とある3年4組の卑怯者
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155 九州代表
前書き
小学生アマチュアフィギュアスケート全国大会の女子の部が開幕した。関東大会銀賞の黄花は美葡に負けないと思い、三つの技を失敗なく見事にこなす。そして現時点でのトップに躍り出たのだった!!
黄花は控室に戻った。美葡はライバルであるが黄花を称えた。
「黄花さん、凄い進化だったワね」
「ありがとう。でもこの点絶対に守り抜きたゐわ」
「フフ、こっちこそきっと破ってみるワよ・・・」
その時、進藤が話に入ってきた。
「ふん、それは無理な話と!超えるのは私とよ!」
進藤はそう吐くと離れていった。進藤は黄花の次の次だった。
(進藤さんの演技、どんなものかしら?)
美匍は進藤が気になった。黄花の次は四国大会の金賞者が演技を見せたが、黄花の得点は超えなかった。進藤は誘導係に呼ばれ、リンクへと向かっていった。
『佐賀県鳥栖小学校・進藤幸子さん・九州大会金賞』
藤木は進藤の姿に見覚えがあった。
(あの子は、美葡ちゃんと黄花さんに喰ってかかった子だ!どうか二人とも、あと古宮さんもあの子に負けないでくれ・・・!!)
藤木は祈った。進藤が滑る。進藤にはスケートを行うためのある思いがあった。
三歳の頃、進藤幸子はたまたま家族でスケート場へと遊びに行った。その時、とても楽しくてしょうがなかった。そして両親に「また行きたい」と言ったものだった。
そしてスケートの季節になると、自分の我が儘で何度か行かせてもらった。そしてテレビでフィギュアスケートだのスピードスケートだのとスケートの中継を見るとテレビに釘付けになったものである。スケートは非常に面白い。そして幼稚園児の年中の頃のクリスマスプレゼントとして父親からスケートに関する本を貰った。その本を参考にジャンプやスピンを練習した。時々失敗して捻挫した事もあった。でも怖いと思った事はなかった。
小学生になると、進藤はスケート場へ一人で行くようになった。そしてジャンプやスピンを少しずつできるようになった。時々遅くなりすぎて母親から夕食抜きの罰を受けたほど、滑りまくった。だが、それと同時に学校では変人扱いされる事もあった。
「スケートばかりしていて何が面白いんだ?」
「冬にしかできないのに!」
「だいたいここは北海道とか東北でもないのにさ!」
「スケートより、テニスやバレーの方が面白いよ、幸子ちゃん!」
確かに佐賀県は北海道・東北などの道県といった所よりも気候が温暖なせいかスケートとかスキーとかのウインタースポーツは盛んではない。それでもスケートは面白いため、進藤はスケートをやめる事はなかった。次第にプロ並みのジャンプやスピンをこなした。一緒に連れて行った友達を驚かせたのだ。
そしてその自分の凄さを見せるためにこのアマチュアのスケート大会に出る事になった。地区大会では金賞、さらに九州大会でも金賞と輝かしい結果を残し、全国大会への出場権を得たのだった。そして決意した事が一つある。スケートが得意な者は東日本の人間だけではない。その者達を超えてみせると、進藤は気が強くなった。
進藤は足換えシットスピンを行った。そしてトリプルフリップにシングルアクセル・・・。しかし進藤は失敗に気付いた。トリプルアクセルのつもりがシングルになってしまったためである。そして滑り直す。今度はダブルフリップ。そしてトリプルルッツ・・・。しかし、ダブルになってしまった。失敗続きで進藤は悔しかった。
(点数稼ぎのためとはいえ、ジャンプが難しいものに偏りすぎだよ・・・。構成で問題があるぞ・・・。上手くできても黄花さんを越えるのは無理かもしれない・・・)
藤木はそう感じていた。進藤は二度のジャンプのミスで悔しかったが、それでも今度は成功させようと躍起になる。次に見せたのはスパイラルシークエンス。そして二度目のトリプルルッツ。今度は成功した。そしてダブルフリップを行い、そしてレイバックスピン。そしてステップシークエンスをしてトリプルアクセルを行う・・・。しかし、悔しい悔しい転倒だった。すぐに起き上がり、締めにフライングレイバックスピンを見せた。
進藤の演技が終了した。進藤は悔しかった。しかもジャンプで一番の見せどころのトリプルアクセルを失敗したのだから。
(くう・・・、悔しい・・・。折角ここまで来たのに・・・。あんなみっともないミスを繰り返すなんて・・・)
一方、美葡と黄花は進藤の演技について話し合っていた。
「やっちゃったワね、進藤さん・・・」
「うん、無理してた感じがするわ。もっと他の種類のジャンプを混ぜていたらよかったのに・・・」
進藤の得点が出た。135.6。黄花の点数は越えなかった。だがそれでも現時点では二位である。それでも進藤は涙が止まらないのだった。
進藤が控室に戻ってきた。美葡と黄花は進藤が心配で近寄ってきた。
「進藤さん・・・」
「何さ!バカにしに来たんと!?」
「違うわよ。進藤さんもミスが残念だったけど、凄い演技だったって私達思ったの。お世辞じゃなゐわ」
「そうよ。このままなら金は無理でも銀か銅は獲れるかもしれないワ。。だからまだ挫けないで!」
「う、うん・・・」
その時、一人の女子が近づいてきた。北海道大会の金賞者・有子真羽だった。
「貴女、もしかして他の出場者に差を付けようとして難しいジャンプばかㇼに頼っていたでしょ?」
「は、はい」
「そㇾでは自分の最高の演技にはなㇻないわ。様々なジャンプの種類を織ㇼ交ぜなきゃいけないのよ。ループやサルコウ、トウループも入れたㇻ貴女は黄花さんより高い得点が貰えたはずよ」
「そうでした・・・。目先の事しか考えていませんでした・・・」
「でも貴女は二位だしまだまだ分かㇻないわよ。そㇾじゃ、私は自分の番を待つわ。じゃあね」
有子は三人から離れていた。
「そうゐゑばあの人、リハーサルでは地味な演技だったわよね。落ち着ゐてあんな事言ゑるって事は・・・」
「確かに、もしかしたらあのリハーサルの時のは本気じゃないのかもしれないワ・・・」
美葡と黄花は有子の真の実力はまた別のものではないかと疑った。一方、その場から離れていた古宮も有子が気になった。
(有子真羽・・・。一体彼女は何者・・・?)
後書き
次回:「伏兵」
女子の部の大会は続く。古宮が、美葡が滑る。一方で、藤木と瓜原は有子の本当の演技がどんなものかが気になっていた。そしてその有子が本当の演技を披露する・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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