガン2挺を装備。

≪ゲッコー、戦闘準備完了≫

黄色いデバイスがショットガン2挺を装備。

≪キルター、戦闘準備完了≫

赤いデバイスがデカいハンマーを装備。

≪アッシュ、戦闘準備完了≫

黒いデバイスがショートソード2本を装備。

≪アロー、戦闘準備完了≫

白いデバイスが大型の弓を装備。近接武器の剣とハンマー、中距離のショットガン、遠距離の弓とガトリングガン。武装した後に組んだ隊列から見ると、しっかりとした戦術はインプットされてるみたいだな。

「主任。スタンバイOKです」

「ありがとう。では・・・これより試験的実戦を行います! レディ・・・」

主任があたし達の間に空間モニターを展開して、レースとかで見かけるスタートシグナルを表示した。んで、「ファイト!」って主任が告げ、シグナルも青になったその瞬間・・・

――ラピッドスナイプ・トリプルシフト――

「え・・・?」

主任の補佐をしてた男技術者の股間と両手が、高速で飛来した魔力弾で撃ち抜かれた。遅れて男技術者が「ぎゃあああああ!」って悲鳴を上げて、手の無い両腕で吹っ飛んだ股間を押さえつつ地面を転げ回る。

「誰だ!?」

魔力弾の射線を追って視線を向けると、結構離れた開発棟の屋上で何かがキラっと光った。あたしとヴィオラ班長が盾役として前に躍り出て、班員4人が主任と狙撃された男技術者の盾役に動く。

――トランスファーゲート――

「卑怯で卑劣な犯罪者。貴様を処断する」

そんな声が背後から聞こえてきた。振り向きざまに見えたのは、真っ黒な両刃斧2本を両手に携えた男の仮面持ち。その斧はすでに振るわれていて、男技術者の首を刎ね飛ばした。混乱によるわずかな静寂の後に主任や他の技術者の悲鳴が木霊する中、あたしとヴィオラ班長は仮面持ちへ向かって突撃。班員たちはなのは率いる5班に連絡をつけたり、主任や他の技術者の護衛と避難に移ったり、指示を出すことなく最適な動きをとってくれた。

「最後の大隊・・・!」

≪≪≪≪≪殺人事件を確認。殺人犯を逮捕する!≫≫≫≫≫

デバイス達が仮面持ちを敵として視認したのか一斉に攻撃を繰り出すけど、仮面持ちは「邪魔をするな、おもちゃ風情が」って、2本の斧を振るって一瞬にして頭部を斬り飛ばした。

「なんつうことを・・・!」

「くそっ! ここで逮捕する!」

まずはヴィオラ班長がリーチを活かした“レーベンゲブリュル”による刺突攻撃を繰り出す。仮面持ちは体の向きを正面から横へ変えるだけで回避した。が、「おらぁぁぁッ!」あたしがそこに“アイゼン”を振り払った。アイツは両手の両刃斧の腹を盾代わりにして、あたしの一撃を防御したが、「むっ・・・!」踏ん張りきれずに十数mと吹っ飛ばされた。

『こちら高町! 狙撃手は5班が担当します! そちらの仮面持ちはお願いします!』

なのは達が狙撃手の居た開発棟の屋上へ向かって飛んでくのを一瞬だけ見届けた後、着地し終えたばかりの仮面持ちへ向かってあたしと班長が突っ込もうとした時、仮面持ちが左手に持ってる斧を、なのは達が向かってる開発棟とは別の建物へと指した。

「なんの真似――」

――スナイプレールガンVersion 2.0――

それと同時に指されてた建物から爆発が起こって、遅れて別の轟音が鳴った。こいつは「レールガン!?」に違いない。どこから撃たれたのか判らないってことは、なのは達の追ってる狙撃手とはまた別のところからだ。

「今回、我々が裁いたのは、管理外世界ばかりを狙って強姦事件を繰り返していた集団の一員だ。そこに転がっている男と、今しがた死罰を下した男の2人は、20人に上る女性を犯した。女性の尊厳を踏みにじる、最低最悪な行為である。ちなみに、八神はやて二等陸佐、高町なのは一等空尉、アリサ・バニングス一等陸尉、月村すずか技術主任、彼女らの出身世界である地球でも悪事を働いている」

確かにそりゃ裁かれて当然なクズ共だが、「・・・っ! だ、だからって――」殺して良いわけじゃねぇ。捕まえて、裁判して、正当な罰を与えて、償わせる。それが人間社会ってもんだろ。

「ヴィオラ班長。コイツ、あたしに任せてくれませんか?」

「・・・単独でいける?」

「問題なしです!」

班長の確認にそう応じたあたしに、班長は「では任せる!」って間髪入れずに言って別の狙撃手、レールガンを使ったことからティーダ・ランスターの元へと飛び立ってった。仮面持ちはやれやれっていう風に首を振ったかと思えば、「まぁ良い機会だ。いずれ闘うかもしれない戦力とは、一度刃を交えておこう」って、右手の両刃斧を肩に担いで、左手の両刃斧を前に突き出すような構えを取った。

「逃げないでくれて助かったぜ、仮面持ち」

「これも幹部としての勤めだ。我われ最後の大隊を壊滅すべく動く名のある局員や騎士との戦闘は、おのずと幹部となるだろう。ならば、今のうちに貴君の実力を推し量るのも悪くない、という話だ」

「ハッ! 後悔させてやんよ!」

互いに足元にベルカ魔法陣を展開。あたしは赤、奴は浅黄色。手元に魔力を付加した物質弾を5発と展開したあたしは、「ブリッツ・ギヨティーネ」って両手の斧に電撃を纏わせた仮面持ちへ向けて・・・

「シュワルベフリーゲン!」

“アイゼン”のヘッドで物質弾を打ち放った。仮面持ちは左手の斧だけで迎撃しながらこっちへ向かって駆けて来る。やっぱ騎士ってわけだ、接近戦は望むところ。“アイゼン”の柄を両手で握り直して、仮面持ちが「フンッ!」振り下ろした右の斧を、半歩分だけ横移動して回避。

「テートリヒ・・・シュラーク!」

そのまま時計回りに回転して、奴の背中に向けて“アイゼン”の一撃をお見舞いしてやったが、「マジか・・・!?」アイツを吹っ飛ばせなかった。つうか、何だ今の。妙な反発を受けたような気がする。とにかく、振り向きざまに振るわれる右の斧をしゃがみ込むことで避けて、脚に目掛けてもう一度“アイゼン”を打ち込むんだが・・・。

(踏ん張りどうこうじゃねぇだろ、これ! ビクともしねぇじゃねぇか・・・!)

足払いの効果も無く、仮面持ちは直立不動のままだった。逆に“アイゼン”が弾かれたことであたしは地面を転がっちまった。伏せてるところに、浅黄色の魔力光がアイツの足元の魔法陣から溢れる。

「ヴルツェル・シュメルツ・・・!」

「やべ・・・!」

魔法陣を中心にして電撃が放射状に地面を走り出したのが見えたから、すぐに起き上がって空へと上がる。電撃はうねる蛇のような軌跡でコンクリートの地面を焦がしながら、30mほどを突き進んで消えた。焦げ跡はまるで蜘蛛の巣みてぇ。あのまま地面に体を付けてたら、間違いなく感電していくらか隙を生んでた。

「良い判断だ、騎士ヴィータ!」

「そらどうも!」

宙を蹴って仮面持ちへ再接近して、“アイゼン”を「おらっ!」と全力で振るう。防御魔法を使った気配はねぇし、なにかカラクリがあるはずなんだ。“アイゼン”の一撃を仮面持ちは片方の斧で防いで、もう片方の斧で反撃っつう戦闘スタイルを維持して、あたしとの攻防を繰り広げる。

「チッ・・・!」

――シュワルベフリーゲン――

一旦距離を取って物質弾8発を“アイゼン”で打ち放つと同時に、あたしも一緒に仮面持ちへと突撃。アイツが両手の斧で物質弾を処理してる最中に、あたしはアイツの頭上に移動し終える。

「テートリヒ・・・シュラァァァーーーーク!」

最後の物質弾を処理し終えた仮面持ちの右肩へ向けて“アイゼン”を打ち込む。直撃直前、やっぱ何かに拒まれたかのような感触が柄から伝わってくる。以前にも経験したことのある感触。そう、あれは確か・・・。

(イプシロンの磁力スキル・・・!)

磁力を用いた防御術。この仮面持ちも似たような手段を用いてやがる。弾き返された勢いを殺さずに半回転して、今度は真横から左肩に一撃を打ち込むが、「くっそ、弾かれる!」ことで、ハンマーフォルムでの打撃は通らねぇって諦める。

「なら・・・!」

≪Explosion. Raketen form≫

仮面持ちからもう1回距離を取って、通常のハンマーフォルムから突撃力に優れたラケーテンフォルムへと変形させる。面での打撃じゃなくて一転集中の突撃を打ち込んでやるよ。ブースターを点火させて、その場で高速回転した後・・・

「ラケーテン・・・!」

また足元に魔法陣を展開した仮面持ちへと突っ込む。どんな反撃や迎撃が来るか判らねぇが、それを恐れてたら何にも出来なくなる。

「ハンマァァァァーーーーッ!」

仮面持ちも始めは斧を構えて迎撃に入ろうとしてたみてぇだが、足元の魔法陣を消して回避行動に入った。あたしの一撃は空振ったけど、ラケーテンハンマーは一度っきりじゃねぇんだよ。空振った勢いのままにその場で高速回転して、もう一度仮面持ちへと突撃する。

――ラケーテンハンマー――

「その技はもう見切った」

あたしの一撃に合わせて仮面持ちも左の斧を振るって柄同士が激突。火花を散らしながら互いのデバイスの柄が滑って、ヘッド同士がガキィンと噛み合った。アイツはその状態を維持したまま左の斧を地面に向かって振り下ろして、刃を深く打ち込んだ。

「んな・・! くそっ、離せ!」

斧の刃と柄の隙間と地面の間に“アイゼン”が挟まれちまった。そこに仮面持ちが右の斧を振りかぶる。となりゃ「アイゼン!」を待機形態に戻すしかねぇ。戻してすぐにあたしは仮面持ちから急いで離れて、振り下ろされた斧から逃れる。地面に打たれた斧は大きなクレーターを作るほどの威力。直撃だったら確実に墜とされてた。

「アイゼン、ギガントフォルム!」

「強襲型をやめて打撃特化型か。しかし、当たらなければ意味は無い」

――ユーバーファル・カッツェ――

「っ・・・!?」

仮面持ちの姿が掻き消えた。こいつは高速移動魔法か。こういう場合は後ろに回り込まれることの方が多い気がするが・・・。なんとなく「ここだろ!」って、前方に向かってヘッド部分がデカくなった“アイゼン”を振り下ろした。

「むっ・・・!」

ビンゴ。直撃なら良かったが、残念ながら仮面持ちのギリギリ前を穿っただけだ。ま、コンクリートの破片ごとアイツを後ろに吹っ飛ばしたけどさ。石片が仮面にガンガン当たって、パキッとヒビを入れた。

「おっと」

「ヒビ割れてちゃ気になってまともに戦えねぇだろ!? あたしが叩き割ってやんよ!」

――ギガントハンマー――

「余計な世話だ」

仮面持ちは両手の斧であたしの一撃を迎撃してきた。それは「いや、なんで避けねぇの?」って疑問が口に出るほどの悪手だろ。ギガントフォルムの一撃を受けたアイツは「あぁ、これは無理だ」って首を横に振りながらそう呟いた後、十数mと吹っ飛んだ。

「アイゼン、カートリッジロード! コメートフリーゲン!」

≪Explosion. Kometfliegen≫

シュワルベフリーゲンのサイズより二回りほどデカい物質弾に魔力を付加して、「おらぁっ!」バレーのスパイクみたく“アイゼン”でぶっ叩いて打ち放って、あたしも続いてまた仮面持ちへと突っ込む。

「ボースハフトアクスト!」

電撃を帯びた左の斧を物質弾に投擲した仮面持ち。2つはあたしとアイツの狭間でぶつかって爆発を起こして、勢いを保ったままの斧が黒煙から飛び出してきた。あたしはソイツを躱して、そのままアイツの元へとたどり着く。

「「ギガント・・・!」」

あたしは“アイゼン”を振りかぶり、仮面持ちは右の斧の片刃にとんでもなくデカい電撃の魔力刃を付加。こりゃ気合を入れてかねぇとな。

「ハンマァァァァーーーーッ!!」

「シュピールッ!!」

ドガンと激突した“アイゼン”と電撃刃。派手な魔力爆発が起きて、目の前が真っ白になる。そんな中で「くそ・・・!」あたしは、仮面持ちの一撃に踏ん張りきれずに吹っ飛ばされちまった。宙を舞う中、風切り音がこっちに近付いてるのに気付いた。

(もう片方の斧が戻ってきたのか・・・!?)

深く考える前に飛行魔法で急上昇。直後、視界の端にブォンと通り過ぎてく斧が映った。気付けて良かったって安堵して、体勢を立て直したところで、「すまんな!」って仮面持ちがいきなり謝った。

「時間切れのようだ! 私はこれにて失礼させてもらうぞ!」

――トランスファーゲート――

「んな!?」

仮面持ちの背後の空間が歪んで、アイツは斧をキャッチしてすぐにその歪みの中に消えちまった。ここまでやって確保できなかったのは、完全にあたしの問題だ。“アイゼン”をハンマーフォルムに戻しながら「くそっ!」悪態を吐いた。

「こちら2班のヴィータ。ヴィオラ班長、班員各位、状況はどうか?」

『こちらヴィオラ。残念ながら狙撃手を逃がしてしまった』

班長からはティーダ・ランスターを取り逃したこと、班員からは避難させた主任たち、ティーダに狙撃された開発棟の居た技術者の避難の完了や、狙撃された技術者の死亡確認などの報告が入った。

「第5班。そちらはどうか?」

なのは達の班へと通信を繋げる。すると『こちら5班。狙撃手1名を確保』って、5班の班員から返答があった。班長が『お手柄です!』って称えるけど、モニター越しから漂ってくる5班の空気がなんか重い・・・。

『ありえない・・・こんなの・・・』

「なの――高町班長・・・?」

うわ言のように、ありえない、を繰り返すなのは。映ってる映像が変わって、モニターに映りこんだ仮面持ちを見たあたしは、「んだよ、これ・・・!」なのはの言葉の意味を察した。女仮面持ちの制服とも言える黒セーラー服に身を包んでたのは・・・。

「ティアナ・・・!?」
 
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