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母と兄

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第二章

「それでなのよ」
「そうなのね」
「そう、それで今からね」
「旅館に行って」
「皆と会いましょう。明日はお寺に行ってね」
「その法事よね」
「それをしましょう」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 光は母と共に法事に出た、そしてずっと会っていなかった兄と彼の家族に他の親戚の人達に会った。誰もがだった。
 光に対して笑顔を向けて挨拶をしてくれた、宴会の時に飲んで食べてもだ。
 その時も光にビールにご馳走を勧めてくれた、宴会はとても明るく普段一人でいることの多い光にとって心地よいものだった。
 それでだ、光は母に言った。旅館は温泉でそこに入って二人の部屋に戻ってから。
「何かこうして皆と一緒になることは」
「なかったのね」
「社員旅行に出ても」
 それでもというのだ。
「私特にお付き合いもないし」
「会社の人達ともなのね」
「ええ、だからね」
 それでと言うのだった。
「今みたいなことはね」
「なかったのね」
「修学旅行の時でも」
 光は自分の学生時代のことも話した。
「ずっと一人だったから」
「あんたずっと友達も少なかったしね」
「だからね」
 それでとだ、光は自分から話した。二人共今は浴衣になっていて旅館の一室でくつろいでいる。部屋はもう布団が敷かれている。
「こうして皆と一緒にいて」
「それで飲んだり温泉に入ったり」
「カラオケも」
 それもというのだ。
「そんな色々なことはなくて」
「皆まだ宴会場にいるわよ」
「それで楽しんでるのね」
「そちらに戻る?」
「そうね」
 光は言ったところで少し驚いた、自分から賑やかな場所に行くと言い出すことはこれまでなかったからだ。
「それじゃあ」
「ええ、行きましょう」
 母も言ってだ、光はその母と共に旅館の宴会の間に戻った。そこではもう夜遅いので子供は皆寝る為にそれぞれの部屋に行っていたが大人達は残っていて。
 それで飲んでご馳走の追加を食べて歌って賑やかにしていた、そこに戻ると。
 兄もいた、兄はすぐに光のところに来て言った。
「元気そうだな」
「ええ」
 光は今日久し振りに会った兄に応えた。
「仕事続けているわ」
「そうか、それは何よりだ」
「ええ、それで兄さんも」
「元気でやっている」
 笑顔でだ、兄は答えた。
「仕事の方も家でもな」
「そうよね」
「孫も出来たしな」
「ええ、聞いてるわ」
 光は兄に落ち着いた顔で応えた。 
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