八条学園騒動記
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第四百七十話 可愛い声その十一
「ユーモラスでね、どっか面白いのよ」
「そうしたいじめ役もそうないね」
「けれどね」
「それでもそうしたいじめ役で」
「この場合は継母よりもあっさりとね」
「許されるんだ」
「絶対に烏に目を突かれることもないし」
この残酷な結末も迎えないというのだ。
「あれはかなり怖いけれどね」
「聞いてるだけで痛そうだね」
実際に烏は敵の目を攻撃する習性がある、そこが弱点の一つであり目を潰すと相手の行動力がほぼゼロになっていることを知っているからだ。
「あのお話は」
「そうよね」
「まあいじめっ子の結末なんてね」
「大抵酷いものだけれど」
「ミンチン先生とかね」
小公女に出て来る院長先生だ、いじめ役でも有名なキャラクターの一人である。苦労人だが狭量でコンプレックスが強い。しかも経営者としての能力も低いという人間的欠陥に満ち溢れた人物として書かれている。
「あの先生も最後セーラとずっと向かい合うけれど」
「自分がいじめていて復権した相手とね」
「あれ辛いよね」
「ええ、だっていじめていた相手が自分の前に復活して現れてね」
カトリもそのミンチン先生のことを話す。
「学校も救ってくれて」
「学校の責任者になるんだよね」
「そう、セーラがね」
まさにその娘がだ。
「理事長さんなりになって」
「現代風にしたら余計にそうした設定出るよね」
「そのセーラと一教師として向かい合うのよ」
「それ凄く辛いよね」
「だってね、いつもセーラと会って」
そのいじめ劣等感を憎しみに変えてぶつけていた相手とだ。
「浅ましくて醜くて弱かった自分をいつも見せられるから」
「酷い報いだよね」
「自業自得って言ってもね」
「かなり残酷だよね」
「さっきの精神病院入れられる方がまし?」
マルティはここでまたこの話をした。
「ひょっとして」
「そのお孫さんセーラの味方だったら絶対にとんでもない復讐企んでたと思うけれどね」
カトリもその孫のことを思い出した。
「セーラに内緒で」
「僕もそう思うよ」
「ミンチン先生地獄に叩き落して笑ってたと思うけれど」
「それでもミンチン先生への報いは凄いね」
「そんな自分をいつも見せられて思い出させられるから」
他ならぬセーラと対することによってだ、そうした意味においてセーラはこの先生にとって鏡となる。
「嫌よね」
「僕だったら耐えられないよ」
「私もよ、あと人の心の古傷えぐり出す人いるけれどね」
「いるね、そんな残酷な人」
「自分がやられて嫌なことは敵には進んでする」
「それ多分お孫さんだね」
老婆を精神病院に送ったその人物だというのだ。
「僕が思うにね」
「そんな人だから自分のお祖母さん精神病院に送れるんでしょうね」
「うん、残酷で陰湿でね」
「執念深い人だから」
「あることないこと言うって卑劣だしね」
「そんな人ミンチン先生の傍にいたら」
そしてミンチン先生に憎悪を抱くと、というのだ。
「絶対にとんでもないことしてたわ」
「うん、平気で騙して背中撃つよね」
「そんなことしてたわ」
「殆どヤクザ映画だね」
「ヤクザ映画は普通に背中を撃つけれどね」
こうした裏社会の汚さを描くのもヤクザ映画だが表の社会にもこうしたことを行う輩は存在しているのだ。
「その人も撃つわよね」
「表の世界の人だよね、その人」
「牧師さんらしいわ」
「牧師さんなんだ」
この時で一番驚いた顔になったマルティだった。
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