空に星が輝く様に
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169部分:第十三話 家へその三
第十三話 家へその三
「ザッハトルテにしますね」
「西堀ってザッハトルテ好きだよな」
「ウィーンから取り寄せたものでして」
「えっ、ウィーン!?」
それを聞いてだ。陽太郎はここでも驚いたのだった。
「ウィーンっていったら」
「オーストリアの首都ですけれど」
「いや、それは知ってるけれど」
これは常識のことであった。中学校で習う程度だ。
「それでも。そこからって」
「それが何か」
「滅茶苦茶凄いんだけれど」
こう言って唖然とするばかりだった。
「あの、それって」
「はあ」
「それで今からそれを?」
「そうですけれど」
やはり気付いていない月美だった。
「駄目ですか?」
「いや、駄目って訳じゃ」
「じゃあちょっと待って下さいね」
おっとりとした口調での返事だった。
「今からお茶を淹れて切りますから」
「うん」
こうしてだった。その紅茶とザッハトルテが運ばれてきた。ザッハトルテはかなり大きく切られていた。そしてその紅茶はというとであった。
「ロイヤルミルクティーにしました」
「それなんだ」
「どうでしょうか、イギリスとオーストリアになりましたが」
「何でロイヤルミルクティーなの?」
「ザッハトルテって味が強いですから」
「それに負けない味ってことなんだ」
「そう思いまして」
それでだというのである。
「それで」
「成程、そうなんだ」
「美味しいですよ」
また話す月美だった。
「この組み合わせも」
「そうなんだ」
「紅茶もミルクも味を強くしていますから」
「強く?」
「紅茶は濃くしてミルクはコンデンスミルクです」
そこまで気を使っているというのである。月美はそこまで考えていたのだ。
「それにしてみました」
「じゃあ食べてみて」
「飲んでみて下さい」
こう述べてだった。実際にザッハトルテを食べロイヤルミルクティーを飲んでみる。確かにどちらも味がかなり強いものだった。
まずザッハトルテだ。その甘さはかなりのものだ。日本のそれと比べるとだ。その味は相当に強く強烈なまでに口の中に残っていた。
そしてそのロイヤルミルクティーはだ。砂糖は入っていない。しかし紅茶の味もミルクの味もかなり強い。だがそれがザッハトルテを中和したのだ。
両方味わってだ。陽太郎は言った。
「へえ、これはまた」
「どうですか?この組み合わせは」
「いいね」
目を丸くさせての言葉だった。
「この組み合わせって」
「そうですよね。美味しいですよね」
「うん、とても」
こう月美に話す。
「美味いよ」
「ザッハトルテはオーストリアのものはかなり甘いです」
「相当凄いね」
「そうですよね、かなり強いです」
また話す。
「日本にはない甘さですね」
「そうだよな。甘いよ本当に」
実際に陽太郎がはじめて味遭う甘さだった。そこまでだった。
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