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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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報われない決意

 
前書き
スティングとグラシアン・・・友の力を体に宿したローグ。彼は暗黒の存在、ティオスに勝つことができるのか!? 

 
大気を揺らす魔力。それを放っているのはティオスではない。彼に対している三種の魔を得た竜の子が、それを放っているのだ。

「これが三つの属性・・・力がみなぎってくる」

友二人の力をその身に宿した彼に、恐れるものは何もない。ローグは三つの属性を高め、ドラゴンフォースを維持したままティオスへと突撃する。

「白幻影竜の斬撃!!」

ローグが得意とする魔法。それはこれまでほとんどの攻撃を防いできたティオスの頭部を捉えた。

「へぇ、なかなかのもんだ」

痛烈な一撃。にも関わらず青年は余裕の笑みを浮かべている。それどころか先の攻撃に怯むことなく拳を叩き込んできた。

「ぐっ!!」

重たい一撃によろめく。さらなる追撃が彼を襲おうとしたが、ローグはそれを間一髪で受け止めた。

「想定通りの力だ。だが、それじゃあ勝てないな」

腕を取られているもののティオスに焦りはない。彼は掴まれている手で逆に相手の腕をガッチリとホールドした。

「氷神の・・・」
「!!」

膨らむ頬。それは彼の驚異的な力を最大限に活かす魔法の前触れであることは誰から見ても明らか。

(受ければ一溜まりもない。しかし・・・)

目と鼻の先で彼のブレスを浴びるわけにはいかない。そう考えればおのずと自らのやるべき行動が何なのかすぐにひらめく。
ローグは相手の手を逃がさないようにガッチリと掴んだまましゃがむ。これだけでも敵は自身の腕を巻き込まないためにブレスを放つことができない。しかし、これだけでは終わらない。

グンッ

「!!」

低くなった状態から敵の腕を引っ張ったのだ。ローグの位置が下がったことで腕が引き下げられ、重心が前に傾いていたティオスは踏ん張ることができなかった。まるで背負い投げのように宙を舞った彼は背中から激しく地面へと叩き付けられる。

「くっ・・・」

思わぬ一打に彼の手から力が抜けた。その間にローグは距離を取る。一気に攻めるようなことはしない。慎重に、冷静さを失わぬように戦うことが最重要項目だとわかっていたから。

「チッ、今のはうまかったな」

ローグの合気道のような一手に感心したような反応をみせるティオス。しかし、その顔は明らかに不機嫌だった。

(・・・ローグを殺すわけにはいかないんだよなぁ。次のプランもあることだし・・・)

想定よりも戦えている相手を如何にして沈めるか思考する。しばらく沈黙していたかと思うと、ティオスはタメ息をつき、目を閉じた。

(目を閉じた!?なぜ!?いや・・・これは・・・)

ティオスのその行動が何を意味しているのかはわからない。しかし、これは願ってもないチャンス。ローグはスティングのスピード、さらにはグラシアンの変幻自在な幻覚を駆使して気付かれないで目の前へと距離を詰めようとした。

「そっちが三つなら、こっちも二つを合わせるか」

そう言ったティオスの目が開かれると、それにローグの体は震えた。白と黒が反転した目はまるで悪魔のようだったからだ。

「氷天神の・・・吹雪!!」

軽く振るっただけの右腕。それなのに、ローグの体は浮き上がり、雪が混じった突風に吹き飛ばされてしまった。

「なっ!?これは・・・」

近くの木に叩きつけられてようやく止まる。その彼の瞳に映るのは、これまでの彼とは違う目をした青年の姿。

「何をそんなに驚いている。ちょくちょく見せてただろ?氷属性以外の魔法を」

神の子の周りに漂っているのは冷気だけではなくなっていた。銀色の風・・・それが一体何を示しているのかローグにはわからない。

「俺は氷属性だけを使うんじゃない。天空、それからもう一つ属性を有している」
「まさか・・・」

それを聞いてローグはあることを思い出した。ティオスが部下であるホッパーを仕留めた際、使用していた魔法の属性・・・

「その髪色・・・もしかして・・・」

そこまで言葉を言いかけた彼の腹部に重い一撃が叩き込まれた。予期せぬ衝撃に視界が歪む。そのままローグは白目を向き、意識を失ってしまった。

「ご名答だよ。もっとも、その回答を聞く気はないが」

膝を付き意識を失ったローグ。ティオスは彼にトドメを―――

「やれやれ、やっとシリルを追い掛けられるぜ」

刺すことなく、額に指を当て瞬間移動の準備に入った。

「それにしても、残念だったな。友の決意が報われることはないとは・・・まぁ、精々俺のために生き延びな」

そう言って瞬間移動でその場を後にしたティオス。彼は目を開けると、目の前にいる人物に話しかけようとした。

「追い付いたぜ、シリ―――」

しかし、彼は目の前にいた人物を見て目を丸くしていた。

「誰だ?お前」

そこにいたのはアイリーンから逃げてきた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たち。それを見たティオスは混乱状態から抜け出すことができない。

「バカな・・・なんでシリルじゃないんだ?」

辺りを見渡すがどこにも目的の人物の姿はない。予想外の出来事にティオスは唖然とすることしかできなかった。


















「は~あ、退屈ぅ・・・」

一方その頃ヨザイネは自分の見たかった仲間同士の潰し合いが満足の行く結果とならなかったことにガッカリしながらどこに向かうでもなく足を進めていた。

「あと残ってるのは私とティオス、それからアイリーンにオーガストかぁ」

アルバレス軍の中で残っている戦力を確認しながらこれからのことを考え始める。彼女は悪魔と化したグレイのことなど忘れているようで、一切後ろを振り向かずにいた。

「メイビスはアイリーンに任せればいいし、あとは雑魚ばっかりなのよねぇ・・・」

ナツや剣咬の虎(セイバートゥース)のオルガ、ルーファスといった実力者を自らの手で葬った上に、ティオスと天海の活躍によりフィオーレの戦力も相当削られている。これ以上自分を楽しませてくれる相手はいないのではないかとヨザイネはつまらなそうにしていた。

ガサガサ

しかし、そんな彼女の考えを一蹴するものがまだ残っていた。

「あら?誰かしら?」

草むらから物音がしたためそちらを振り向く。そこにいたのは水色の髪をした小さな少年と、その後ろにくっついてきた焦げ茶色の猫。

「へぇ、まだこんなとっておきが残ってたのね」

アルバレスの魔導士たちは大半がある程度フィオーレの有力な魔導士のことを頭に入れている。そのうちのリストの中に、もちろんこの少年も入っていた。

「この子は私が始末しなくちゃダメよね。だって・・・」

自らを見つめ立ち止まっている少年をじっと見つめる。その目は明らかに嫌悪と怒りに満ちていた。

「あの子と同じ髪色・・・そしてドラゴンの子・・・生かしておく理由がないわ」

親の仇を見るような鋭い視線。少女のその表情を見たシリルの顔もキリッと引き締まった。

「間違いない。こいつだ」

誰に言うでもなく呟いたシリル。小さな少年と少女のぶつかり合い。何てことがない戦いとも思われそうな、この二人の戦いが後に戦場に大きな変化をもたらすことを、果たして誰が予想できただろうか。



















その頃、アイリーンと対峙していたエルザとウェンディたちは・・・

「たとえお前が私の実の母親だとしても、ギルドへの道を塞ぐ者なら、斬るだけだ」

アイリーンはエルザの本当の母親だった。400年前に滅竜魔法を作り出したアイリーン。彼女はその影響で体が竜化してしまい、夫やその部下である兵隊たちから様々な人道に外れたことをされてきた。
そんな時に彼女のお腹の中にいたのがエルザ。アイリーンはその子を守るために必死に耐えてきたがあるとき夫である国の王からお腹の子を傷つけられそうになり怒りで覚醒、ドラゴンへとなってしまった。それからしばらく人間に戻ることができずにいた彼女だったが、通りかかったゼレフに元の姿に戻してもらい、今の姿を維持している。
しかし、それは完全に人間に戻れたわけではなかった。五感がほぼ失われてしまっていたのだ。人間として生きたい・・・いや、それ以上に人間としてお腹の子を産みたい・・・そう思っていた彼女だったが、精神的に追い詰められていた彼女は暴走した。
お腹の子に自らの魔法で自身の人格を付加すれば・・・そう思い行動に移したそうだが失敗。結果、その時に愛情が薄れてしまいエルザを捨ててしまったらしい。

「私も・・・昔話でもしたら我が子への愛情とやらが少しは芽生えるかと思ったけど・・・残念、何一つ感情が動かないわ」

手を向けて魔力を放出する。エルザはそれを瞬時に回避すると、そのまま彼女へと斬りかかり、受け止められる。

「魔力のみで一国の女王となった私に勝てるとでも思っているの?」
「本当の家族がいるからな」

余裕綽々のアイリーンに対して冷静沈着なエルザ。その後ろからやって来たのはドラゴンフォースで力を最大限にした天空の巫女。

「天竜の翼撃!!」

ウェンディの打撃に後方へと押されたアイリーン。その隙にエルザが追撃を加える。

「紅黒の双刃!!」

大きな打撃を受けたアイリーンではあったものの、彼女は何とか踏みとどまった。しかし、その表情は厳しい。

「この私に・・・傷を・・・」
「あなたの過去には同情します。でも、自分の子を愛せない人を、私は許しません」

母親(グランディーネ)が大好きだからこそ出てきたその言葉にウソも偽りもない。そんな彼女に、アイリーンは問いかける。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のおチビちゃん。さっきの話の中で《竜の種》という言葉が出てきたでしょ?」

竜の種・・・それは滅竜魔法を使いすぎてしまった者を竜へと変えてしまうもの・・・

「それはそなたの中にもあるのよ」
「はい。でも、それは私のお母さんが・・・長年かけて成長しないように抑えてきました」
「何!?」
「だから私たちは竜化しません」
「恐らくナツもシリルもな」

グランディーネもヴァッサボーネも二人の体内に入り竜の種を抑え続けてきた。それにより彼女たちはアクノロギアやアイリーンのようにドラゴンへとなることはない。

「なるほど・・・ドラゴンが体内に入り竜の種の成長を止めていたのか・・・私に魔法を授けたベルセリオンは戦場で死んだ。私は彼の名を受け継ぎ、彼の無念を晴らすと誓ったのよ。しかし・・・そんな方法で竜化を防げたなんてね・・・」

彼女はドラゴンを愛し、ドラゴンに愛されていた。それでも・・・

「不公平だわ!!」

この感情は抑えることができなかった。

「私の人生を返して!!こんな体いらないのよ!!」

ドラゴンになってしまったがために人間として生きていけなくなってしまったアイリーン。彼女の怒りと嫉妬は絶頂へと高まっていた。

「全身体能力上昇・・・神の騎士(デウスエクエス)!!」

能力が上昇したエルザがアイリーンへと迫る。それでも、アイリーンは焦ることはしない。

「小賢しいわ、分離付加(エンチャント)神の無加(デウスゼロ)

今度はアイリーンがエルザの能力を下げようと魔法を行う。

神の無加(デウスゼロ)の効果を神の無加(デウスゼロ)で相殺!!」
「何!?こやつ・・・こんな高度な付加術を・・・」

自身と同等といってもよいウェンディの能力。それを見たアイリーンはあることを思い付いた。

「これで終わりだぁ!!」

振りかぶって頭上から剣を降り下ろす。その威力は絶大で、アイリーンの帽子が真っぷたつへと切り落とされた。

「わかったぞ、エルザ。付加(エンチャント)の真理がな」

強烈な一撃を受けたはずのアイリーン。その証拠に彼女は頭から血を流している。
それなのに、彼女は全く気にする様子がない。

「赤ん坊だったから・・・身内だったから・・・失敗したのか。いや・・・そもそも人間への全人格付加(エンチャント)自体が不可能なのか・・・答えはNOだ。相性というものが大切だったのね」
「!?」

彼女が何を言おうとしているのかさっぱりわからず呆けているエルザ。アイリーンはその言葉を理解できずにいるエルザを尻目に、揺れる手で何かを行っている。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であり付加術士(エンチャンター)であり・・・若くて竜化しない体が目の前に現れるなんて・・・」

突然震えるウェンディの体。それが収まってくると、彼女の頬が紅潮し始める。

「まさか・・・!!」
「あぁ・・・この時を待っていた・・・多少魔力は落ちるが問題ない」
「ウェンディ・・・」

エルザは信じがたい出来事に体を強張らせた。そしてそれは、さらなる絶望へと彼女を追い詰める。

「新しい体、新しい人生。アイリーンは生まれ変わったわ」

ウェンディの体に自らの人格を付加させたアイリーン。更なる恐怖が戦場を黒く塗りつぶそうと言うのか。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
次はウェンディのところをちゃちゃっとやったらシリルたちに視線を向けていく予定です。待ってたでしょ?俺も待ってましたよ、シリルのターンを。 
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